★中国の防疫物資独占が産んだ「マスク外交」 2020年3月24日
by minya-takeuchi • March 25, 2020 • 日文文章 • 0 Comments
最近、 中国外交部(外務省)のスポークスマンたちは、 凶暴ともいえる正体を現し、 「戦争の狼」となって言いたい放題です 。 趙立堅は、 米・中外交関係を”集中治療室”が必要なほど悪化させました 。 同じく耿爽(こうそう)の3月20日の発言は、 世界にまたしても中国の”凄さ”を知らしめるものでした 。 彼はこう言いました 。
:「中国は防疫医療物資の生産と輸出の大国である 。 現在、 疫病は世界に蔓延しており、 多くの国々がマスクや防護服、 呼吸器など防疫物資の不足をきたして、 中国の援助や中国からの購入を望んでいる 。 ……もし『中国がウイルスを製造した』などと言うのなら、 そんな話をする奴は、 中国が製造したマスクをすべきではないし、 中国が生産した防護服を着るべきではないし、 中国製造の呼吸器を使うべきではない」
これはもう、 世界に向かって大っぴらに「中国に友好的でない奴はマスクが手に入らないぞ」と公言したのと同じで、 完全に、 中共独裁政権統治下で「服従しない奴には食べ物を与えない」の別バージョンです 。
★中共が世界の防護用品を握ったのは、 悪知恵の賜物
ベルリンの壁が倒れて久しい今、 1980年代以後に生まれた西側の人々は、 一体「服従しない奴には食べ物を与えない」とはなんのことかお分かりにならないでしょうが、 毛沢東統治とその後の毛沢東後の共産党の全体主義的な支配を生きてきた人で、 普通の心を持っていれば、 何のことかすぐわかります 。 ほんの数年前、 習近平はこの中国共産党の統治原理を「共産党の飯を食って鍋を潰すことは許されない」といいました 。 これが中共政治の原則なのです 。
20数年にわたるグローバリズムの進行の過程で、 中国は世界の工場になり、 武漢肺炎の発生流行以前に、 中国は全世界のN95マスクの半分を製造するようになりました 。 それ以後、 中国のマスク生産量は12倍近いのです 。 武漢肺炎が全世界に蔓延し、 マスクは緊急不可欠の防疫用品になりました 。 中国は自国のマスク工場が製造する全てを所持した上、 過去2ヶ月に世界各国から、 義援で送られたり購入し、 他国のマスクや防護用品の大部分を手に入れました 。
3月3日、 香港のデジタルメディアInitium Media(端传媒)が掲載した「疫病流行下で”メイド・イン・チャイナと調達:防疫物資は何処へ」という記事があります 。 この筆者は、 何週間もの調査を経て、 データを処理した結果、 現在、 中国国内の医療前線における物資の三つのルートを発見しました 。
国内工場の生産、 輸出を国内販売に向け、 海外でも調達 。 これは政府が絶対的な主導権で実行しました 。 国内生産力が深刻に不足している状況の下で、 中国政府は外国の医薬品製造企業が中国で生産している商品を、 輸出から国内販売に切り替え、 同時に、 驚嘆するような総額で、 全世界から購入、 民間購入と海外からの寄付もあわせて「ゼロサムゲーム」(得点と失点の合計が常にゼロになる 。 ここでは、 中国が全部購入すると、 他の人は買える分がないの意味)となり、 多くの民間団体は、 義援をしようにも買えないようになりました 。 多くの国家で同時に品不足に陥り、 ほとんど中国政府によって買い占められてしまったのです 。
私は、 この記事を読んだ時、 世界各国は自分の疫病流行に対して、 軽々しく、 防疫の準備もしないでいると、 高くつくだろうという穏やかならぬ予感がしました 。 武漢の都市封鎖の前に、 6万人もが世界の40数カ国に出国してしまっていたのです 。
武漢からの旅行者は、 東南アジアや欧州、 米国に集中しましたが、 どこも相次いで武漢肺炎が発生しました 。 問題は、 ただ欧米各国は、 検査を行っておらず、 誰がウイルスキャリアだかわからなかっただけです 。 いったん、 流行が深刻化すれば、 マスクや防疫用品は手に入れにくくなり、 医療関係者にも十分行き渡らない局面が出現します 。
今、 米国や欧州での流行は深刻で、 防護用品入手は急務です 。 まさに、 中共は、 世界中で防護用品が欠乏しているこの状況を利用して、 「マスク外交」展開の絶好のチャンスだとみています 。 耿爽の発言は、 大っぴらな「悪魔の発言」で、 こう言っているのです 。
;「中国のマスクや防護用品はタダではやらない 。 他国の危機に乗じるための重要な外交の切り札なのだ」と 。
★各国が争って求める防疫用品 — 「中国の高尚さ」の証と
”マスク外交”は、 北京の新たな対外宣伝ツールと手段なのです 。 その目的は、 ただ武漢肺炎の早期制圧失敗と疫病の世界蔓延の遅れを生み出したイメージの払拭だけではありません 。 さらには自分が救世主になろうということです 。 中国の対外大宣伝メディアに「观察者网-中国关怀全球视野」(全世界を視野に入れた観察ネット、 以下「観察者網」)というのがありますが、 その主要なテーマは”マスク外交”です 。
