• ★2020年中華民国総統選挙— 救国の願いが全てだった  2020年1月14日

    by  • January 14, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     台湾民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が再選を果たしました。2016年同様、今回も、また危機感が民意を動かしました。ですから、台湾の多数の人が蔡英文を選んだというよりは、「干しマンゴー」「亡国危機感」(訳注1)が、台湾を守る選択をさせたと言うべきでしょう。しかし、激しい興奮が過ぎ去れば、蔡英文執政期の多くの問題は、台湾人の眼前に再び並ぶことになります。ただ、国際環境は、現在中国に不利となっており、台湾が上手に対応すれば、北京の強大な圧力にも耐えられるでしょう。

     ★米国と香港の総統選挙への影響

     台湾の運の良さは、中国の国際イメージと国際的地位は、どちらも下がるという国際環境の急激な変化にありました。2018年に始まった米・中貿易戦争は、米国の対中関係見直しを促進し、米国の対中姿勢急変がお手本となって、国際社会に大きな影響を与え、主要西側国家に、中国にとっては、すこぶる有り難くない国際線戦が出来てしまい、中国の国際的地位は急激に落ち目になりました。私は「★人権問題で「中国包囲網」が国際戦線化  2020年1月1日」で、中国の紅色浸透に照準を合わせた対策としては、二つあることを指摘しておきました。

     一つは、米国の「世界マグニツキー法」(訳注2)に倣って、豪州やバルト海3国が類似した法案を採択し、欧州連盟(EU)版の「マグニツキー法案」の立法化も去年12月に始まりました。もう一つは、各国が次々に反スパイ方、反浸透法、外国代理人登記法を制定したことです。オーストラリアは、「外国人影響力透明度法」「スパイと外国干渉法」を制定し、英国保守党も、外国スパイに対する厳しい措置や外国代理人プロジェクトに関する立法を計画しています。台湾の反紅色浸透は、国際社会の反中国浸透に対する重要な一環となります。

     二つには、何カ月も続いた香港の2019年逃亡犯条例改正案反対運動(反送中)は、台湾人の間に深刻な危機感を生み出しました。この二つの影響で、「台湾の民主主義擁護」が何よりも優先する課題となって、2018年中華民国統一地方選挙で、選挙戦の中心テーマとなった「蔡英文の政治的実績」の話は、問題にもならなくなりました。

     しかし、チャンスは一度でも幸運です。2度も有ったのは奇跡です。民進党政府は、台湾の民主主義を守るために合計8年間の時間を勝ち取ったのです。これからの4年間、北京は依然として虎視眈々と狙っていますから、民進党政府は、大いに心して、民衆の気持ちを理解し、政治的実績を上げるために頑張らねばなりません。さもなくば、4年後はどうなるか分かりません。

     ★民進党は米国民主党を師としてはならない

     反省することが出来る人には、失敗は成功の母です。蔡英文総統は、勝利演説で「勝利したからといって、反省を忘れるようなことがあっては絶対にならない。過去4年間、私たちは成果も上げたが、足りない部分もあった。台湾人民が私たちにあと4年をくれたが、私たちは、十分でなかった点、出来なかった点を、もっとよく、さらに多くやらねばならない」と言いました。

     蔡英文の4年間の執政は、欧米の左派を師として学んだために、台湾での社会政策が左に偏向し過ぎて、また台湾の実情を考えないものでした。例えば、労働者の福祉の向上を意図した「一例一休政策」(訳注3)は労使双方からの不満を買いました。また古い自動車の廃棄環境法案は、民進党の地盤の農村地区から不満を買いました。国民投票の結果を無視した同性婚合法化推進などなど、有権者の国民党支持につながる不満を招いたばかりか、民進党の支持基盤をも動揺させてしまいました。

     2019年5月に、訪台した時に各界の人士に会いましたが、皆さん、民心の離反、大陸からの圧力、「韓流」(韓国瑜)の勢いなどを、大いに心配しており、中には、2020年の選挙が、台湾での最後の民主選挙になってしまうのではと懸念の声もありました。台湾のインターネット上には、「干しマンゴー」「亡国危機感」の文字が登場していました。

     しかし、私はきっと転機があるだろうと見ていました。米国が中国との関係を見直そうとして、対中政策を変えようとしていましたから、これが必ず、国際環境の変化を生むだろう、台湾は、このチャンスをうまく使うべきだとおもいました。

     同時に、一切の遠慮なく、台湾の方々には、蔡英文政府の社会政策は再検討すべきだと申し上げました。蔡英文本人が、西側左派の大本営の英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクス卒業で、民進党は、イデオロギーでは米国民主党を教師として追随しているのです。しかし、事実が証明しているのは、現段階での米国民主党が標榜する多くの「進歩」とやらは、まさに社会の正常な秩序の根幹を傷つけています。台湾は、イデオロギー的には米国民主党が民進党に近いけれども、台湾が中国に対抗するのを助け、支持したいと願っているのは、イデオロギー的には食い違う共和党の方だということを認識すべきです。民進党の青年幹部たちは、この点は同じ判断をしていました。とはいえ、北京に対抗するために民進党支持に努力しようという、共和党とトランプ政府は、こうしたことを理解していないかもしれませんが。

     私は特に、米国民主党政府のやった、例えばオバマ前大統領の麻薬の合法化や、心理によってトイレを選ぶ制度(原注:公共トイレの男女同一使用)、性別の多元化によって、何重もの性別(原注:ニューヨークしでは30種以上など)、国家の財力(原注;つまり納税者の負担による)高度な福祉制度など、一連の無茶苦茶な社会政策が、社会の倫理と経済的なまともな発展に不利を招いたことを指摘し、台湾は、決して「猫を見ながらトラを描く」ような、愚かな真似をしてはならない、と申し上げました。

