• ★中共が「官僚のモラル」回復をいくら叫べども…   2019年11月25日

    by  • November 28, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     中共は、先月「新時代の公民道徳建設実施綱要」を公布した。これは「官僚のモラル」が、ますます当局を政治経済面で苦境に陥れている証拠だ。官僚たちは、反腐敗キャンペーンに対して、大いに不満で面従腹背だ。連中は「腐敗しても政府に協力するならオッケー」だった江沢民、胡錦濤時代(1993年〜2013年3月)の官界を懐かしんでいる。同時に、過去数年来のトップからの「反腐敗キャンペーンによる強制」政策に、全面抵抗している。そこで、最近、中共の上層部は、官界のモラル回復によって官界の浄化を図ろうとした。しかし、この体制では、官界に対する締め付けを一層強化するのは至難の技だ。だからといって今更、昔のように腐敗に寛容になるのも無理。官界の正常運営は、「官僚のモラルハザード」によって、にっちもさちっちもいかない「落とし穴」にハマってしまった。

     ★官僚のモラル問題が再び焦点に

     中南海は、最近開かれた19期4中全会前に、10月27日付で、「新時代の公民道徳建設実施綱要」なるものを公布した。これは、自由アジア放送が10月30日に報道したが、大多数の海外メディアは「またかいな」と、特に注目しなかった。しかし、実際には中共が現在直面する苦境を理解するには、大変重要文書なのだ。

     この文書、一見、国民道徳一般を対象に論じているようだが、実際は、官界のモラルと、役人の行動をターゲットにしたものだ。政府メディアは、「江沢民時代には…腐敗と拝金主義の現象が至るところに見られた」「問題は、拝金主義、享楽主義、極端な個人主義の突出を含んでおり、正否、善悪、美醜が混じりあって、利に義を忘れ、利のみを追いかけ、他人を傷つけ己の利を図り、公をないがしろに私腹を肥やす」「嘘をついて詐欺を働き、信用を顧みない」と述べている。政府メディアがこんなことを言うのは、何十年もやってきたことだから、中国人はすっかり鈍感になってしまっている。しかし、この文書が出された背景と中共のトップレベルの対応措置には、これまでとは違う重大な点があって、注目すべきだ。

     中共が政権を握ってから、中国社会には、奇形的な価値観や道徳の悪化が出現し、1980年代後期から、こうした問題はますます深刻になって、政府側も始終お説教を続けてきた。2001年に江沢民は「徳を以って政治に当たれ」と、愛国主義教育と社会道徳関連の実施要項を発表した。政府は更に、「徳を以って国を収めるには『官のモラル』が大事だ」と指摘。2006年には胡錦濤が「八つの栄誉と八つの恥 — 社会主義の栄辱観」を出している。しかし、20年近く過ぎた今で、政府メディアも「中国の道徳分野の様々な悪弊は、ずっと変わらなかった」と認めたというわけだ。

     中共の官界モラルが一向に良くならない理由は、政府のお説教が、役人たちの行為にまったく拘束力がないからだ。実際、日増しに腐敗する官僚モラルが支配している。例えば、官僚に聞いてみれば、大多数がそっと認める。上のやっていることに下は倣うのであって、高層の官僚のモラルが「見本」になっているので、それが下僚たちにとっては腐敗の安全保護となっている、と。習近平は就任後、反腐敗キャンペーンを行って、役人たちを大量に逮捕したが、ハイレベルの官僚で捕まったのはほんの少数に過ぎなかったし、無事平穏に切り抜けた大多数の元ハイレベルや中・下層の役人は、互いに心を通じ合った「腐敗保護同盟」を結んでいる。当局が現在、道徳建設を言い出すのは、まさに、こうした官界の有形無形の「腐敗保護同盟」に対してだ。理由は、それが、独裁体制の機能をダメダメにしてしまっているからだ。

