• ★武漢肺炎と中国政治のマーフィの法則 2020年2月5日

    by  • February 5, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     武漢は、 昔から「九つの省に通じる」交通の要衝として知られていました。  しかし、 今回の新型コロナウィルスによる肺炎のせいで、 阿鼻叫喚のゴーストタウンとなりました。  中国は、 世界各国がビクビクしながらお付き合いする世界第二の大国でした。  それが、 今や、 各国から門戸を閉ざされる”世界の孤児”になってしまいました。  たった30数日間でです。  この間に起きた様々の出来事を振り返れば、 中国当局の政治的選択は、 ことごとく「マーフィの法則」そのものでした。 

     「マーフィの法則」とは、 米国のカリフォルニアにあるエドワード空軍基地のエンジニア、 エドワード・A・マーフィーが、 1949年に提起した理論です。  その意味は、 「道筋が複数あって、 破局に至るものがあるなら、 誰かがそれをやらかす」(訳注1)です。  簡単に言えば、 「事態が悪化する可能性があるなら、 大なり小なり、 結局は悪化する」です。 

     武漢の流行状況には、 4つのポイントがありました。  そして、 中国政府は、 ことごとく誤った選択をして、 まさに「マーフィの法則」を実証してしまいました。 

     ⑴ 武漢肺炎の流行し始めた時、 情報公開するか隠蔽するかの選択。  中国政府は「悪い知らせをもたらした使者は殺せ」とばかり後者を選んだ。  流行状況は、 本来、 公共情報として知らせるべきもの。  しかし、 中国では裏の情報ルートでしか広がりません。 

     まず、 関連情報を説明しますと。 

     2019年12月30日夜、 二つの武漢市衛生健康委員会の重要文書がネット上に伝わりました。  市内の華南海鮮市場で次々と原因不明の肺炎患者が発生しているのでした。  12月31日、 同委員会は、 すでに27症例があることを初めて明らかにしました。  しかし、 「全て隔離されており、 現在までに人から人に伝染する明らかな調査結果は出なかった」でした。 

     2020年1月1日、 武漢警察は「法に依拠して」、 「8人のデマを流した」者たちを調査の上、 処分したと発表。  同日、 武漢華南海鮮市場が手入れを受けました。 

     同年1月20日、 鐘南山院士(訳注2)が、 中央テレビのインタビューに答えました。  鐘南山が「新型冠状ウィルスは、 人から人へ伝染する可能性がある」と述べて、 初めて武漢市民は危険を知りました。  その2日後、 武漢市は都市封鎖されたのでした。 

     そのほかにもネガティブな話は山ほどあります。  いちいち紹介しません。  ただ、 一つだけ肝心なことを指摘しておきます。 

     2020年2月3日、 外交部のスポークスウーマンの華春瑩が記者会見で、 米国からの援助問題を聞かれて、 こう答えました。 

    「米国政府は、 今に至るまで中国側に何の実質的援助もしてこなかった」「1月3日から、 30回も米国側に流行状況の情報と防止措置を連絡した。  両国の防疫センターは、 流行に関連する情報では、 何度もコミュニケーションを取ってきた」と。 

     流行状況の情報を公開することは、 市民が自分たちで防疫措置を取り、 防疫行動に参加するのに、 絶対に必要です。  しかし、 中国当局は隠蔽を選びました。  1月3日に米国には通報しながら、 22日に都市封鎖を発表するまでの20日間、 中国の人々は流行を知らず、 基本的に何もできませんでした。 

     1月18日に、 武漢市江岸区百歩亭花園では、 4万家族以上集まって、 旧暦の竃神(かまどがみ)を祭る節句を祝って、 何も知らないまま流行を拡大させてしまいました。  疫病流行を押し止めるチャンスは、 この20日の間に失われたのでした。 

     ⑵ 患者の隔離、 流行地域の封鎖は、 早ければ早いほどよく、 人口の流動性が高まる春節の季節とあっては、 なおさらです。  しかし、 中国政府は最後の最後まで都市封鎖宣言をしませんでした。 

     そして、 封鎖される前に武漢市内からは、 もう500万人が抜け出してしまいました。  武漢肺炎の特徴は、 自覚症状のない保菌者から伝染します。  抜け出した人々の間にどれほどウィルス保持者がいたかは、 わかりません。 

     しかし、 武漢からの旅行客の行き先では、 どこでも肺炎患者がでています。  タイ、 シンガポール、 香港、 マカオ、 日本、 英国、 米国、 仏国、 ドイツなど数十カ国から、 不断に発病者が見つかったというニュースが伝わってきます。 