     台湾は、米国民主党の極端な開放主義を真似るのは、同性婚でもう十分であり、更に推し進めようものなら、自党と台湾社会のどちらにも損害を招きます。私は、公権力とプライベートな領域の間には、一線を引くべきで、公権力の介入過剰は、多くの人々の個人の自由に影響を与えてしまうと思っています。

     現在、フランスは、自分らが作った高度な福祉制度のせいで、苦境にあります。欧州かっこk政府も皆、高度な福祉で借金の山を築き上げてしまい、米国民主党の20数名もの大統領指名競争に参加している候補者の唱える社会政策は、オバマ前大統領でさえ、あまりにも左翼的過ぎるとして、しかたなく「現実からはみ出すべきではない」と苦言を呈しているほどです。

     民進党はこうした教訓を汲み取って、もうこれからは米国民主党を社会政策の師とすべきではありません。私は、蔡英文総統が、勝利演説の中で述べた「足りなかった事や、十分でなかった事」の反省リストに、「やろうとしてできなかった」リストに、こうした米国民主党の極左的社会政策が入っていないことを望みます。

     ★「自由は代価を伴う」を台湾人は知りましょう

     台湾と韓国は、かつてアジアの「4匹の小竜」と呼ばれ、民主化と同時に経済的離陸を果たし、先進国の仲間入りを遂げました。ですから、台湾人は、みな経済発展は民主主義の必然的な結果だと思っています。実は、経済発展と一国の資源の状態は、適切な国際環境の下で合理的な産業政策を採ったかが関係するのであって、民主主義の必然的な結果ではありません。台湾だろうが香港だろうが、その経済発展と中国大陸の間には密接な関係があります。大陸が経済的に、鎖国状態から開放に向かった時、香港や台湾は、先発の優位さによって、経済的ボーナスを獲得し、その結果、経済が空洞化しました。

     大陸の経済が高速発展してからは、香港、台湾は、大陸に一定の依存関係となり、北京はこの依存関係を利用して、弱みに付け込んで、大陸への求心力にすべく、脅しにかかりました。中共が国民党の誰かを総統に当選させたかったのは、国民党の政治エリートが金銭と引き換えに中共の属国になってもいい、民主主義を売り渡してもいいと思ったからです。国民党が中共に頼って優位に立とうとしたことは、実際、台湾に真っ赤な毒リンゴを飲み込ませようというものでした。

     今回、台湾で失敗した中共は、必ずや各方面、とりわけ経済的に台湾を締め上げにかかるでしょう。例えば、台湾に「利を与える」ことは、だんだん減らすようになるでしょう。例えば観光客の訪台や、台湾農産品の輸入削減、台湾と国交のある国を買収して減らしにかかること(原注:韓国瑜はこれを、蔡英文政権の外交的失敗だと言いましたね)などです。予想出来ることは、2020年に、中国は「東アジア地域包括的経済連(RCEP)」の影響力を使って、そのメンバーに対し、台湾への門戸を閉ざすようにさせようとするでしょう。

     RCEPは、東南アジア諸国連合加盟10ヶ国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヶ国でFTAを進める構想です。2019年11月4日、交渉がまとまり、インドは退出しました。これは世界では、中国大陸が指導したものと見ています。中国(中共)は台湾の選挙結果に、恥と怒りでカンカンですから、いったんRCEPが調印されたならば、台湾のRCEPメンバーの30%の輸出は影響を受けましょう。(原注;その他70%は、すでに関税ゼロになっている)。それだけではありませんで、中共は、更に2010年6月に中国と両岸経済協力枠.組協定(ECFA)を一方的に破棄しかねません。

     こうしたことは、台湾が、台湾の民主と独立を守るために払わなければならない代価です。台湾人民は「自由は無料ではない」ことを知らなければなりません。台湾が民主主義と自由と独立国家の地位を得たいのであれば、また大陸から引き続き経済貿易の美味しいところを得たいという、この二つは同時に共存出来ません。「花も団子も」とはいかないのです。

     台湾国民党が政権を失った手痛い経験から、大陸に政治的支持を求めるようになって以来、これまで台湾では、選挙のあるたびにいつも、台湾人は「中国化すべき」と「中国化はいやだ」の間で選択をしてきました。

     馬英九が当選した頃は、香港の「1国2制度」の深い問題は、まだ潜伏していましたが、香港と北京間の矛盾が日増しに先鋭化する中で、2014年に起きた香港雨傘運動と2019年の「反送中」運動は、どちらも台湾人に「干しマンゴー」「亡国危機感」から、奮起を促しました。しかし、総統選挙のあるたびに、うまく似たような事件が起きて、台湾人の「干しマンゴー」「亡国危機感」を思い出させることは、望むことは出来ません。台湾の政界と民衆が、民主主義を守る苦しい戦いに備えて、十分な心の準備をされることを願っております。(終わり)

    訳注1:「芒果干」máng guǒ gānは「亡国感」wáng guó gǎnと韻が同じ。
    訳注2;ロシアの弁護士マグニツキーは巨額の横領事件を告発したが、逆にモスクワの牢獄で死亡。米国ではこの事件から、2012年、関係者のビザ発給禁止、資産凍結を可能にする同法を制定
    訳注3:2016年に蔡英文が提唱した完全週休二日制。「一例」は、原則的に労働者を出勤させてはならない日となり、雇用側に大きな負担になる)

     原文は;何清涟:2020台湾大选——救亡压倒一切

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