• 程暁農 ★2020年の中国経済を待つもの  2020年1月16日

    by  • January 18, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     「2019年は、これからの10年では最良の1年になるだろう」(訳注1)は、どうも正当な道理があるようだ。専制体制下の地方経済発展競争は、「詰んだ将棋」になりやすい。今後、輸出、投資、消費のどれもが経済成長を支えられなくなり、外国から知的財産権をロハで盗んでくるのもダメとなれば、経済繁栄の再建など、みな嘘っぱちになってしまうからだ。

     ★経済下降と「寒冬」

     2019年は、中国経済に重要な変化が起こった一年だった。これを、政府側は経済「下降」と言い、民間では「寒冬」とよんでいる。中共の宣伝メディアの多維ニュースネットは、去年12月21日に「北京ウォッチ 中央経済工作会議閉幕 中共はいかに2020年の期末試験を迎える?」を発表した。そのうちの一節の見出しに「民間から朝廷まで、無視できない凛冽たる寒さ」があった。その3日後には、李克强総理が「『規模性の失業ブーム』爆発を防げ」と「就業安定」の最大限重視を求めた文書が発表になり、注目を集めた。『規模性の失業ブーム』とは、つまり大規模な失業が広範に発生することだ。こうした記述と政策の方向は、中国経済が確実に、前代未聞の深刻な情勢にあるということだ。つまり、経済の後退が始まったのだ。

     経済の下降も、経済の寒冬も、これからどうなるか? こそ、2020年に最も注目される問題だ。下降は止まるのか? 寒冬には春がくるのか? 天風証券のチーフエコノミストの劉煜輝は「当面の中国経済は下り坂を、重い大型トラックがブレーキを掛けて降りようとするようなもの」と見ている。この比喩は「下降」とか「寒冬」よりはっきりしている。しかし、皆が本当に知りたい「その坂道はどのぐらい長いのか?」、つまり「大型の重量トラックの前方には、上り坂があるのか、やっぱり深い谷間なのか?」の答えには、依然としてなっていない。ただ、政府メディアは本当のことは言いたがらないし、中国国内の学者は言えない。だから、中国のメディアからは、はっきりした答えが得られない。

     ★赤字、減給、リストラが経済の冬の3部曲

     経済「寒冬」の下で、真っ先に厳しさにさらされるのは、民間企業だ。経済状況の悪化に直面しても、民間企業と国営企業では違う。多くの国営企業は、業界で独占的地位にあり、必ずしも打撃を受けないし、受けても相対的に小さな衝撃だ。その上、比較的容易に銀行に面倒をみてもらえる。政府部門も、多かれ少なかれ面倒をみようとする。だから、利潤が落ちても、従業員のリストラに直ちにはつながらない。

     しかし、民間企業の大半は競争の激甚な生存環境にある。ちょっとした風が吹いただけで、注文が減り、利潤が吹き飛び、債務がのしかかって、たちまち苦境に陥る。今の中国の経済で、民間企業は大半が「壁」となって、国家を守っているのにだ。 去年、3月の全国人民代表大会期間中、国家発展改革委員会の何立峰主任は、記者会見で民営経済の「56789」に言及した。つまり、民営経済は50%以上の税収、60%以上のGDP、70%以上の技術的イノベーション、80%以上の都市労働者の就業に貢献している。そして、民営経済の企業数は、全国企業総数の9割以上を占めているというのだ。この五つのパーセンテージは、民営経済がいかに重要かを充分説明している。これらの民営企業の生死存亡は、経済全体の興廃の大勢を代表しているのだ。

     民営企業の立場から見れば、経済衰退の症状は、通常、三つの段階がある。第1段階は、企業の赤字で、雇用を減らす。第2段階が残業の減少で、ボーナスから月給まで減額される。第3段階が企業のリストラ開始で、これは全国の失業率の上昇につながっていく。

     国家統計局の講評データでは、去年1月から10月までの企業利潤は2.9%減だった。説明が必要なのは、この黒字、赤字を総合計した数字は、国営企業も民営企業も含んでいることだ。全体に利潤が低下する状況の下では、業界、地域、企業が異なれば、それぞれの「温度」が違う。かなり多くの民営企業の損失は、儲かっている国営企業の利益によって隠されたり、沿岸地方の製造業の利潤が、内陸地方のエネルギーや鉱山業界の利潤減少を見えなくしている。各省や市の状況を見れば、もっとはっきりする。国家統計局のデータでは、去年1月から8月の工業企業の利潤低下は1.7%で、そのうちの経済の発展した地域の工業企業の利潤は、二桁も下がっている。例えば、北京は14.4%、河北省は11.2%,山東省は13%,金融、貿易の中心の上海は19.6%も下がった。

     第2段階の症状は、日本経済新聞が去年9月18日から28日まで、上海市、浙江省の無錫、蘇州、呉江、南京、昆山など6都市で調査した結果だ。この調査では、経済の減速は、企業の残業や休日出勤を減らしており、8割以上の企業の従業員の月給の手取りは去年と同じだった。4割の企業では、従業員募集を減らしていた。全国に範囲を広げてみると、従業員の月給減少ぶりは、かなり明らかになる。