このサイトの特徴は、 「中国の防疫状況を全力を挙げて、 薄気味悪いぐらい持ち上げること」と「米国と世界各国の防疫能力不足やみっともない話を、 あますところなく報道する」ことです 。
私は、米国にいる身として、 米国の現在進行中の防疫状況を知りたい時には、 ビッグデータを別にして、 各国、 特に米国の流行状況におけるマイナスの情報を知りたいときは、 この中国大プロパガンダ用のサイトは欠かせません 。 サイトでは中国を、 あますところなく持ち上げ、 世界各国の流行状況のダメダメな点は、 すべて網羅されているほどです 。
私は、 主に最後の部分、 全世界の流行におけるネガティブ情報に目を通します 。 BBCも米国関連のネガティブ情報の報道には頑張っていますが、 そのほかの国々のネガティブ情報に関しては、 この中国プロパガンダサイトの微に入り細にいった報道に及ぶものはありません 。
中国の「マスク外交」に関する「観察者網」は、 事の大小を問わず掲載しています 。 例えば、 中国がフィリピン、 フランス、 イタリアなどに医療物資を送っていることとかです 。 報道では、 中国が「マスク外交」を通じて演じる救世主としての姿と同時に、 西側国家が争って防疫リソースを求めていることを報道 。
例えば、 ドイツがスイスの購入した医療物資を挿しさえたとか(原注;1度目は、 スイスの24万個のマスク、 2回目はスイスが中国から購入した外科用手袋)、 イタリアへの消毒薬が差し押さえられた、 とかいった憂鬱な話をしっかり掲載しています 。
ドイツ・メンヒェングラートバッハの税関当局は、 違法輸出の疑いがあるとして、 ドイツ・ユッヘンにある米国3Mグループの欧州流通センターで、 医療、 実験室、 化学品製造用の高級マスクや防護服、 民間用マスクなどの防護医療用品の出荷を押収しました 。 それには医療用、 ラボ用、 化学用の高級マスクと医療防護服、 民生用マスクがあったとかも掲載されています 。
どの文章も、 皆、 マスクを贈られた国々の指導者や官僚たちが、 盛大に中国を世界の指導者の気概にあふれた気前の良さだと褒め称え、 中国の防疫体験を、 大いに学習したと書いてあります 。 コメント欄は、 西側の民主国家の防疫面でのダメさ加減を批判し、 中国が西側民主主義の道を歩まなかったのは賢明だったという賛美で埋め尽くされています 。
★割引される「中国の高尚さ」
「観察者網」は、 「イタリアの駐EU大使『EUは救助要請に答えず、 中国だけが助けてくれた」という記事で、 欧州国家がマスクなどの医療物資の輸出禁止令を出し、 イタリア人の入国を制限する中で、 イタリア政府高官が「パニックと利己主義は恐るべき敵 。 ウィンウィン関係を『隣国を自国の盾にする』に変える行為だ」と批判しています 。
新型コロナ肺炎危機は、 EUの凝集力の信頼度テストになる 。 ローマだけにこの危機処理を任せるべきではない、 と 。 この記事には、 中国の外交部のサイトの情報として、 「中国側は、 困難を克服しイタリアに対してマスクなどの医療物資を援助し、 大いに力をいれてイタリア向けの物資や設備を輸出している」と書いてあります 。 イタリア外務大臣ルイジ・ディマイオは「中国からの救援物資」という言葉で、 中国が「冬に炭を送ってくれた」と強調しています 。
しかし、 自由アジア放送局(ラジオ・フリー・アジア)には、 全く背反するニュースがあります 。
イタリアのマウリツィオ・ガスパッリ前通信大臣は、 「今回の救援と書かれた物資は、 ルイジ・ディマイオ外務大臣と中国の王毅外相が協定を結んだもので、 マスクと消毒液など以外は、 すべてイタリアが中国にお金を払って買った物資であって、 無償贈与ではない、 と指摘 。 ガスパッリは、 ディマイオ外相の言い方は、 イタリア大衆に誤解を与えるもので、 これはイタリアと中国間の貿易売買にすぎないとし、 「中国は、 いかなる物資も贈ってくれたりしていないし、 あらゆる物資はお金を払っている 。 中国は地球上最も厄介な国であり、 彼らは不当な競争手段で他国を経済危機に陥れている」と言いました 。
「観察者網」は、 中国政府がフランスに提供した医療物資援助の専用機が18、 19日にパリに到着したと伝えました 。 百万個のマスクなどの医療援助物資の、 外側には、 日本から中国に贈られた援助物資に、 中国の古詩が書かれていたのを真似て、 文豪ビクトル・ユーゴーの名言「団結は勝利である」と書かれていたというのです 。
しかし、 この報道は、 話の半分しか伝えていません、 。 中国からの百万のマスクなどの医療援助に対して、 EUが礼を述べた中に、 こうした答礼行為は、 今年2月、 中国で肺炎流行の真っ盛りに、 フランスやEUが中国に送った物資に相当するものだったのです 。
