• ★「2019年の漢字」 — 中国なら「幻」 2019年12月31日

    by  • December 31, 2019 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     毎年、年末になると漢字を使用する国々、日本や台湾では、その一年の社会状況を象徴する文字を選ぶ行事が人気を呼んでいます。私は、これを中国社会に当てはめると、2019年にふさわしい文字は「幻」だと思います。

    ★「チャイナ・ドリーム」が幻になった

    「中国夢」(チャイナ・ドリーム)は、習近平総書記が2012年11月に打ち出した「中華民族の偉大な復興の実現、中華民族の近代以来もっとも偉大な夢」のことです。政府の解説では、「中国夢」の核心目標は、「二つの百年の目標」でした。つまり、2021年の中国共産党結成100周年と、2049年の中共政権百周年に、中華民族の偉大な復興を順調成し遂げるということです。具体的には、国家の富強、民族の振興、人民の幸福であり、その実現には、政治、経済、文化、社会、環境の五つです。

     しかし、この一年余りの米・中貿易戦争によって、「中国夢」を支えていた経済基盤は、深刻な打撃を被りました。ここでは、一般大衆が豚肉を食べ難くなったアフリカ豚コレラなど、日常の暮らしの話はさておいて、北京が最も心を砕いていた、「米国追い越し戦略」の破産を取り上げます。中国の国家富強、民族振興、人民の幸福は、全てがこの「対米追い越し戦略」のカナメでした。しかし、貿易戦争が始まってからは、目標から、ますます遠ざかるばかりです。私が★米・中貿易戦争 — 米国が得た三つの勝利 防御に追われる中国  (2019年12月21日)で書いたとおり、米国の勝利は、すなわち中国の敗北です。

     まず、対外拡張戦略が夢と消えました。「一帯一路」構想(BRI:Belt and Road Initiative)が必要とする巨大な投資は継続出来ません。アメリカ企業公共政策研究所(AEI)が開設した「中国世界投資調査」(China Global Investment Tracker,CGIT)によると、このプロジェクトの2019年上半期の統計で、中国が全世界に向けた建設投資プロジェクトの金額は275億米ドルで、2018年同期より50%も減っています。この傾向は、今後数年間、変わらないだろうと見られています。

     次に、世界の工場の夢は、微塵となりました。多くの専ら輸出を仕事にしていた外国企業が引き上げるにつれて、グローバル産業チェーンは、もう2度と中国を中心とはしないでしょう。今年の上半期に中国は、世界一の輸出大国の地位を失い、米国が世界一を奪回しました。中国は、過去20年間続けて来た世界の主要輸出国だった地位への打撃となりました。

     三つ目は、米国の知的財産権のただ取り使用、という夢が消えました。米国における知的財産権窃盗の「千人計画」は絶たれ、米国を追い越す夢は水の泡と消えました。

     対外拡張路線、世界の工場、知的財産権のただ取りが幻となったからには、「二つの百年」のチャイナ・ドリームは、2021年を待たず、2年繰り上げて幻となったのです。

    ★民間企業 — 20年の富貴も一場の夢と

     チャイナ・ドリームが幻となれば、官僚と結託して、政治協商会議委員に入れてもらい、人民代表大会で「仲間の精鋭たち」と言われた金持ちの実業家や民間企業家の富貴も、自然と夢幻と消えます。

     ここ数年、中国の金持ち実業家や民営企業は、苦しい日々で、私はこれを★「企業の”自主的”汚点探し」は「公私合営2.0」の突破口  (2019年9月27日) で書いておきました。

     中国政府側が、この数年ずっと”世論”を作り出し、反腐敗キャンペーンを民間企業にまで拡大し、法律家によれば民間企業が関わりうる腐敗の罪は、全部で15にもなります。そのうち、最も重要なものは、機関対象の贈賄罪、職務横領罪、資金流用罪、非公務員贈収賄罪です。騰訊、京東、華為、阿里巴巴、百度など、多くの大型民営企業は次々と内部反腐敗の列に加入しました。

     中国の民間企業経営者たちの蓄財の基本は、様々なグレーゾーンから、チャンスを得て、それを利用して、贈賄や違法な経営、脱税などから、手入れを行うのは、中国当局にとって手慣れたものです。ここ数年、使われて来た方法は、2種類あって、一つは軟禁、政治的圧力でもって、政治的なバックを持ったスーパー級の大物にも、国外の財産を中国に戻させました。呉小暉、蕭建華、王健林などがこれに当たります。二つ目はアリババの馬雲方式で、各種のやり方を通じて、自分から引退して、自分の会社を「国家に捧げる」やり方です。香港の富豪たちも、北京の圧抑で次々に土地を寄付しています。

     大民間企業を絞り上げることで、中国政府は少なからぬ資金を手にしました。中国政府はこれに味を占めて、今年、立て続けに二つの大きな動きをしました。

     一つは、9月12日に国務院が発表した「事中・事後監督管理の規定を強化に関する指導意見」で、義業や他の機関の中に、通報者制度を作り、内部からの違法行為の通報を奨励しようというものです。二つ目は、大ぴらな恫喝で、12月3日、最高検察長の張軍は公開の席で、「民間企業の責任者の容疑者が逮捕されないことも出来るし、起訴されないことも出来る、刑を軽くすることも出来る」と言い、その証拠として、「今年10月、国有企業の企業関係者の犯罪の不逮捕率は29%だった。これは刑事犯罪全体より6.9%高い」と言いました。この中国の独創による「犯罪不逮捕率」は、民間企業経営者を「準犯罪状態」に置くものです。