     私は、国家統計局が今年上半期に公表した今年の3四半期の全国都市住民の可処分所得を分析してみた。今年の第3四半期の全国都市住民の毎月の可処分所得は、3,532元でで、上半期より平均毎月25元減っていた。これは、個人所得税が毎月130元減税になった状況の下で起きたことだ。というのは、去年10月1日から、個人所得税の課税最低限が、3500元から5000元とされ、3200億元の個人所得が労働者の手元に残るようになったからだ。しかし、この一人当たり130元になる毎月の収入増加は、月給が減ったせいで、労働者の収入増加にはならなかったのだ。

     現在、各方面のデータを見ると、経済の「寒冬」の第1、第2の症状は、もう現れている。そして、李克强が、「『規模性の失業ブーム』の爆発を防げ」と要求したことは、第3段階の状況が発生しているということだ。

    ★中国経済の大勢はいかに

     では、これからの中国の経済の大勢はどうなるのか? だいたい、未来の中国経済の動向には、理屈では二つの判断がある。第1には、国際通貨基金(IMF)が去年10月に発表した「世界経済展望」の報告がその代表だ。それによると、2013年から2018年に中国は、全世界の成長の28%を占めた。この比率は米国の2倍以上だ。これから考えると、次の5年間には、中国が世界の経済成長に占める割合は、これまでと同じような水準で推移することになる。しかし、これは、過去の実績を延長して推算した、一種の慣性からみた予測で、一番単純な予想だ。この方法は、例えば、あるスポーツ選手が20歳の時100mを10秒で走ったら、一生、いつまでもこの速度を保てるだろう、みたいな話だ。明らかに、こんな単純な考え方は、経済成長にかかわる重要な構造的分析を欠いている。つまり、過去の経済成長の原因に対する考察が欠けており、客観情勢の変化する可能性を忘れている。過去の記録は、未来の経済成長を支える条件ではない。

     中国国内の多くの専門家や企業人は、必ずしもこういった観点からの判断を軽々しく信じたりしない。「美団」の王興は、2018年松に、自分の「飯否」サイトで「「2019年は過去10年で最もダメな年だったが、今後10年では一番良い1年かもしれない」というジョークを聞いた」と書いた。外国宣伝メディアの「多維ネット」は、「今や、この話が中国投資界からネット世論にまで広がって、現在の中国経済を語る話のマクラには必ず登場するようになった」と書いた。では、王興のこのジョークは、本当にただのジョークなのだろうか?

     ★一つのチャンスと一つの業界が20年支えた景気

     中国経済の典型的な繁栄期は、2001年から始まって、先ごろ終わったばかりの2019年までの20年間だった。この20年の繁栄の要因を簡単に言えば、「一つのチャンスと一つの業界」だ。

     「一つのチャンス」は、世界貿易機関(WTO)に加入したことだ。それ以後、中国は米国市場の正面玄関を開けて、政府は外資導入を図る一方で、輸出補助金政策を採用した。中国の輸出が10年間、毎年平均25%の成長を遂げるようにして、3年間で倍増という輸出に狂奔することによって、経済を牽引してきたのだ。「一つの産業」というのは、不動産業だ。2008年のリーマン・ショックで、輸出に陰りが見えたため、政府は、引き続き経済の高度成長を続けるため、インフラ建設による不動産開発によって、更に10年間の経済繁栄を生み出した。これを私は「土木プロジェクト景気」と呼ぶ。

     しかし、この二つの景気は長く続けられない。それぞれに「天敵」がいるのだ。「輸出景気」の「天敵」は、国債市場は無限大ではないということだ。中国のような人口の超大国には、輸出景気を経済成長の長期的柱とすることはできない。理由のその一は、中国の労働力は世界の6分の1を占める。もし3年ごとに倍増する輸出を続ければ、最後には大多数の国家の製造業は破産してしまう。

     その二は、国際貿易は必ず、互いに利益があってこそいつまでも続けられるのだ。もし中国一国だけで、全世界のお金を集めてしまって、多く売って少なく買うことを続けたならば、巨額の外貨備蓄が積み上がるだろう。他の国々は、借金して輸入するしかなくなり、借金の山ができあがって目覚めて、中国からの輸入を減らすだろう。だから、輸出景気は、いつの日にかは必ず終わりがくるのだ。米・中経済貿易交渉は、中国が懸命に米国から金を稼げた日々の終わりを告げ、もう元には戻らない。

     土木プロジェクト景気の「天敵」は、不動産開発の限界だ。経済繁栄を不動産業という単一の業界上にでやろうとすると、最終的には、中国の不動産は、必ずや需要を供給が上回ってしまう。中国人民銀行の調査統計局のアナリスト王立元はこう指摘している。
    :2011年から2018年に提供された住宅の需要と供給の比率は14億;10億㎡だった。供給過剰で6年かかってやっと完売するペース。都市の住居の空き家率は10%に達し、不動産市場は危険水域に。秋谷は3400万戸で22億㎡。