     全世界が憂慮する中で、 1月30日になってWHO(世界保健機関)が、 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」(訳注3)の非常事態宣言を出しました。  これで、 ようやく各国は次々と中国定期便を取り消せました。  一部の国家は、 それより以前に搭乗員組合の圧力で、 航空定期便を中止しました。 

     中国は、 この種の旅行禁止令に大変不満でした。  米国が先頭に立ってやっていると非難しました。  しかし、 実は中国は自国内で、 同じことをやっていたのです。  中国では、 どんな物事にもダブルスタンダードです。  自分がやれば正しく、 別人がやれば妨害だと怒り出すのは、 中国政府の得意技です。 

     ⑶ WHOにはプレッシャーをかけて、 科学か政治の選択を迫り、 後者を選ばせました。  1月22日に武漢を都市閉鎖してのち、 流行状況はますます深刻になりました。  しかし、 テドロス・アダノムWTO事務局長(訳注4)は、 またしても8日間延期して、 30日の夜になってからやっと、 「PHEIC」を宣言しました。 

     「PHEIC」とは、 大規模な疾病発生のうち、 他国家の公共衛生に危険を及ぼす特異事件の中でも、 国際的な対応を特に必要とするものです。  中国の政治肺炎は、 完全にPHEIC事件に必要な3条件を満たしています。 

     ここでは、 WHOがなぜ、 今回の事件で中国側にペコペコして、 テドロス事務局長が、 こんなことをしたのかを、 WTO規則自体の問題として分析します。 

     まず、 「PHEIC」とは、 全世界の衛生リソースを動員し、 協調して公共衛生の危機に対処する防疫体制です。  もともと、 大幅に政治分野と関わるもので、 純粋な科学、 公共衛生の分野を越えたものです。 

     次に、 「PHEIC」の誕生は、 2003年の中国SARS事件が契機です。  中国のSARSが世界に蔓延し、 WHOは2005年にWHO憲章に基づく国際保健規則(IHR)を改正後に提起した概念です。 

     SARS事件は起こってから、 、 症例数や死亡データを、 全世界への影響をコントロールしました。  それは中国(中共)政府の影響下で行われましたから、 「PHEIC」は、 最初から政治性を帯びていました。  ですから、 必然的にWHOが今回の武漢肺炎事件への判断や処置に影響を与えました。 

     第三に、 WHOが「PHEIC」を作ったのは、 深刻な伝染病が国境を越えて伝わるって、 全世界の危機になることを防ぐためでした。  別の国の流行地域の市民の入国を、 勝手に禁止する国がでるのを防ぐためです。 

     「PHEIC」が宣言されると、 WHOは、 伝染病流入の危険を減らす目的で、 国境で入国しようとする人々に対して、 健康状態を観察することを指導、 指示できます。  各国がややもすれば国境封鎖をしたがるのをやめさせるためです。 

     しかし、 現実の効果としては「PHEIC」がある国の地域に宣言された場合、 他の国は、 堂々と大義名分を得て、 入国限定宣言できることになってしまいました。 

     第四に、 WHOは、 法の執行能力を持っていません。  また膨大な衛生生物関係のデータもありません。  「PHEIC」の一番重要な働きは、 政治的分野に限られるのです。 

     建前としては、 グローバルな公共衛生の権威ある機関として、 全世界のトップの専門家を集めることができます。  「PHEIC」を宣言すれば、 メディアや各国の政府、 薬品企業などの私企業や民間組織を、 その事件に集中した行動を取るようにということも可能です。  しかし、 各国がどう反応するかは、 強制や要求はできません。 

     今回、 世界各国の行動は、 別々でした。  米、 英、 仏、 日、 韓国などは、 自国の航空機で武漢から自国民を撤退させ、 緊急措置として、 最近中国を方もした外国人の入国を断っています。 

     しかし、 これとは別に、 マスクを禁止して定期便を維持し、 自国民撤退はせず、 中国人差別を許さないというカンボジアの総理大臣もいます。 

     中国外交部の資料では、 1月31日までに、 62カ国が中国人の入国に、 管制を敷いています。  中国は、 とうとう、 そうなるのをあれほど嫌っていた「”世界の孤児”になってしまいました。 

     以上の四つの点を理解すれば、 中国がどれほど武漢肺炎を「PHEIC」指定にさせたくなかったかが明らかでしょう。  テドロス事務局長が、 しかたなく武漢肺炎に「PHEIC」を宣言したあとで、 中国の防疫体制が素晴らしく、 正確で効率的であると褒め称えたのは、 中国を慰撫するためでした。 

