• 程暁農氏★「超近距離シュート」の謎と外国の曲解 2020年1月17日

    by  • January 19, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

    ⑴ 人脈ロビイイングでホワイトハウスの魂胆を探った中国

     去年春から始まった米・中貿易交渉は、何度もパンチの応酬だった。中共は、一度は「ちゃぶ台返し」までして、交渉を白紙に戻したほど譲歩するのをを嫌がっていた。

     米国側の核心問題は二つあった。まず、主要な問題は、中共の組織的かつ大規模な米国の知的財産権侵害と技術の窃盗行為だ。次に、中国の不公平な貿易体制が作り出した長期の巨額貿易赤字問題だった。

     第一の問題に対しては、中共は、ただ原則的に知的財産権を保護すると言っただけに過ぎない。長年にわたって米国の知的財産権を侵害し、テクノロジーの秘密の大量窃盗は認めなかった。同時に、中国側は、できるだけ交渉の範囲を貿易問題に限ろうとした。そして、米国がこの間に、中国の輸出品に掛けたすべての関税の取り消しを求め、それを前提とするなら、中国側は米国からの輸入を増やすと主張してきたのだった。

     しかし、今回の協議成功と調印は、中国側がその前提を放棄した。米国の関税が依然として保留状態なのに、米側の出した基本的条件に同意したのだ。なぜ、中共は譲歩したのか?

     その重要な背景が、中共の外国宣伝メディアによって公表されてしまった。この交渉過程で、中共は、ずっと交渉のテーブルの裏側で、そっとホワイトハウスとコミュニケーションを図り、相手の内心を探りとり、トランプ大統領の政策に影響を与え、有利な結果にしようと試みていたというのだ。

     しかし、この記事は、発表の24時間後には跡形もなく削除された。この記事が、果たして中共から「党の顔に泥を塗る偽装記事」と認定されたかどうかはともかく、その記事の内容と、今回の交渉の妥結には深い関係があって、注目に値する。

     ⑵ 24時間だけ掲載された「政府メディアニュース」

     中共の「多維ネットニュース」は、中国国内では見ることができず、外国でだけ見られる対外宣伝用のメディアだ。
     
     そこで、1月15日の北京時間14時44分に、発表されたのが今回の交渉の重大な背景に関わる「第1段階協議の背後にある中国のロビイングと交渉原則」なる記事で、筆者のペンネームは「皇金」だ。

     この記事は、官製メディア多維ネットニュースが、米中貿易交渉に関して報道した第3弾だった。記事は、今回の交渉の過程で、中共が一貫して「人脈のロビイング」を重視し、ずっとクシュナーを代表とする米側穏健派を、ロビイングの突破口としてきたという。そのやり方は、一般のロビイングとは異なり、トランプ大統領の内部人脈関係から政府の政策を知って、影響を与えようという狙いだった。

     クシュナーはトランプの女婿で、ホワイトハウスの顧問であり、中共は彼を通じて、ホワイトハウスとコミュニケーションを取っていたことは、別に秘密ではない。しかし、政府メディアがこれを認めたというのは、その真実性と重要性を証明したことになる。

     興味深いのは、中国では今回の合意に対しては「屈辱的な城下の誓いを結ばされた」という批判の声が絶えず、24時間後に、この記事が、メディア自身によって削除され、同時に別の文章が、そのあとにそっくり差し替え掲載されたことだ。

     ただ記事が削除されただけであれば、せいぜい、読者にその記事の秘密はなんだろうという興味を起こさせるだけだったろう。しかし、政府メディアが、元の記事を削除した上で、別の記事と差し替えたとなると、これはつまり、この削除された記事を読んだ読者に、自分が読んだ記事は、本物の記事ではなかったのだと、当局が思いこませようとしたことを物語っている。

     では、一体、中国側とクシュナーは何を話合ったのか? ちょうど、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の1月14日に、詳細を暴露した記事が出た。それには、こう書いてある。

    :「中国の崔天凯駐米大使とクシュナー氏が話し合い、崔大使はクシュナー氏に、米国の提案する関税取り消しは不十分だ、と告げた。クシュナーはそれに対して、今は意見の違いがある。しかし、意見がもの別れに終わって、解決できない場合、トランプ大統領は、12月15日に中国の輸入品に対する1,560億米ドルの新規関税を課すつもりだ。それにはスマホや玩具も対象になる、と答えた。クシュナーはさらに「関税を値切ろうとしてはならない。協議が合意できなかったら何が起こるか考えてみるべきだ」と言った。

     明らかに、中共は、この会話で米側のボトムラインを探ったのだ。つまり、これ以上抵抗すると、新たな関税が課せられて、今、弱り切った中共経済に対する打撃は倍加する、ということをだ。だから、北京は、それまでの考え方をガラリと変えて、今回の第1段階協議に応じることにしたのだ。

    ⑶ 米国の狙いは「崛起潰し」か「知的財産権防御」か?

