• ★王立強疑惑の背景 — 民主制度を利用して民主を破壊する中国 2019年11月29日

    by  • November 30, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     最近、”王立強”という、真偽のほども評価も定かならぬ中国スパイの話が大騒ぎになっています。彼が明かしたと言われる情報は、自分への関心を集める他は、中共が香港や台湾の政治、選挙への意図的に介入、台湾の中国時報グループや旺旺集団(訳注;飲料メーカーだが 中国電視公司を経営)といったメディアグループを買収したとか、香港の銅羅湾書店の誘拐事件とか、全てネットから得られるニュースばかりです。中国政府も、王立強は、2016年に詐欺事件で調べを受けたというビデオを放送しました。しかし、中国人を含めて、多くの人々が、依然として、王立強は中国のスパイに違いないと信じるようになっています。

     こうした社会の認識の背景は、無視出来ません。これは全て、中共が長年、世界に「紅色浸透」を図り、民主国家の開放的な制度を利用して、民主主義を破壊しようとしてきた報いのようなものです。

    ★中国はFBIの目の前でスパイ網を作った

     FBIの凄い能力はアメリカのテレビ映画でおなじみですが、中国はもっとスゴイのです。なんとそのFBIの目の前で、長年にわたって米国の知的財産権を盗み出し、堂々と「千人計画」を推進し、10年間に70人のノーベル賞受賞者を含む7千人ものハイテク人材を味方に引き入れたのでした。中国の産業がこんなに発展し、製薬業が米国の水準に追いついたのは、多くがそのおかげでした。

     中国が送り込んだのは、訓練されたスパイなどではなく、学者や留学生、ビジネスマン、旅行者らで、様々な方法を使って米国から情報を得ていたことは、別に秘密でも何でもありませんでした。しかし、当時は米国「親パンダ派」の力が大変強かったせいもあって、ワシントン政界や全米の学界、研究機関などで、中国政府の資金援助を得たケースはたくさんありましたが、みな、見て見ぬ振りを決め込んでいました。

     2018年になって、ようやく中国の「千人計画」は、米国政府の調査対象になりました。1年以上の調査の後、米国上院の常設委員会は、この11月18日に「中国千人計画 — 米国研究機関への脅威」を公表。中国が200以上の資金援助プロジェクトで、意図的に米国の開放的な制度を利用して、利益を得たと指摘しました。報告は、中国は2050年に世界のハイテク大国たらんとして、全力を挙げて世界中の専門家を引き入れていると指摘。FBIの報告によれば、2008年から2020年の間に、そのために投じられた資金は2兆ドル、これは国内総生産(GDP)の15%だとしています。

     報告は、仰天の例が書かれています。「千人計画」のメンバーは、勤務先の米国機関には、中国と協力していることは知らせず、米国の研究資金を使いながら、中国に「シャドー実験室」を作り、米国と同様の研究を進めさせました。更に米国の科学技術の研究成果をそのまま盗んで中国に手渡す例もありました。ある千人計画メンバーは、自分の勤務する米国の国家級の実験から3万件にのぼる電子文献を盗み出しました。「千人計画」は、アメリカ国立科学財団、アメリカ国立衛生研究所、エネルギー省、国務省、商務省など、知的財産権にかかわるハイテク分野を含む米国機関から、機密を盗み出し、中国の中・長期科学技術発展計画に沿って、ICチップ、基本ソフト、遺伝子操作、伝染病予防、医学などが対象となりました。

     この千人計画が、2008年に作られたことから、米国は、自分たちの対中国防犯措置が10年遅かったと思っています。が、実際は、20年遅かったのです。米国人は、故意に「コックス報告」のことを忘れたふりをしています。かつて「コックス報告」は、中国が1980年から1990年にかけて、米国で大々的な情報蒐集スパイ活動を展開した、と指摘しました。専門のスパイに頼らず、学者や学術交流プロジェクトで、米国ハイテク界に働く中国系人や、記者らにやらせたのでした。その報告内容は、今回のそれとそっくりでしたが、あいにく時期が天安門事件後の国交回復時で、この報告書は、米国ビジネス界、科学技術界、学界が強烈に反対されて、中には「マッカーシズム」だという人までいたのでした。

     ★豪州は、中国の重大な浸透を受けた

     豪州のハイテク産業は米国のように発達していませんが、それでも、中国の対豪州への浸透は何種類もありました。一つは、政界要人を買収して、現地華人の政界影響力と、メディアを通じて豪州社会への影響力を高め、豪州の中国留学生をコントロールし、豪州人に言わせれば「豪州を中国の傀儡国家にする」ことです。

     豪州における中共のこうしたゲームは、米国では初めから問題にもされずに、言論の自由や報道の自由、結社の自由の角度からしか見られていませんでした。それに比べると、豪州の紅色浸透に対する敏感度合いは遥かに米国を上回っていました。

     2014年4月21日には、シドニー・モーニング・ヘラルド紙がフェアファクス・メディアアジア太平洋エディターのジョン・ガーノートの記事で、中国が豪州の主要大学内に膨大な秘密スパイ網を作っており、中国の情報部員が、かってフェアファクス・メディアに、中国は現在、中国系市民のネットフォーラム監視網を作って、「北京の核心的利益」を守ろうとしていると語ったと書いています。