    ⑷ 世界に謝罪すべきときに居丈高になって、 米国を罵る
     WHOが「PHEIC」を宣言した時には、 もう20カ国以上で症例が確認されていました。  中国は新コロナウィルスの発生源でした。  しかし、 中国政府は、 流行を隠蔽しようとしました。  WHOに「PHEIC」宣言を延期させるようにしたので、 当然、 世界各国の不満とメディアの批判を浴びました。 

     しかし、 中国は、 自分の間違いを反省することなく、 至る所で批判者たちに抗議しました。  例えば、 デンマークの新聞「ユランズ・ポステン」が中国国旗の星の部分を新型コロナウイルスに置き換えた風刺画を、 27日に掲載しました。  これに激怒した北京は、 このメディアに謝罪を要求して拒否されました。 

    デンマーク紙が掲載した「五星紅旗」ウィルス版

     各国が旅行禁止令を出したあと、 戴玉明・駐イスラエル中国大使は、 テルアビブの記者会見の席上で、 「中国人を入国禁止にするやり方は、 、 第二次大戦時期のユダヤ人大量虐殺を起こした人類の暗黒時代を想起させるものだ」と発言。  さすがに中国外交部も、 不適切だと思ったらしく、 謝罪しました。 

     外交部の華春瑩は、 1月31日に、 米国が入国を拒絶したのは、 不誠実なやり方だと言いました。  2月3日、 春節後の初の「微博」ネット上の「記者会見」で、 米国は武漢肺炎流行でデマを撒き散らしパニックを作り出したと激しく批判。  そして、 「米国は第一に武漢から領事館員を引き上げさせ、 大使館から一部の人員を引き上げた。  さらに第一番目に中国国民を入国させない全面的措置をとった」と非難しました。 

     しかし、 実際は、 米国はとっくに援助の手を差し伸べていたのです。  1月28日には、 米国保健福祉省は武漢肺炎流行について記者会見を開きました。 

     アレックス・アザー保健福祉長官は、 1月6日から、 米国は何度も中国側に、 米国は疾病予防管理センターの専門家を現地に派遣して協力の用意があることを伝えたが、 中国側が米国の好意を拒否したと言いました。 

     米国第二のバイオ製薬会社のギリアド・サイエンシズも中国にコロナウィルスの特効薬であるレムデシビルとその使用法を提供したと。  2月中旬から希望者に対しての投薬を開始すると述べました。 

     自分の間違いがばれるのをおそれて必死にひた隠しにしたばかりか、 反対に他国が助けてくれないと怒るのは、 世にも理不尽です。 

     G7(先進7か国首脳会議)は、 近いうちに武漢肺炎ウィルス流行に関して共同対策案を検討する予定です。  しかし、 中国を招待しません。  理由は、 中国は本当のことは言わないだろうし、 価値ある情報を共有しようともしないで文句ばかりで、 他国を非難し、 実際の役には立たないとみてのことです。 

     以上の事実のように、 今回の武漢肺炎ウィルス伝染の危機に際して、 中国政府はこの1カ月余りで4つの間違いを犯したのです。  そして、 全国に疫病流行を広めたばかりでなく、 全世界的な「PHEIC」事件を生み出したのです。  中国の政策決定が完全に「マーフィの法則」に当てはまるとことを証明しています。 

     これは、 中国の専制政治の三つの独占が生んだものです。  政治的独裁が責任ある機関を無くしてしまいました。  経済的独占は、 資源を政府の手中にだけ集中し、 大きな災難に際して、 民間に自助・互助の態勢がありません。  情報独占は、 民衆の知る権利を奪い、 防疫のチャンスを失なわせました。 

     毛沢東統治下の三年連続大飢饉から、 2020年の新コロナウィルスの危機まで、 中共当局は、 ずっと同じ道を歩んで来たのです。  (終わり)

    訳注1:”If there’s more than one way to do a job, and one of those ways will result in disaster, then somebody will do it that way.”

    訳注2:新型コロナウイルス状況応急研究研究チームリーダー。  2003年のSARS感染拡大時、 脅威を低く見積もる中国衛生部や中国疾病予防管理センターに逆らって、 事態の深刻さを訴え有名になった
    訳注3:Public Health Emergency of International Concernの略。 
    訳注4::エチオピアのにかけて保険大臣、 2012年から2016年にかけて外務大臣。  2017年5月23日、 世界保健機関の事務局長に選出された。 

     
    原文は:何清涟:从新冠疫情看中国政治的墨菲定律

    中国 何清漣
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    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

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