中国の「マスク外交」は当然、 上述数カ国だけではありません 。 中国の宣伝によれば、 支援を受けた国でも特にイランなどは随喜の涙を流して感謝したそうです 。 流行危機時には、 基本的には援助を受ける国々は、 中国の動機についてあれこれは言いません 。 当然、 イタリアの前大臣のように、 中国を批判したりはしません 。
以前、 世界各国が米国の大々的な援助を受けた際、 援助を受けた国々は、 皆、 当然のことだと思っていましたし、 米国もまた恩を施してやったなどと大威張りしませんでした 。 こうした両者の違いは考えると居心地が悪いでしょうが、 しかし、 目下のところ疫病の流行が火の如しですから、 各国は、 皆、 おとなしくしています 。 さもなければ耿爽報道官に「非友好国」として罰せられますから 。
★反応は遅いだろうが、 いずれは来る
数日前、 香港の「苹果日报」の記者が、 私のところに電話取材してきて、 中国が現在、 自分をウイルス輸出国から救世主にしようと、 大規模な対外宣伝戦をやっているが、 世界の受け取り方はどうでしょう? 反感を買わないでしょうか?」と質問してきました 。
私はこう答えました 。 今、 流行の最中でまず消火が一大事 。 各国は、 最初、 流行の危険性と深刻さを過小評価して、 中国に医療物資を送り届け、 自国市場も開放して、 中国に好きに購入させていたときは、 まさか自国の医療物資が不足するとは考えていなかった 。 今や、 中国に助けを求めるしかなくなったが、 こうしたことを今は考えている場合ではない 。 流行が収まって再起したとき、 大国、 例えば米国は、 再度考え始めるでしょう、 と 。
疑いの余地なく、 武漢肺炎が全世界に蔓延したとき、 米国は、 全世界の疫病対策のリーダーとしての立場を失ったばかりでなく、 自国の流行にさえ十分な対応さえできませんでした 。 その原因は、 疫病流行を軽視したことの他に、 米国には防疫にふさわしい物資と検査技術設備が欠乏していたことがあります 。
米国は、 ずっと医学と新薬の開発ではトップを切ってきました 。 しかし、 グローバリズムの進化する中で、 その薬品の原料生産と医療設備生産は、 すでに、 皆、 中国に移転していました 。 中国は、 米国の第二の薬品とバイオ製品の原料生産国であり、 第一の医療設備輸出国になっていたのです 。
米国の制約の8割の原料は中国とインドからの輸入に依存しています 。 9割のジェネリック医薬品も両国から輸入しているのです 。 3月中旬に、 防疫活動を開始した時も、 米国は大規模な検査体制への技術的な条件を整えられませんでした 。 これが米国の流行を深刻化させました 。
3月中旬になって、 ようやく大規模検査の能力を持てるようになって、 検査し始めたら、 相当数の人々がすでに感染してしまっていました 。
3月23日現在のデータでは、 すでに42,843人が、 感染確認されています 。 ニューヨークは、 ”米国の武漢”になってしまいました 。 ニューヨークの郊外のニュージャージー(訳注:筆者の居住地)も、 武漢周辺の湖北省地域とみなされています 。
今回の疫病流行で、 米国が一番反省しなければならない点は、 「決して独裁無頼な政権に、 ある種の重要なカギとなる資源、 医療物資生産などの支配権を持たせてはならない」と言うことです 。
米国は、 ちゃんとした生産ラインを持たなければ、 喉元を絞められます 。 世界は、 ベルリンの壁が壊されてのち、 政権の性格を無視して、 共同して平和主義が成り立つなどという幼稚極まる発想を、 反省したほうがよろしいでしょう 。
英国のブレクジットの提唱者で、 右翼保守派の代表的人物のナイジェル・ファラージは、 3月18日の雑誌タイムのインタビューに一文を寄せました 。
彼は、 西側の産業供給チェーンは過度に中国に依存し、 中国が今回の危機を利用して、 世界に影響を拡大したばかりか、 欧州にまで影響力を及ぼそうとしている 。 西側は、 ウイルスの脅威に対しての警戒だけでなく、 中共の専制主義と、 彼らが世界の批判の声を圧倒しようとしている意図をも警戒すべきだ、 と書いています 。
ファラージは、 西側世界に対して「中国は自らの長期目標とイデオロギー国家であり、 中国の指導者、 習近平は欧米の友人などではない」と警告しています 。
疫病流行が収まってから、 西側世界、 とりわけ米国は、 かならずや反省することでしょう 。 習近平は毛沢東の衣鉢を継ぐ者として、 毛沢東が常に引用していた古訓を忘れてはなりません 。 「善には前で報い、 悪には悪で報いる 。 報復しないのではない 。 時節がまだ来ないだけだ 。 時節がくれば、 必ずや報復する」 。
原文は;何清涟:口罩外交——中国垄断防疫资源的“杰作”

これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。
過去のものはウィンドウズやMacのサファリでは、句読点が中央配置になります。Macのchromeがおすすめです。なお、「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。