     不動産業会が盲目的に発展して、不動産バブルが金融危機を誘発しそうなので、政府は最終的にバブルを防ぐために、これ以上の膨張を規制した。「土木プロジェクト景気」は終わりを告げ、それが生み出した繁栄も消えた。

    ★繁栄を再び? 足のない椅子だ

     繁栄が終わったのは、上述のような構造的原因からだったから、改革では問題が解決できない。どんなに改革しても、輸出はもう10数年前の狂奔景気にならないし、不動産バブルも一貫して巨大な脅威だった。

     理論上では、どの国家も経済成長は皆、「3頭立ての馬車」で、その馬車を引っ張る馬は、輸出、投資、消費である。しかし、「輸出景気」という中国の輸出馬は壊れてしまったし、不動産景気という馬もダメになった。言い換えれば、輸出、投資、消費が支えた経済発展という椅子は、3本の脚のうち2本がなくなってしまった。消費だけが支える一本足の椅子だ。政府は、中国の10数億人の消費潜在力の巨大さは、経済成長を牽引する力があるという。しかし、高すぎる不動産価格は、消費者の懐を空っぽにしてしまい、民衆の潜在的購買力は、当然、萎縮したのだ。

     中国銀行研究院が去年9月25日に出した「中国経済金融展望報告」では、中国経済の下降圧力が明らかに増大し、消費の不振が経済の最大の足かせだという。2015年後の市民の家庭債務と可処分所得の比率は、89%から120%になった。中国の「金融時報」は、去年4月15日に「2017年の都市調査だと、中国人家庭部門の可処分所得における借金返済比率は、すでに英国、米国、日本、仏国、独国などを越えた、という。最近の騰訊ネットでは、全国民の個人負債の平均は、18万元前後で、負債の大部分は不動産の借金だという。どうやら、消費が、経済繁栄を再建するというのは、ほとんど不可能のようだ。だから、経済発展は、脚がないただの板であり、自立は無理なのだ。

     では、産業のアップグレードによって経済繁栄は再建されるだろうか? 産業のアップグレードは、技術の自主開発に依拠する。中国は長年にわたって、米国などの国の知的財産権を侵害して技術を獲得して、ブランドの偽物や、外国企業の設計、衣装の氷雪、外国技術の機密の窃盗、強制的な技術移転によって、輸出の利益としてきた。

     もし、毛沢東時代のような鎖国状態なら、外国技術を盗んできても、自国だけで使うなら、外国政府もどうしようもなかっただろう。しかし、グローバル経済に参加してからは、盗んだ技術で米国などの国々で大儲けしようとしたら、当然、懲罰は避けがたい。米・中経済交渉のは、数日前に第1段階の合意サインがされたが、いつでも第2段階がありうるわけで、その折衝の重点は、知的財産権侵害活動の阻止になる。

     ましてや、米・中貿易交渉が始まってから、米国は、限られた関税を課しただけだが、これは、多国籍企業に対して、米・中貿易が危険な時代を迎えたのだという大変明確なサインを送ったことになる。こうした企業は、一連の危険な要素、例えば関税、コスト面、両国の対抗の危険、単一供給源に頼る危険、知的財産権の危険、社会の安全に対する危険、ネットの安全に対する危険などは、受け入れるわけにいかない。

     だから、対米輸出商品を「メイド・イン・チャイナに」に頼っていた企業も、「大雨が降る前に逃げ出そう」とばかり、大急ぎで生産チェーンを調整し、発注先を変えて、危険回避に動くのだ。こうして、この20年間、グローバル経済によって生まれた中国の配置は変わり始めた。多国籍企業は、現在、中国依存から脱して、生産の分散化を学びつつある。中国にある米、欧州、日本、台湾の企業は、中国で販売するのでない限り、大半は、撤退か撤退の準備中だ。中国企業の一部でさえ米国輸出のために、よその国に移転している。これは、中国が今後、外国企業の技術を模倣して、産業のアップグレードを図る道を断つものだ。

     中国政府は、常に自分たちの大勢は「力を集中して、大きなことがやれる」と自慢してきた。しかし、専制制度の下で、上から下まで号令一つで動いて、経済発展の「大仕事」をやるのは、各級政府もそれぞれ模倣に励み、互いに張り合って、狂奔し、各地の経済発展の道を同じようなものにしてしまう。最後には、マクロ的な観点からすれば、全国各地が皆、同じ方向に盲目的に発展しようとした結果が「輸出景気」「土木プロジェクト景気」「知的財産権侵害の組織化」であり、まさに、これは3大重要教訓なのだ。

     2020年から、繁栄は衰退に代わる。それは、同時に、厳しい日々を過ごさねばならない時代の到来を意味する。(終わり)

    (訳注1:中国の生活関連O2Oサービス企業「美団(Meituan Dianping)」の創始者・王興が、自分のマイクロブログWebサイト「飯否」に、「2019年は過去10年で最もダメな年だったが、今後10年では一番良い1年かもしれない」と書き込んだことから中国で流行語となった)

     原文は、程暁農【观点】2020年中国经济重审视

    中国 何清漣

    中国2018 中国2017 中国2016 中国2015

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。「兵は拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣
    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *