• ★台湾の「紅色浸透」と「緑色恐怖」 2020年01月08日

    by  • January 8, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

    中国 何清漣
    中国 何清漣

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     2020年1月11日に中華民国(台湾)で行われる2020年中華民国総統選挙では、国民党が不振で、総選挙史上最悪の惨敗を喫するかもしれません。それで、中共は世論宣伝の重点を、「誰が勝つ可能性があるか」ではなくて、「緑色恐怖」を大いに宣伝しています。(訳注1)

     2019年12月25日には、中国の国務院台湾事務弁公室スポークスパーソンの朱鳳蓮は記者会見で、「民進党当局は、両岸の敵意を掻き立て、いわゆる『中共代理人法』と『反浸透法』を強行し、「緑色恐怖」で、政治を操って、『極めて悪辣な影響で、危険である』」と述べ、総統選国民党候補者の韓国瑜派からは熱烈な喝采を呼びました。

     長年、私はずっと中国の世界各国に対する紅色浸透活動を追跡して、台湾における浸透ぶりを専門的に研究したことがあります。国務院台湾事務弁公室と国民党の言う「緑色恐怖」の危険という話を聞いて、中国の諺「泥棒が『泥棒だぁ!』と叫ぶ」思い出しました。

     ★中共の紅色浸透が世界を害する

     中共は、自ら孔子の伝承者と称していますが、かの聖人の肝心の経典「己の欲せざるところを、他人に行う勿れ」と言ったのを忘れています。忘れたどころではなく、まさにその反対に「自分は好き勝手で良いが、他国には許さない」のです。例えば以下のようなことです。

     (1)中共は他国で、メデイィアを作り、あるいはメディアに資金援助しています。例えば米国では、大紀元系、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、ラジオ・フリー・アジア(RFA)をのぞいた大多数の中国語メディアをコントロール下に置いています。その上、多くの英語放送局まで買収し、多くのニューメディアとネット企業を作り、あまつさえワシントンポストなどの国際メディアの紙面まで買収し、中国政府に有利なニュースを流し、米国の特定の州の政治動向に影響を与えようとしています。

     2019年12月18日、ワシントン・フリー・ビーコンのウェブサイトは、「中国がデータ開示法に違反し、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントンポスト紙を宣伝に」を掲載しました。過去7年間に中共の「喉舌」であるチャイナデイリー(訳注2)は、米国に700以上のニュース形式の宣伝広告を掲載し、米国の有名なメディアから500ページの紙面を購入して、中共がチベットや新疆、香港で行なっている弾圧措置を誤魔化すための記事を掲載した、と。

     ジム・バンクス下院議員(共和党)は、「中共宣伝を助ける米国メディアにとっては、民主主義が死んだってどうでもいいんだ。自分さえ儲かれば」と言いました。中国は、米国内でこうですし、香港や台湾を含む世界各国でも同様にやっています。詳しい分析は、拙著「中国の大プロパガンダ」(福島 香織訳、扶桑社刊)をお読みください。

     (2)中国は国交のある各国で、大ぴらに、または半ば大ぴらに政界関係者を買収している。米国、豪州、カナダ、ニュージーランド、台湾で、中共はこれを行い、暴露された例も少なくない。米国では30年以上、親パンダ派を政界、実業界、学術界、メディア界で養成し、中国との「深い仲」にからめとられてしまった人々は多い。米国からの知的財産権窃盗では、中国は「ハイテク人材」を引き込む「千人計画」を立て、米国の国家級研究機関や各大学ではたらく中国系エリートを「祖国の富強」のために、米国が巨額の費用とマンパワーを投じた各種の研究成果を盗ませた。

     米国上院の常設委員会が去年11月18日にだした「中国千人計画:米国研究機関への脅威」では、中国は200以上の資金援助によって、悪意を持って米国の開放的な社会制度を利用して、自国の利益に利用したと指摘。中国が2050年に世界のハイテク大国になる計画のために、総力を挙げて世界各地の専門家を招いている、と。FBIの報告では、中国が2008年から2020年の間に、GDPの15%に相当する2兆米ドルを投じたとされる。

     (3)様々なルートを通じて、資金を流して、特定の国の特定の候補者を当選させようとする。これは、特に豪州ではっきりしており、2014年に豪州の労働党上院議員のサム・ダスティヤリ(Sam Dastyari)が、中国共産党とつながりを持つ中国人富豪との癒着が取り沙汰され辞職しました。

     後になって、豪州ではこの種の浸透は政界、学界、メディア全体に広がっていることが分かって、深刻な社会問題になった。2016年、豪州のマルコム・ターンブル総理は一連の調査を命令。その調査によって、豪州は中国の浸透の最も深刻な国家で、中共は豪州の政治に影響を与えようとしていたばかりではなく、豪州政府の各レベルにパイプを通じていたことが分かった。

     ここではメディアで話題のスパイの話ではなく、チャールズ・スタート大学のクリーブ・ハミルトン教授の「サイレント・インベージョン」(静かなる侵略)を紹介します。作者は大量の事実を元に、中国が様々な手段で、豪州を傀儡国家に変えようとして、この15年間にボブ・ホーク(1984〜1991)、ポール・キーティング(1991〜1996)、ケビン・ラッド(2007〜2010、2013)らの歴代首相を籠絡し、彼らを北京の代理人に変えてしまい、大量の中国資金が豪州の農場、不動産、大学に流入。息の音もさせずに、中国が欧州官界、学界、産業界の最大のスポンサーに、また第2の大地主になりました。

     以上の全ては、台湾でも同様に中共は行なっています。国民党の政治、軍事、学術文化面でのエリートは、全て中共の統一戦線部の重点対象とされています。韓国瑜は「反浸透法は、台湾人に恐怖を植え付ける悪法だ」と言いますが、もし台湾人民が「国民党」が中共の台湾の代理人になることを恐れると言うのなら、完全にその通りです。この法律は、台湾が紅色浸透の恐怖と暗黒の未来から、解放されるためなのです。

     ★「緑の恐怖」は「泥棒が『ドロボー』と叫ぶ」

     国民党は、反浸透法に反対する前に、よくよくお考えになったほうがよろしい。中国政府は、世界各国で好き放題やってますが、自分の国では、中国と同じことをやらせていますか? そうした国々の国家のテレビや放送局、新聞のうち、一社たりとも中国でメディアを開けたところはありません。

     中共とは、まだうまくやっているとも言えるニューヨーク・タイムズ紙中国語版ですら、中国国内では流通出来ません。どんな外国メディアの駐在記者でも、中国のマイナス面に関わるニュースを報道しようものなら、ビザの延長が出来なくなる危険に直面します。中国と外国の相互訪問学者では、米国に行った学者は自由にアメリカの社会制度や欠点を批判できます。

     しかし、中国を訪れた学者は、中国では大ぴらに北京当局を批判出来ませんし、中国の雑誌だって、外国人学者の文章を掲載しますが、大半は、中国を賛美し、母国を批判するような文章です。例えば、近年、米国学者がトランプの貿易戦争を批判したりしたとか。中国は、米国で紙面を購入して、トランプの対中国政策を批判し、中国を賛美出来ますが、米国が中国でそんなことは出来ません。

     もし、国民党が本当に「緑の恐怖」が怖いなら、まず、中国の紅色恐怖」がどんな状況か見てみたらどうでしょう?

     中国ではいかなる批判的意見も許されませんし、街頭デモで訴えることも許されませんし、グループを作ることもダメです。大学、中学、それどころか小学校でも、大ぴらに学生が教師の「反動」「不適切な政治言論」を通報することが奨励されています。ここ数年では、政治的に「敏感」な時には、数人で集まることさえ許されません。

     台湾国民党は、更に、中国は世界最大の人体臓器供給国ですが、その供給源はどこか不明だという事実も見るべきでしょう。もし、香港の2019年逃亡犯条例改正案反対デモ以来の状況が台湾人に大変怖かったと言うのなら、台湾人に私は言いたいのですが、香港だけがまだ、抗議出来たのであって、中国では抗議する人もとっくにおらず、抗議など見られないのです、と。