     今、中国と欧州、アジア各国でよく言われるのは、中国の経済の勃興によって米国は脅威を感じ、故意に中国をやっつけようとしているという見方だ。当然、中共はこうした世の耳目を惑わすような言い方が大好きで、メディアでも盛んに宣伝している。そして、この言い方は、状況にうとい中国人にとっては、確かにもっともらしく聞こえる。

     英ファイナンシャルタイムズの1月15日の記事では、ドイツのメルケル首相にインタビューを行っている。メルケルは「中国が経済的に成功したからと言って、それが脅威だと見てはいけない。ドイツ同様、中国の勃興は、多くが勤勉と想像力と技術技能の賜物なのです」と語っている。

     また、日本経済新聞の玉利伸吾編集委員も、12月16日の「米・中はなぜ貿易戦争を?」で、日本の数人の学者の著書を引用しつつ、「大国となった中国は貿易、金融など多数の分野で米国に挑戦した。挑戦に直面したトランプ大統領は、貿易戦争を起こした」「この種の保護貿易の根源は重商主義であり、その影響は欧州や日本、世界経済に停滞の影響を及ぼす」と書いている。

     この種の言い方は、欧州と日本では大人気だ。しかし、このもっともらしい説が真実をごまかしているの点は、故意に中共の崛起戦略の本質を歪曲し、この崛起を単純な経済競争に矮小化していることだ。

     人類の歴史には、ある国家が勃興する際には、侵略型と競争型がある。ナチスドイツや大日本敵国の勃興は、決して第2次世界大戦のドイツや日本国の平和的な勃興と同じではない。同じ理由で、中共の勃興と自由民主型の国家の経済的な勃興は、同一に論じることもできない。この二つの勃興を混同するのは、その是非の違いを抹殺するに等しい。

     民主国家間の経済競争でも、不公平貿易が出現することはあるし、争いも起きる。しかし、そうした争いは、経済面以外での深刻な結果、例えば戦争や軍事対決になることは、通常ない。

     しかし、中共の勃興は、単純な経済的勃興ではなく、必然的に軍事的拡張を伴い、ゲオポリティクス面で、明白な脅威性がある。ナチスドイツが戦争で勃興を実現したのは、ドイツ連邦共和国が平和的に勃興したのとは明らかに違う。大日本帝国の軍事的な勃興と、第2次大戦後の日本の勃興も決して、同じではない。

     こうした常識は、メルケルや玉利伸吾は、知らないのだろうか? 他の国の人ならドイツや日本現代史を知らなくても不思議ではない。しかし、メルケルや玉利伸吾にとっては、自分の国の歴史ではないか。それも一番重要な現代史だ。知らないとはとても思えない。

     ⑷ 欧州と日本は、なぜ故意に米国の意図を歪曲して見るのか?

     ドイツと日本現代史の教訓から出発して、中共の勃興戦略と民主国家の経済上の自然な勃興を対比させて、その違いを認識するというのは、そんなに難しいことだろうか?

     メルケルと玉利伸吾は当然、その違いを知っている。しかし、彼らの観点の理由は、欧州国家と日本のかなりの部分の人々の立場を反映したものだ。言い換えれば、彼らは自国の利益から、米中経済交渉を読み解いており、客観的評価やこの交渉の本当の意味を理解するすべを持たないのだ。

     まず、中共勃興戦略は、米国だけを仮想敵国にしている。欧州も日本も目標ではない。だから、欧州の多くの国家と日本は、北京の脅威を心配する必要がない。同時に、中共から恨まれたくもない。

     次に、客観的に中共の勃興による侵害を受けるのは、主に米国だ。欧州国家と日本は、むしろ、対中貿易関係から利益はガッポリいただけるのだ。この種の利益が、欧州と日本では、中国の対米戦略に関しての数々の、もっともらしく人々を惑わせる説明が生み出されるのだ。

     実際には、米国が対中戦略を変更したのは、中共が組織的に知的財産権を侵害するのを阻止し、その不公平な貿易体制を変えさせるためだった。当然、それは経済学的に言う「外部波及効果」が生まれ、欧州国家も日本も、労せずして、対中貿易の受益者になる。しかし、これらの国家は、そうした長所は「喜んで受け取る」ものの、トランプ大統領に感謝するかといえば、そうではない。タダ乗りのお客からは感謝されないのは、過去何十年、米国があまりにも多く体験してきたことだ。

     その実、トランプ大統領も、そうした欧州や日本が四の五の言うことは気にしていない。自分は「世界の大統領」ではなく、米国の有権者こそが彼の奉仕する対象なのだ。米国国民も、ドイツや日本が自国の貿易黒字の変化を心配しているからといって、自分たちの大統領がそうした国々のことを、自国より優先して配慮するように求めたりはしない。

     経済グローバリズムは、別に国境を無くしたわけではないし、国境を無くすことなど、どだい無理な話だ。そして国境が有る限り、どの国の国家利益にも違いはある。異なる国家が、その他の国家との相互の関係を変えたいからといって、別に「グローバリズム」とか「重商主義反対」とかいった旗印を掲げる必要はない。

     結局のところ、自分の利益のためにだけ算盤を弾く国家に比べれば、米国の世界に対する貢献度は、大変大きいのだ。今回の米・中貿易関係の変化の後に続く効果は、大いに後世の歴史からは、米国の新たな貢献の一つだと数えられることだろう。(終わり)

     原文は;程晓农:美中经贸谈判的“临门一脚”与外国解读

    中国 何清漣

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    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣
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