     これまでの中共の、官僚モラル低下対策は、「正面からのお説教」を繰り返すだけでお茶を濁してきただけで、20年経っても全然効果がなかった。習近平は、単純に「まともな説教」を強調するのをやめて、官界の粛正によって官僚のモラル回復を行おうというわけだ。だから、2019年版の「新時代の公民道徳建設実施綱要」は、宣伝系統の機関にではなく、検察観察機関をトップに置いて、公安・司法系の機関に重責を負わせている。これは、中共のトップが、もう「まともなお説教」などで官僚モラルをどうこうしようとするのは、自己欺瞞に過ぎず、官僚たちの「面従腹背」と行動が、何よりの証拠だと認めたということだ。

     習近平は「官僚モラル」を正す新たな方法として、「国家治理」と「政治現代化」という旗印を持ち出した。意図は、検察監察機関に官僚取り締まりを強化させ、腐敗事件の捜査だけではなく、政府職員のモラルが芳しくない人物を厳しく監督せいと強調したわけだ。他方では、江沢民、胡錦濤時代の人材登用基準を改め、以後はGDPを増やせば出世できるという考えをやめ、上下共謀して出世を図る道を防ぎ、「官僚のモラル」を基準に選抜することにした。

    しかし、この方法は、実は、すぐに効果が表れるといったものではないし、腐敗官僚のモラルを取り除くことは出来ない。実際には、官僚モラルの腐敗は、もう骨髄にまで達しており、中共は自分で生み出した道徳的な危機にはまり込んでいる。つまり長期的悪化で、正すのが極めて難しいということだ。

     現在の経済苦境から急いで抜け出したい中共にとっては、一番必要としているのは独裁体制の足元を掘り崩すことからの自救能力。それを発揮させて、山のような難題を解決したい。

     歴史上、中共の独裁体制は、これまで2度この自救作用を働かせた歴史がある。

     ひとつは「混乱を正常に戻す」(「拨乱反正」)で、毛沢東の文革によって政治的圧迫を受けた役人たちが震え上がっていた後だった。相対的にゆるやかな政治ムード作りで、役人たちは諸手を挙げてこの「解放」を喜んだ。もう一つは、「改革開放」で、前面的なこうゆう制度と計画経済の束縛から解放されて、新たな経済発展モデルを模索する中で、”腐敗に寛容”な姿勢が、大いに励みになった。これがまあ、今の「官僚モラル」の腐敗が救い難いい状態になった理由だが。
     
     この2度の独裁体制の自救行動は効果的だった。1回目は極端な政治的圧力からの解放だったし、もう一つは、役人たちに「誠に結構」な経済的励みとなったわけだ。

     今、中共のハイレベルが、「官僚のモラル」再建しようというのは、考え方は、かつてのやり方に似て、新たな「ハイレベル設計」をやろうということだ。しかし、明らかに、官界に対する政治的な高圧姿勢は緩めようとはしていない。緩めたら腐敗が元に戻ってしまうからだ。もう一つは、反腐敗キャンペーンの後では、もう再び、経済的刺激を餌にした官界管理は無理だということだ。理由は同じく、これも腐敗に逆戻りになるからだ。前の2回の自救措置に比べると、現在のトップには、事実上、使える手段がもうないのだ。だから、そうした自救能力を再度活性化するのは、大変難しい。

     実際、中共のトップが、官僚のモラルで対処するのに四苦八苦しているのを見ると、既にこの自救能力の可能性は、失われてしまっているようだ。腐敗に寛容な態度を取るというのは、こうした自救機能の最後の手段であって、それが専制政治体制そのものを脅かすようになったとなれば、そんな刺激策はもう使えない。

     残る手段は、高圧的な政治姿勢でもって、役人たちを大人しくさせておくしかない。しかし、役人たちの「面従腹背」をみていると、現場では「ソフトな抵抗」に遭遇しており、強度を上げる余地はもうない。

     政治的な高圧を強化することも、個人の経済的刺激も使えない独裁体制の官界運営が、官僚モラル欠如によって、落とし穴に引き摺り込まれてしまったということだ。(終わり)

     原文は;程晓农:官德日下徒奈何

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