• ★中国にお伺いをたてた「中国政策」の愚(下) —  米・中間の天地返し — 2019年11月9日

    by  • November 11, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     30年前から今までの米・中関係を遡ってみれば、米国が現在、直面している「気まずさ」がわかります。「王の製造人」として、自分たちが助けて作り上げた「王者」をコントロールできないばかりか、経済の「進撃の巨人」となった「戦略的ライバル」に、なすすべもないのですから。10月29日、米国国防省のハイテク部門の担当者は、公開の場で、中国は、ハイテク部門で既に米国に追いついたどころか、米国を越えていると言いました。

    トランプ大統領は、中国(中共)の知的財産権窃盗行為を骨の髄まで憎んでいますが、それでも米国の歴代大統領が、対中国(中共)に対して、ほとんど放任してきた点については、触れないでいます。

     ★何代もの大統領がせっせと「垣根」を壊した

     現在、米国の「親パンダ派(親中国派)」は、勢いを失い、「閉じこもって」いますが、力は依然として持っています。中国(中共)による「紅色浸透」批判の文章も研究もありますが、しかし、基本的に中国(中共)政府がいかに狡猾か、対外的野心に満ちているかを責めるだけで、誰も、米国政界がこの年月、いかに、対中国(中共)への垣根を壊すのに精を出して、中国(中共)を、自由自在に全方面で好き放題にさせていたかについては反省などしていません。

     クリントン夫妻と中国(中共)の関係は有名です。クリントン基金会の資金には、中国企業家の寄付がたくさんありますし、中国のニュースサイト澎湃ニュースに、それが列挙されたこともあります。クリントン元大統領は米国に、中国(中共)と協力する理由を「指導するが、中国が必ず民主化するとは保証の限りではないが…」と言いつつも、「親パンダ派」が中国に無条件で友好を提供する「ポリティカルコレクトネス」の保護を与え、20年近くにわたって、中国(中共)を批判する人々を「中国嫌い」のレッテル張りを行い、実際の証拠に基づく批判であっても、ただ「ああ、あいつは中国嫌いだから」と言えば、信用できない輩、という印象を与えてきました。

     中国(中共)の知的財産権窃盗を警告した「コックス報告」は、クリントン時代に、米国の各界から、強烈な批判を浴びて潰されてしまいました。

     1998年、カリフォルニア州の共和党衆議院議員のクリストファー・コックスは、「コックス・レポート」という秘密報告をまとめました。この報告は、中国(中共)が1980〜1990年に米国で行った大量のスパイ活動に関する調査でした。中国(中共)の情報収集は、プロにばかり頼るものではなく、普通の留学生や学術交流プロジェクト、ハイテク業界や機密関係の仕事にある中国系市民、記者などを通じて行われます。同年6月18日、議会は409票対10票で、情報が中国に漏れているかどうかを調査する特別委員会の設立が決定されました。というのも、こうした技術は大いに、核兵器や大陸間弾道弾、その他の大量破壊兵器の性能向上に使われる可能性があったからです。

     ところが、当時はまさに米国が、天安門事件後の経済制裁を解除し、米・中双方が正式に交流を再開したばかりでした。中国との経済交流を待ち望んでいた、米国のビジネス界、科学技術界、学界は、この報告書に猛烈に反対し、「マッカーシズムの再来だ」との声すらでる始末で、国内のこうした圧力のせいで、このレポートは、棚上げになってしまったのでした。

     ジョージ・W・ブッシュ元大統領(任期; 2001年1月20日 – 2009年1月20日)時代は、まさに中国企業が米国で、企業を「逆買収」する時期で、米国企業の外見を装って上場するブームが起きた時で、多くの中国企業は、米国4大会計事務所の助力によって、さらに著名投資家のバフェットの裏書で、「中国概念株」があっという間に米国株式市場に旋風を巻き起こしました。もし、あのまま、中国企業が深刻な財政問題を抱えていることが暴露されなければ、今でもウォール街やナスダックで大金をかき集めていたでしょう。

     オバマ前大統領(任期;2009年1月20日 – 2017年1月20日)の中国(中共)への態度は、「最初は恭しく、最後は敬遠気味」とでも言えるでしょう。大統領選挙の勝利後、彼は米国の東西研究所(ニューヨーク)に、対中国政策を委ね、この研究所は、中国(中共)の外交部に属する「中国国際研究所」からの「中国の視角」から、対中政策を作り、米国への「中国側からの要望」の聞き取りから出発したのです。その要望の半分は、中国側が書いたものでした。こんなことは米国の歴史始まって以来のことで、事実上、北京に「あんたがどうすれば満足するか、言ってくれ」と聞いているようなもので、中国(中共)は、米・中両国は経済、反テロ、核兵器拡散防止、太平洋関係など5つの問題で、パートナーとなるべきで、米国は「価値観外交」を捨て北京政府の核心的利益、つまり、一党独裁政権の地位を尊重すべきだと言うリストを提出しました。のちに、中国といくつもの穏やかならざる出来事が起こってから、初めてオバマ前大統領は、ほんのちょっと調整しただけでした。

     一言でいえば、中国(中共)勢力がワシントンに浸透し、利用したのは、米国の全方位的な開放的体制で、その助けとなったのは、制度的な「制度の利ザヤ取り」に励んだ「親パンダ派」です。2015年6月に、私は「★相手の懐で戦い上手は中・米どちら? 」で、この状況を分析しました。ペンス副大統領が、去年のハドソン研究所での公園で、中国(中共)の対米浸透工作の数々 — 例えば、米国企業、映画産業、大学、シンクタンク、学者、記者、各州と連邦レベルの官僚を、ずっと利益誘導と脅迫し、米国の世論に影響を与えてきました。実際、中国(中共)の米国浸透工作は、秘密裏に行われたものではなく、白昼堂々と行われたのです。例えば、あの「千人計画」も、その参加者は毎年、数カ月中国で働いたわけですが、その中の多くの人間たちが、巨額の中国からの研究賛助金を持ち帰ったので、彼らを雇っていた企業や機関も、これを許すしかなかったのです。

     ある国が自国が天下の盟主だと認識するなら、他国の利益も優先して考えなければなりません(原注;2016年以後、2年間に渡って、主流メディアがトランプ批判をしたのは「米国ファースト」政策でした)。中国(中共)が、米国に対して浸透工作を公然と行った状況は、浸透工作をした側が、道に外れた行いをしたと非難するより、まず自分がなぜ、進んで泥棒を招きれるようなことをしてしまったのかを検討したほうがよろしい。

     ★クリントン元大統領の過ち — 幻想の上に立てた政策

     クリントン元大統領は、中国が民主化に向かうと予想し、米国はそれを積極的に応援すれば良いと考えました(原注;それには当然、中国に各種の便宜や援助を与えることが含まれます)。そして、それを対中国政策の基本としたのです。残念なことには、米中関係の現実は、彼が最も自信満々で保証した米国にとっての利益という点で、全てが願望の反対になってしまいました。

     例えば、彼は「良い点は、当然、米国企業が巨大な中国市場を手に入れることだ」と言いましたし、米国企業は確かに巨大な中国市場を手に入れました。しかし、中国(中共)は「技術と市場の交換」、つまり、「米国さん、うちの市場に来るなら、悪いけど技術を分けてね。でないと入れてやらないよ」というやり方を発明しました。

    「中国政府を通じて販売、または価値ある技術の移転」は実現したのですが、「販売を通じて」ではなく、中国(中共)が外資対策に、巧みに無償で強奪できるように仕向けたのです。中国市場に入りたい米国企業は、断固、中国(中共)の要求を拒絶したりは出来ませんでした。ただ自国政府にブツブツと文句を言い、米国政府に、中国(中共)がこうしたやり方をするのをやめさせてくれ、と訴えただけでした。

     もっと滑稽なことには、長年こうして文句を言い続けた企業が、本当にトランプ大統領がそうしたら — トランプ大統領が、対中貿易戦争を始めた主要な理由が、長期的に米国企業の競争力を弱めてしまうこの中国(中共)の知的財産権窃盗だったのですが — 、中国市場に悪影響を及ぼすと文句を言いだす始末でした。

     クリントン元大統領は、自信満々に「雇用の流出なしに、輸出出来る」と米国人に向かって演説していましたが、この願いはあっという間に、おバカな夢に過ぎないことが証明されてしまいました。米国の2大産業が、中国がWTOに加入してから10年以内にどうなったでしょうか? 2000年〜2010年で、米国製造業は、どの業界でも、雇用を失いました。もっとも大きく影響を受けたのは、電子計算機、電子工業と輸送設備工業で、その後、製造業の職場が増えたのは、米国の特定の地域だけでした。ニューヨークからニュージャージーの大多数の都会では、就職の基盤がずっと下がりっぱなしです。

     米国の対中貿易の赤字も、ずっと増え続けました。2016年12月11日のロイターの報道では、米国経済政策研究所(Economic Policy Insitute)のレポートで、2013年までの12年間に、米中貿易の赤字は4倍近く増加し、3242億米ドルで、ウォルマートだけで481億ドル15.3%を占めました。

     中国(中共)への予測は、更に無茶苦茶でした。クリントン元大統領は「国有企業保護の壁を下げることで、中国(中共)は広大な国民生活から、国家の介入の度合いを減らしている最中である」と断言しましたが、実際は、朱鎔基総理は「大きなものを掴み、小さなものは放っておく」方針で国営企業改革を行いました。多くの損害だらけで、国有銀行の足を引っ張る市場競争力のない国営企業を閉鎖、操業停止、払い下げ、国有企業の数を減らしました(原注;これがクリントン演説で、中奥国有経済の衰退の根拠とされた)。そして、リソースの再構成を図って、国の経済と人民の生活に関係する巨大な国有企業を作り上げ、経営上の特権をもたせて、国有寡占体制として、中国(中共)は莫大な税源を注ぎ込んで、胡錦濤・温家宝時代に中国の「黄金の10年」を支えさせたのでした。今や、その多くが「世界500強」となっています。

     しかし、こうした企業が、いったんうまくいかなくなって息切れすると、中国(中共)政府はまたしても、「国進民退」(訳注1)を始め、国営企業と競争関係にある自国の民営企業や外資企業を圧迫します。例えば、製薬会社です。(原注;米国人も中国の製薬業界の中堅の力は、全て、税國で教育を受け、米国の製薬業界でキャリアを積んだプロたちだと承知しています)。

     2015年9月、「中共中央 国務院による国有企業改革指導意見」(通称「国企改革方案」)が出され、例えば、国有企業が景気の良さげな民営企業に資本参加(株主)して、国営企業が主要株主にな理、国営企業を強大化する方法とかが明文化されました。

     トランプ政権以前は、米国は、本当に全面的に対中国政策を検討したことはありませんでした。トランプ政権になってから、民主党や主流メディアは、トランプの「米国ファースト」を批判し、対中貿易戦争について「友人を見捨てた」と罵声を浴びせました。

     ロバート・ライトハイザー通商代表は「過去10年の世界貿易機関=WTO=における中国の評価」を書き、「簡単にいえば、中国(中共)は容易にWTOのような国際組織の規定を守るだろうというのは間違っていた。WTOの問題解決体制は、WTOを設立した基本前提である、関連法規を守るのが当然だという体制とは相容れない国家に対して作られてはいない。米国は中国をWTO加入を認めた時に、もう中国(中共)をコントロールする術を失っていた」と言いました。

