• ★中国外務省の「良い警官・悪い警官」ゲーム ★ 2020年03月27日

    by  • March 27, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     武漢肺炎の発生以来、 中国政府はしばしばギョッとさせるようなことをしています。 プロパガンダの恥知らずの極端さに以外にも、 中国外務省の報道官たちは、 中国版ランボーの映画「戦争の狼」のように好戦的になって、 米国に対する批判や非難に専念し始めました。 

     そして、 崔天凱駐米大使の方は、 お飾りの花瓶のように沈黙を守っています。 しかし、 米国側の反撃が強まってくると、 また顔を出して、 慰撫しにかかります。 

     こうすることで、 「米国が武漢肺炎ウイルスを中国に持ち込んだ」という趙立堅報道官の主張は、 彼の個人的な言い分にすぎず、 指導者同士がもっと話し合えば良いのだ、 と誤った感想を持つように仕向けています。 

     双方の地位が非対称のこの外交的口喧嘩では、 米国はデマ攻撃の前に、 全然優位に立つことができません。 これは、 米国側が、 全然、 中国外務省の「良い警官・悪い警官」戦術(訳注1;尋問に使用される心理学的な戦術。 最初に悪い警官が容疑者を脅し、 それから良い警官が容疑者に取り入ろうとする)の奥義がわかってないからです。 

     ★アリがゾウに挑戦すれば、 どうしたって勝利する

     中国は、 古来より厳格な階級社会です。 そして、 歴代王朝では下の者が、 上位の者に対して道徳的優位性を使って挑戦するのです。 主張の内容の当否を問わず、 その行為自体が権力者を恐れない立派な態度として称賛されるのです。 

     もし、 権力者がそれに対して、 細かいことであれこれ論争しようとすれば、 「王者の風格に欠ける」などと批判されます。 でも、 そこで度量の大きなところを上位者がみせると、 「さすがだ」と評価されます。 

     しかし、 中国社会が、 今や、 ならず者ばかりのグダグダになってしまったので、 この種の挑戦戦術もどんどん堕落してしまいました。 とりわけ、 1990年代のメディアの市場化以後は、 論争ではとにかく何でもいいから有名人を攻撃して名前を売れば、 世間から喝采を浴びる近道だ、 みたいな状態になってしまいました。 

     こうした知恵を外交に用いる昔の例では、 「美談」がたくさんあります。 有名な「将軍家同士の和平」は教科書にも載っている典型的な例です。 司馬遷の「史記 廉頗将軍と藺相如の列伝」には、 こんな話があります。 

     :紀元前279年、 秦の国王は楚の国の攻略に力を注ぎたいと考えていたが、 後顧の憂を解消するため、 率先して趙国と親交を深めようと、 趙の恵文王と河南省美澠池(めんち)で会談を手配した。 趙は小国、 秦は大国だ。 弱い趙の王は恐れて行きたがらなかったが、 趙の宰相・藺相如は彼に同行して澠池に赴いた。 

     そこで、 秦の王は、 趙の王に瑟(しつ)という楽器を演奏するように求め、 史官に「趙の王は、 秦の王のために瑟を奏でた」と書かせまた。 これに対して、 藺相如は、 秦の王にも缶(ほとぎ)という秦国の楽器を弾くように求めたのです。 秦王が拒否すると、 「五步の內におりますので、 臣が頸の血で大王を汚させていただいてもよろしいか!」と脅かしました。 秦王は渋々、 缶を打ったので、 藺相如は、 すぐさま史官に「秦王が趙王のために缶を打った」と書かせたのです。 

     その後、 秦王は、 15の城を自分への祝いとしてよこせと言い出したが、 藺相如は、 いささかも譲歩せず、 大声で首都の咸陽を趙王のために要求し、 侮辱されることなく趙王を安全に帰国さた。 これが歴史上名高い「澠池の会」です。 