     ですから、国民党は本当に怖いのは、「緑の恐怖」などではなく、本当は、台湾が、反浸透法を通過させた後では、もう国民党の人士は以前のように、北京からお金をもらえず、台湾で中共政権の代理人になれないのが怖いのです。

     ★民主政府に「NO」を言うのは勇気ではない。

     国民党は百年以上の歴史を持ち、かつては中共と長く戦って敗れて国を失いましたが、今日の後継者はその屈辱の歴史を忘れたばかりでなく、中共がどんな性質の政党であるかも、お忘れになったようです。今、西側国家のファイブ・アイズ (FVEY)(訳注インテリジェンスにおける共同協力の条約、多国間UKUSA協定の締約国。米英豪加NZで構成)のニュージーランドでは、中国が影響力を『購入」したために親中国です。

    で、このファイブ・アイズは、一度は、もうすぐ崩壊するとも言われていました。ところが、現在、他の4カ国が、大っぴらに中国の浸透に反撃の狙いを定め、他の国も参加して、再び中国にとって頗る気に入らない国際線戦が形成されようとしています。この法案は大ぴらに中国に狙いをつけており、二つの法案からなります。一つは米国の「世界マグニツキー法」(The Global Magnitsky Human Rights Accountability Act)(訳注4)で、豪州やバルト海3国も同様の法案を通過させました。欧州連合(EU)版の「マグニツキー法」は2019年12月10日から正式に発効しています。

     二つ目は、各国が次々に、反スパイ法、浸透防止法、外国人代理人登記法を制定しています。豪州では近年、外国影響力透明度法、スパイと外国干渉法が出来ました。2019年12月に英国保守党が勝利したあと、新政府は数十項目にわたる立法プランを提起し、その中には、スパイ行為と外国人代理人法案の立法も含まれます。詳細は、★人権問題で「中国包囲網」が国際戦線化  2020年1月1日 をごらんください。
     今尚、少なからぬ台湾人が、本当は中国の台湾浸透を気にしていないとい割れます。私は自分が経験したことを思い出します。

     2003年、一群の大陸の学者、中国の米国に亡命したプロテスター、台湾青年が米国のコネチカット州トリニティ・カレッジで、中国と台湾の関係で話をしました。そこに台湾の「非戦家園」というグリーンピースNGOも参加しており、大いに台湾の米軍からの武器買い付けを批判しました。

     そこで私は、「あなたがたは、台湾と平和的関係にあるべきで、武力使用に反対するという主張を、中国大陸でしたいと申請したことがありますか?」と聞きました。彼らはしたことがないと答えました。私は、再度「あなたがたは、言論の自由と政治の自由が許された民主政府で大声で、武器を捨て、軍備購入に反対しているのに、武力で台湾を統一すると脅かしている大陸に赴いて講演しようとしない。それでは本当に平和を説いていると言えるのですか?」「それでは、平和を説くと言うより、台湾の人々に大陸に侵略されるままになれ、というのと同じではありませんか」と言いました。他にも同様の意見がありました。

     翌日、集まりが終わった後、彼らが訪ねてきて、大変誠実な態度で「自分たちは、これまであなたの言われたことを考えたことはなかった。今後はよく、どうすべきか考えます」と言いました。

     あのときの台湾青年同様、私は台湾の親北京派の人々に、真面目に中国の共産政権に対して、「紅色恐怖」とは何かをはっきりと認識してほしいと思います。強権に対しては、腰を曲げ、膝を屈し、民主政府には大声で「NO」と叫ぶのでは、それは勇気ではなく、政治的オポチュニズムです。(終わり)

    訳注1;緑は民主進歩党カラー

    訳注2:チャイナデイリー。中国日報。中国共産党傘下の英字新聞

    訳注3;教授は著作で、中国は「民主主義を利用して民主主義を破壊する」と指摘したが、大手出版社3社が出版を断り、言論出版の自由が危機にあるとして、豪州でニュースとなった。

    訳注4;ロシアの弁護士マグニツキーは巨額の横領事件を告発したが、逆にモスクワの牢獄で死亡。米国ではこの事件から、2012年、関係者のビザ発給禁止、資産凍結を可能にする同法を制定。

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。急ぎですので誤字、脱字ご勘弁。電子本は直してあります。多分w

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