     米国の「対中危機委員会」(訳注2)を主宰するブライアン・ケネディは、歯に衣着せず「中共は不断に人権を踏みにじる過程において、米国は黙って成り行きを見ていたばかりか、クリントン政権時期には、彼らに我々の最先端の核技術や最恵国大軍を与えて、進歩を共有させ、中国は21世紀に、米国を超えるライバルにさせた」と語っています。

     ★米中は離れがたいが、平和共存もまた難しい

     貿易戦争は、長引きますが、中国(中共)がなにがなんでも米国が願う協定にはサインしないという状況では、米・中のデカップリング(切り離し)が人々の頭をよぎります。そうした考えは、現在の米・中相互間の「互いに相手に入り込んだ入れ子構造」を無視した見解です。双方は互いに、第一、第二の貿易パートナーであり、両国はお互い相互に巨額の投資など錯綜した利害関係を持っています。米国は中国の大量購買してくれるマーケットを必要としています。中国はなおさら、米国の資源と市場が頼りで、習近平とて、当然、毛沢東のように「さらば、レイトン・スチュアート」(訳注3)のように、西側に門戸を閉ざすようなことはできません。ですから、両国がどう役割調整をして付き合って行くか、その道を探すのが、まともな方法なのです。

     この面では、中共は、イデオロギー的には米国を敵とし、経済的には、あらゆる隙を突いて米国のリソースを利用してきましたから、調整は必要ありません。習近平が中共総書記になってまもないころの内部談話で、中国(中共)は「必ずや二つの社会制度の長期にわたる協力と戦いに備え、各方面は準備しなければならない」と語っています。

     中国(中共)に比べると、米国が目覚めるのが遅いことは、20年どころではありませんでした。これは、米国の民主政治体制によるものでした。一つには2大政党の対中政策が違うこと、ホワイトハウスの主人が変わるごとに、「章」が改まってしまうこと。二つには、米国は学問の自由、言論の自由を信奉しており、そのおかげで「親パンダ派は、30年以上、中心となって政府の対中国政府を指導し、米国人の中国に対する姿勢に影響を与えてきました。こうしたものに類するグループは、中国ではまず生存出来ません。

     今、米国ははっきりと、自分たちが中国の国づくりを手伝った結果、強大な戦略的なライバルを育て上げたと知っていますが、しかし、これは共和党とタカ派の認識であって、米国政界の共通認識とはいえません。ワシントンのホワイトハウスと国会はは皆、「兵舎は鉄のように不動だが、兵士は水に流れるごとく消え去る」ですから、今期の米国政府が、中国(中共)の本質をはっきり認識しているからといって、次の政権が民主党に変われば、どうなるかは、彼らの発言を聞いていれば明らかです。米国の国内政党政治が悪化すれば、確かに、米国は中国(中共)を有効に締め上げることが難しくなる重要な要因となるでしょう。

     米国は、対中国政策の再調整を必要としていますが、この種の調整が続けられるかどうかは、米国がいくら力を持っていようが、トランプの対中国貿易戦争のように、やっかいきわまることなのです。

    (終わり)

    (訳注1)国有経済の増強と民有経済の縮小現象、政策
    (訳注2)Committee on the Present Danger: China(CPDC)2019年3月 中国(中共)の脅威に対してできた超党派委員会。保守系の戦略研究機関の所長ブライアン・ケネディが会長。
    (訳注3)レイトン・スチュアート=中国語:司徒雷登=1876〜1962)は、宣教師、教育者。米・中間の友好に尽力した人物で中国大使だったが内戦終結時に帰国( 1946年〜 1949年、1952年辞任)。毛沢東は、これを揶揄する一文を書き、教科書にも掲載された。現在は中国側も再評価している。

    ★中国という「経済版・進撃の巨人」は如何に出現したか?(上) —  米・中間の天地返し — 2019年10月31日

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