     この故事によって藺相如は、 世の人々の賞賛を浴びました。 なんせ、 弱い趙国を強国の秦と対等にしたのですから。 

     中国は、 こうしたことを大変重要視するのです。 例えば、 台湾の「統一」目標を達成するために、 去年は大変人気のあった韓国瑜(訳注2;高雄市長で、 2020年第15回中華民国総統選挙の中国国民党の正式公認候補、 落選)を籠絡したときにも、 香港およびマカオの特別行政区行政長官と会見させました。 北京中央政府や機関は表に出ませんでした。 これは中国からみれば、 ただの1省に過ぎない台湾と同格ではないぞ、 という意味です。 

     こういうのは平等化の進んだ米国人には、 よく理解できないのです。 とりわけ、 オバマ前大統領以後の米国は、 ますますわかっていません。 

     「世界軍人運動会のために武漢に渡航した米軍が、 武漢の肺炎ウイルスの元だ」というのは、 趙立堅を表に立てての「私的なツイート」でした。 

     ところが、 これに対する米国は、 トランプ氏が大統領の身分でありながら、 「中国のウイルス」と言い返しました。 これは「A級の馬がC級の馬を相手にする」愚策です。 大統領の胸はスッとしたかもしれませんが、 それは、 米国内からの強い批判で帳消しです。 一方、 中国側は、 これによって乗じる隙を得たのでした。 

     米国が真剣になってくると、 今度は、 中国は崔天凱駐米大使が登場してきます。 3月22日に米国のニュースサイト「アクシオス」とケーブルテレビ局「HBO」の共同インタビューに、 こう答えています。 

     :外交官が新型コロナウイルスの起源をあれこれ憶測するのは有害だ。 

     中国国家元首と中国政府を公式に代表しているのが崔天凱です。 それが、 趙立堅報道官の「新型コロナウイルスの発生源は米軍だ」という説には反対だが、 米国は中国とちゃんと話し合うべきだ、 という意味に受けとれます。 ですから、 米国世論は、 トランプ大統領は、 直接、 習近平とコミュニケーションをとって、 米中関係の緊張を緩和すべきだ、 と思うようになります。 

     イギリスは中国よりも外交の扱いが洗練されていて、 君主制をうまく利用しています。  政府がトラブルに巻き込まれると、 女王はそれをなだめるために登場するのは昔ながらの方法であり、 しばしばうまく機能します。 米国は、 国務省が対応すべきであって、 大統領は威厳を持って、 直接の関与を少なくしたほうがいいのです。 

     ★米国は、 「対等の馬」と勝負したほうがいい

     武漢肺炎の流行以来、 米国は2月1日、 ウイルスの感染者が米国に侵入するのを防ぐために、 中国との航空便を遮断し、 在中国米国人を引き揚げる、 と発表しまた。 米国の流行状況から見て、 こうした行動は米国の安全からみれば、 完全に正しいのです。 ただ惜しむらくは、 不徹底で手抜かりが多かった。 

     中国外務省はネット記者会見で、 華春瑩報道官が米国政府を批判して、 こう発言した。 「まず武漢の領事館員の撤退、 次に大使館の一部人員、 そして、 中国人の全面的入国禁止と、 次々にパニックに陥らせるようなやりかたをした」と。 

     この記者会見で、 華春瑩が、 中国人を仰天させ、 怒らせるようなことも明らかにしている。 「一月3日から、 30回も肺炎流行の管理状況を米国に知らせていた…まだ事態がはっきりしていない状態なのに、 30回もです」と言ったのでした。 

     華春瑩は、 その30回の説明会の詳細を明かしませんでした。 しかし、 最近の米・中両国の外務省報道官同士の”空中戦”で、 争点が1月3日に中共は一体何をしたのかということになって、 やっと真相の一部がわかりました。 

     3月17日、 米国のモーガン・オルタガス報道官は、 中国の疫病対策のタイムテーブルは「世界のチェックを受けなければならない」と述べ、 一方、 華春瑩報道官は、 中国は1月3日に米国側に疫病状況を通知したといいました。 