     江沢民時代の「3つの代表」は、資本家を中共に入党させ、中央、省、地県クラスの政治協商会議、人民代表大会などに、民間企業経営者のエリートを”仲間”だとしたのは、もう一場の夢となりました。

     馬雲は中共の「大事な弟」で、これまで語弊のあることは言いませんでした。2017年には、「今日の中国、今日の時代は最高のビジネス時代」と言い、2018年には、依然として「中国には二つの優位性がある。我々の国は世界で一番安全な国家であり、この国家のビジネス環境は最も素晴らしいものだ」と言いました。しかし、最近、馬雲は、ついに「皆、やってくのは大変だ。今年、大部分の企業は、皆苦しい目にあったが、まだこれは始まりに過ぎない」と認めました。私は、馬雲もまた、一代で築き上げた財産が、煙のようになってしまうのを見てとったのではないかと思います。

     ★民間の安定剤 — 権力幻想と環境幻想

     今年の中国映画は、全体にさっぱりでしたが、ただテレビシリーズ「慶余年」(Joy of Life)だけヒットしました。

    「慶余年」を見たのは、陳道明が出演していたからなのですが、初めは、全くのデタラメな話だと思ったのですが、陳道明は、これまで降らない映画に出演したことがないのを思い出し、我慢して見続けて、この作者が中国人の性格を洞察する名手だと思いました。

     これは、一種のSF物語を通じて、現実の生活では障害者が、次元の違う世界で、皇帝と神仙の世界を往来する仙女の私生児で、養父は大蔵大臣兼皇帝の竹馬の友(その母親は皇帝と親しい乳母)で警視総監兼検事長で、母親の大ファンで親友。仙女の母親は、商売の天才で巨富を残した上に、「天人の血脈」を残し、詩を作って世の人の為に尽くし…と、金庸の武俠小説を原作としたテレビドラマ「鹿鼎記」の主役だった偉小宝より高貴な生まれで、何倍も才能があり、当然、何でも思うままの不可思議な、どんなに高貴な女性でも皆、惚れ込む、どんな人でも皆、彼を好きになる。正義でもあり邪でもあり、悪のかっこよさもあって…と、まあ西洋の単純な「正義の良い人が良いことをする」などというスーパーマンより、よっぽど中国人には魅力的なキャラなのでした。一言で言えば、「慶余年」の主人公の范閑は、朝廷の権力、在野任侠の神秘、宮廷内闘争劇、武侠小説を全て兼ね備えた幻想の集大成物語です。

     范閑のような人物が、作り出されるのには、社会的な根っこの理由があります。中国は身分制社会で、一人の個人の運命は、大きく出身家庭によって決定されます。この10数年来、大学生は卒業したらすぐ失業が待っていますし、社会的に這い上がろうとしても道は塞がれています。そこで、偉小宝より勝る范閑が登場し他のは、現実の中では、上に登る道など見つけられない社会の中・下層へのひとつの、なぐさめのようなものです。

     ★汚染国家の環境幻想:ビデオブロガー李子柒

     数年前、中国国内の環境汚染の酷さについては、様々なニュースで伝えられました。河川や湖、海は汚染されつくし、土地は更に酷く重金属に犯され、最後には雾霾が空を真っ暗にしました。この2年間、汚染関連の報道が減ったのは、当然、環境がいささかは改善されたからではなく、報道が規制されたからです。というのも、環境問題を少しでも理解していれば誰でも分かるように、雾霾は工場を止めて、農村の燃料に石炭や草の代わりにガスを使わせればなんとかなりますが、水質と土地は短期間になんとも改善するのは不可能ですから。

     しかし、清潔な飲み水と、清潔で快適な環境に住むことは人権の一種です。西側国家はとっくに、環境権を基本的人権の一つとしています。これは中国人にとっては、当然、贅沢な望みです。そして、中国当局がNGOを弾圧し、大量の環境NGOが中国から消え失せた上、環境保護部門の腐敗が不断に暴露され、中国人にとって、環境権はますます遠いものになってしまいました。

     そこへ登場したビデオブロガー李子柒の田園生活の動画は、たちまちネットの人気を集め、ネット上には「ビデオブロガー李子柒ファンクラブ」が生まれました。彼らにとっては、ビデオブロガー李子柒が作られた幻想であることはどうでもいいのです。ただ、彼らのために、嘘でも幻でも美しい動画さえあればよろしい。

     例えば、DDC @Iang0606なるツイ友は、「李子柒の出現は生活に必要な平和、自由、満ち足りた気持ち、勤労、人と自然のハーモニーをもたらし、世界の普遍的な価値を体現している」と言っています。西側国家の環境権は、本当に実体としての美しい環境を求めるのですが、このツイ友の独特な理解は、普遍的な価値が中国に普及するのは、一筋の、虚構の上のでもいいから、全く現実でなくても良いというのです。

     それなら、中国の民主化ははるか未来のいつとも知れぬことですから、ネットの上で国民投票をして、国家元首を選出してみてはどうでしょう? 現実に中国が民主化されるのと変わらないのでしょうから。中国人に言わせれば、「幻」の文字を、2019年の文字とするのは、いささか情けないことですが、真実です。チャイナ・ドリームは幻影を作り出し、富や財産の夢は日増しに儚いものになり、権力の幻想と、環境の幻想に支えられて、人々は2020年を迎えます。(終わり)

     原文は:评论 | 何清涟:2019年中国年度汉字:幻

     

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