     この報道後、豪州では中国による紅色浸透を案じる世論が湧き上がり、未だに衰えません。イラン出身の労働党上院議員のサム・ダスティヤリが、スキャンダルで辞職しました。後に、中共勢力の浸透はあまねく、政界、学界、メディア界に及んでいたことが暴露され、大きな社会問題になりました。2016年に、時のマルコム・ターンブル首相(自由党)のもとで、調査が行われました。その結果、中国は豪州浸透を図る深刻な国家であり、政治的影響だけでなく、政府内部にも様々なパイプを持とうとしていたことが明らかにされました。

     2017年6月5日、豪州放送が「中共の豪州における勢力と影響力」という番組を放送しました。これは、豪州放送とフェアファックスメディア連合、FBI、豪州保安情報機構、Attorney-General’s Department 、検事総長、国防安全部門の専門家が制作に参加しました。中国の影響力への懸念から、豪州は、外国スパイと外国政府の内政干渉に関する法律を再検討し、新たな法律は、中国の同国におけるメディア活動、記者活動の限界に関わるものでした。

     ★紅色浸透;民主制度の寛容さを利用して民主制度に反対する

     豪州の反紅色浸透の成果は大変多いのですが、ここではメディアでおなじみの黄向墨(訳注1;巨額政治献金で居住権剥奪)、严雪瑞(訳注2;Sheri Yan、豪州情報部員の妻。スパイ容疑で逮捕)事件は割愛して、クリーブ・ハミルトンの「サイレント・インベージョン」を紹介しましょう。

     著者は大量の事実に基づいて、中国が各種の手段を通じて、豪州を傀儡国家にしようと、わずかにこの15年間だけで、歴代首相のボブ・ホーク(労働党。任期;1983〜1991)、ポール・キーティング(労働党。任期;1991〜1996)、ケビン・ラッド(労働党。任期 2007年〜2010年6月24日、2013年6月〜2013年9月)を籠絡し、これらの政治家を中共の新たな買弁の手先とし、豪州の農業、不動産、大学に大量の中国資金を導入させました。中国は、豪州の官界、学界、産業界の最大のスポンサーとなったばかりか、豪州のナンバー2の地主になりました。この本が書かれた時は、まだ豪州は、中国とべったりの時代だったので、出版も3つの出版社から断られ、作者は「反中国」のレッテルを貼られ、同書は「新黄禍論」だと非難されました。

     しかし、この本は、豪州人に、自由と法治への警鐘となりました。二人の新聞社の政治記者も、中国スパイに関して、“The Marmalade Files” (「オレンジファイル」)と“The Mandarin Code”(「中国語の暗号」)2冊のドキュメンタリーを表し、これは連続テレビ劇「秘密の城」となって、シーズン1、シーズン2まで撮影が進んでいます。

     私は、このシーズン1を見ました。私は、中共が世界中でやっている紅色浸透の深刻さを十分承知していますが(訳注;何清漣氏は「紅色浸透」を2019年に台湾で出版。日本では福島香織氏が翻訳、「中国の大プロパガンダ――恐るべき「大外宣」の実態 (扶桑社BOOKS)、それでも、豪州政府の、情報部門の高官にまで、中共の手が伸びているのは、いくらなんでも変じゃないかと思ったものです。

     しかし、シドニーモーニングヘラルド紙(11月22日)の、前豪州情報部門の責任者だったダンカン・ルイス氏の記事を読んで、やっとこれが、作り話ではないことを知りました。

     ルイスは、中国は、こっそりスパイ活動による影響力を使って、豪州の政治システムを乗っ取ろうとしたと指摘しています。中国は、目標を定めて、一定の政治機関の人間に対して、「スパイと国外勢力を潜伏させ、何十年も眠らせておく(スリーパー)。人々がその働きに気がついた時には、もう遅い」と書いています。つまり人々がある朝起きてみると、自分の国家が行なった決定が、自国の利益にならないことを発見するというわけです。そして「これは政治分野だけではなく、社会や経済分野でも同様で、国外勢力が根本から乗っ取りを果たし、国外からその影響力をコントロールする」と述べています。

     ★目覚めた豪州、まだ半分熟睡の米国

     こうしたニュースを見ると、豪州の情報機関は、米国のFBIより早くから目覚めていたようで、中共の情報部の創始者の周恩来がスパイ工作でやった「スリーパー」のやり方も分かっていたようです。(原注;その由来は知らなくても)。

     この「スリーパー」を重要部門に配置するというのは、長年眠らせておいて、肝心な時に一撃で相手を倒す手法で、例えば、周恩来自ら、米国帰りの経済学者、冀朝鼎を国民党政府に潜り込ませて、国共内戦の最も大事な時期に、時の指導者・宋子文に間違った経済政策を勧めて通貨改革を失敗させ、国民党政府の金融システムを台無しにさせました。

     米国のハリウッドの人々は、政治をテーマにするのが大好きなのですが、最近はもっぱら中国資本が入っていますから、中国スパイの話は見て見ぬ振りをしており、今に至るまで、一切「秘密の城」のようなテレビドラマは作りませんし、当然「声なき浸透」といった警告的な作品も作ったことがありません。(終わり)

     原文は;王立强疑云背景:中国利用民主摧毁民主

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