     責任を、 再び米国に押し付けましたのです。 これに対して、 米国のオルタガス報道官は、 3月23日のツイッターで、 華春瑩に反論し、 1月3日前に、 中共当局がやったのは、 「ウイルスのサンプルを破棄して、 武漢の医師をだまらせ、 ネット検閲したことだ」と言いました。 

     両国の外交報道官が、 互いにディスり合ったことは、 米国がすでに中国外務省の「戦場の狼」たちに対応する方法を見つけたと言うことで、 これからは「対等の競馬」になるでしょう。 

     米国情報機関は、 大量の中国の疫病関係データを把握していると言われ、 武器にはことかかないようですから。 随時、 中国の「狼」たちの横暴な発言に対して、 明らかにしていくでしょう。 

     ★中国は、 ウイルスの押し付け先を探す

     中国は、 武漢肺炎ウイルスを押し付ける「嫁入り先」をずっと探していますが、 米国だけが目標というわけではありません。 

     現在、 欧州の流行状況が危機的なイタリアは、 中国のお気に入りです。 3月21日、 中共メディアの「環球時報」は「イタリアの専門家、 中国での流行爆発以前にも、 イタリアにウイルス伝搬と語る」を掲載しました。 

     記事ではイタリア・ミラノのマリオネグリ薬理学研究所の医学専門家であるジュゼッペ・レムッツィは、 米公共ラジオ局(NPR)の取材に対し、 「昨年12月、 ひいては11月の時点で高齢者にこのような肺炎が見られた」と述べた。 中国国内メディアの多くは、 これを見出しにしました。 

     しかし、 イタリアメディアのフォリオは、 レムッツィに照会し、 3月24日にトップ記事で、 レムッツイの元の話を紹介しています。 

     ;全く疑いなく、 このウイルスは中国だ。 今回の事件は、 、 大学が教える教科書の例で、 科学的な材料がプロパガンダ的な理由で操作されることがあることを示している」
     
     環球時報が、 レムッツイの別のインタビューで語ったことを解釈して描いたことについて「内外のプロパガンダのための完全な誤魔化しとほのめかしである」と話しています。 

     ★習近平は、 一体何をしたいのか?

     武漢の肺炎の後、 習近平の一見、 安定した地位は、 再び政治の激動に巻き込まれました。 武漢市長の周先旺も中国中央テレビ(CCTV)のインタビューを受けたときに、 責任を回避しようとしました。 このため国内メディアは北京派と地元派に分かれました。 

     習近平の政敵が流した噂は、 ずっとこの流行に際して影のようについてまわったのです。 習近平が特別調査チームの李文良とPLAの主任生化学専門家の陳薇少将を派遣し、 武漢ウイルス研究所を正式に引き継がせて、 湖北省と武漢市の最高責任者を交代させたことで、 状況はやっと安定したのでした。 

     しかし、 習近平の対応は、 特に不器用で悪質で、 彼が引き起こした社会的不満は、 白と黒をアベコベにした公式メディアの高らかなプロパガンダと称賛の下でも、 本当に沈静化することはありません。 

     「世界は中国に感謝すべきだ」の恥知らずな宣伝や、 米軍がウイルスを撒き散らしたといった、 根も葉もない攻撃は、 米・中関係を「集中治療室」送りにしてしまいました。 

     3月19日に出された李文亮医師事件調査グループの、 内容のない調査報告があります。 国家観察委員会の専門調査団が、 50日間近く武漢にいながら、 李文亮医師事件調査グループの、 内容のない自己調査報告は何一つ得るところありませんでした。 「いつも罪を皇帝に着せようとする悪者」を見つけられなかったのです。 これは、 最初からこの調査団は「他に目的があった」ことを世界に公表したに等しいものです。 

     3月22日には、 中国の体制側関係者が書いたと言われる匿名の提案書がソーシャルメディア上で広く拡散されました。 それは、 最高指導者である習近平の功罪と辞任を議論するために、 中共最高幹部の緊急拡大会議を開催することを求めたものでした。 サンシャインTVの責任者である陳平氏は、 提案が自分から転送されてきたことは認めましたが、 誰が最初に投稿したのかは知らないと述べました。 

     しかし、 この提案は、 中国共産党が7年前に敷いた改革開放路線に戻るべきだという、 制度内の多くの改革派の考えを反映していると彼は考えています。 

     この提案では、 BBC中国語サイトの1月28日付記事「武漢肺炎の下でのガバナンスの失敗:北京・武漢・福建省の政治ウォッチャー」に呼応したものです。 そこでは「2019年末から今日までの武漢肺炎の大規模な広がりとガバナンスの失敗は、 西氏が政権に就いてから反腐敗の名の下で行われた一切を否定しています。 

    ;2019年末から一カ月間以来の武漢肺炎の大規模拡散とガバナンスは失敗だった。 それは、 全面的に、 習近平政権になってからの、 行政体制と軍隊改革、 党組織を革命家の名において忠誠心を覆い隠す体制とした。 その『新常態』に対応は、 公共の危険に対して効率が悪く、 硬直したものだった。 公共ガバナンスの全面的な失敗に導いただけではなく、 社会と人民に巨大な代価を支払わせたものである」と書かれています。 

     習近平は、 外務省をコントロールできていないのではないか、 との憶測もありますが、 私はそうは思いません。 国家保安局のシステムは、 人間のネットワークが単線でつながっていました。 だから郭文貴現象が起きました。 

     しかし、 外務省は厳密な官僚制によって組織化されています。 しかも、 習近平は2013年から党体制、 政治体制、 軍事、 警察、 国家安全保障などの暴力装置の体制を一掃してきましたが、 外務省にはあまり手を触れていません。 

     外務省の現在やっている、 「良い警官、 悪い警官」式のやり方は別にコントロールを失っているわけではありません。 しかし、 習近平と取り巻きの知恵者たちは、 今回の危機を「チャンス」に変えようとしています。 

     米国をウイルスのスケープゴートとして使うことは、 長年の反米・反西欧の民族主義的感情に受けましょう。 また、 中共のプロパガンダによって形成された国民の想像力とも一致させられます。 

     この戦術はブザマではあっても、 分裂した西側各国と、 政治的内部分裂が深い米国には、 それなりに有効です。 

     例えば、 有名な左翼メディアであるニューヨーク・タイムズやBBCは、 武漢の肺炎流行で中国が指導者・救世主の役割を奪い、 米国が敗北したと主張する記事をいくつか掲載しています。 

     これらの左翼ジャーナリストは、 トランプ主導の米国政府が、 金をばらまいては嫌われる世界の指導者の役割から、 意識的に撤退して久しいという事実を、 いまだに認めようとしません。 

     世界は、 米国に資金と労力を拠出させておいて、 「ショーヴィニズム的」「覇権主義的」と酷評する「タダ乗り」に長い間慣れ親しんできました。 

     しかし、 今、 中国の今回の疫病禍が全世界に及び、 抵抗力のない状況で、 中国の「マスク外交」による対象選別ルールや、 世界に中国の犠牲に感謝せよとの恥知らずな宣伝に出あったわけです。 欧州国家は、 北京に依存によって起こる問題に気がついたことでしょう。 

     武漢肺炎は、 今、 まさに世界中で大流行しており、 200カ国近い国々が皆、 汚染されています。 中国が、 このウイルス伝搬の歴史を書き換えたいとしたところで、 ウイルスが中国から来たという、 世界の人々の記憶は消えますまい。 

     ある論評には、 「こうした時期にあってもなお、 利益を追求しようとする中国は、 まさに厚顔無恥というほかはない」としていました。 
    (終わり)

     原文は;何清漣專欄:中國外交部兩副面孔交替出場的奧秘

    中国 何清漣
    中国 何清漣

    中国2018 中国2017 中国2016 中国2015

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら

    過去のものはウィンドウズやMacのサファリでは、句読点が中央配置になります。Macのchromeがおすすめです。なお、「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣
    Print Friendly, PDF & Email

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *