程暁農★一論文が巻き起こした波風、 流行の真実の解釈 2020年3月30日
by minya-takeuchi • April 5, 2020 • 日文文章 • 0 Comments
寧波市から発せられた一編の医学論文は、 今回の新型コロナウイルスの流行で「無症状の感染者は、 実際には発症した人と同じ感染力を持っている」という中国国家衛生保険委員会(国家衛健委)と世界保健機関(WHO)の主張を打破した。
中国共産党が、 新型コロナウイルスの流行初期から紡いできた嘘は、 国内も世界も欺いてきた。 他の国は、 WHOが「中継放送」した中共の嘘を信じて、 措置を怠ったり重い代償を払っている。 そして、 中共の流行データは、 感染者数ではなく症例数を公表しているだけで、 世界を麻痺させている。
★1編の医学論文が世界を静かに動かす
3月28日、 第一財経のウェブサイトに馬暁華氏の署名入り記事「最新の研究結果:新型コロナウイルス無症候感染者と確定感染者間の密接接触感染率に差はない」が掲載された。
その抄録では、 寧波市疾病管理予防センターと職業環境衛生研究所の陳奕、 王愛紅、 易波、 丁克琴、 王海波、 王建美、 史宏博、 王思嘉、 許国章が共同で発表した医学論文「寧波市における新冠状動脈ウイルス肺炎の密接接触感染の疫学的特徴」(宁波市新型冠状病毒肺炎密切接触者感染流行病学特征分析)と題する論文が、 中国疫学誌(中华流行病学杂志)2020年版(第41巻)第3号に掲載されたことが報告された。 論文原文からみると、 論文を送ったのは許国章、 投稿日は今年3月4日、 当該雑誌の編集責任者は李銀鴿だ。
これは、 月刊の医学雑誌であり、 印刷版があるかどうかは不明だが、 中国疫学誌(中华流行病学杂志)のウェブサイトの「発行予定」から読むことができ、 ダウンロードできた。
この医学研究論文が冒頭で詳しく述べているのは、 学術研究の「爆弾発言」であり、 その重要性が広く知られるようになれば、 中国共産党がその存在を封じ込める可能性がある。 案の定、 3月29日には、 第一財経のサイトからは、 圧力で記事が削除されていたが、 他のサイトにも転載されている。 (「宁波市新型冠状病毒肺炎密切接触者感染流行病学特征分析」で検索可能)
なぜこの医療論文が重要なのか? この論文をよく読めば、 中共が流行病を隠蔽しようとしていることを知るのはは難しくない。 また、 中国国家健康衛生委員会(国家衛健委)が流行病の確認に大きなミスを執拗に繰返し、 WHOが中共の言うままに誤報を流し、 各国に害を与えていると判断できるだろう。
★寧波市における流行の広がりの分析:感染後の感染者と無症候性感染者の感染率の類似性
寧波市では浙江省人の感染者が多い。 最初は、 都市封鎖前に武漢市から逃げ出した浙江省人が病原だったようだ。 その後、 地元での感染が広がったといわれている。
寧波市疾病管理予防センター感染症対策研究所は、 今年1月21日から3月6日までに、 市内の感染者191人を追跡調査した。 その中には、 感染後の発病者161人、 無症候感染者30人が含まれていることが明らかにされている。
収集した大量のデータに基づいて行われた統計解析では、 感染後発病者との密接接触による人の比率は6.3%、 無症状の感染者との密接接触では4.11%だったと結論づけている。 研究チームは、 この二種類の感染者による他人への感染程度や感染率に「はっきりした有意差はない」と判断している。
いわゆる「有意差なし」とは、 数学統計学の統計検査方法を用いて大量のデータを計算した後、 上記の2つの伝染率が統計学の理論で推論され、 統計的に意味のある差がないこと、 あるいはそのような小さな差は、 数学統計学上の誤差であることを意味する。
研究チームは、 数学統計学の数あるノンパラメトリック統計検定の一つである「Chi-squared Test」を用いて、 人気の統計ソフト「SPSS」のバージョン21.0に収録されている「カイ二乗検定」(訳注;推計統計学で最も広く利用される検定統計量が漸近的にカイ二乗分布に従うような統計的検定法の総称)で算出した。 この統計検定・統計ソフトは、 健康統計学では一般的なツールだ。
寧波のCDC感染症管理予防研究所が行った接触型の累計分析は、 さらに患者と親しかった人との関係を統計的に分析したところ、 親しい人の感染率は家族が最も高く(17.54%)、 次いで友人(15.69%)であった。 友人は屋外での会話、 食事、 会合、 レクリエーション活動への共同参加、 同じ乗り物への乗車などでの感染が多かったという。
この研究は、 衛生統計学を応用した通常の事例だが、 問題は、 中国共産党政権下であり、 流行があまりにも蔓延していたため、 この寧波の例を除いては、 どの研究機関もこのようなプロジェクトを立ち上げたり、 あえてこのような研究を発表したりしてこなかったことである。
統計手法や、 ソフトに詳しい人手不足が深刻なのか、 政治弾圧が横行しているのか? 中国内の医療現場では、 “寒天饮冰水,点滴在心头”(寒い日に氷水を飲むと自分の心に一滴しっかり滲み透る=同じ出来事でも受け取る側の立場によって、 違う印象になる)というのが、 真相が見え難くしている根本的な理由だ。
★「中国の経験が世界に暖かい思いをもたらした」だと?
「感染後発症患者と無症状患者では、 感染率が似たようなものだ」という論文の結論は、 「現在見られる主な感染源は、 新型コロナウイルス感染症患者である」という国家衛健委の判断と、 「無症状患者からCOVID-19に感染するリスクは非常に低い」というWHOの結論を大きく覆すものである。
国家衛健委の間違いは、 どれだけ深刻なのか? 現在、 米・中の新型コロナ流行問題での衝突の原因の一つでもあるのだ。 流行初期に、 国家衛健委は「人から人へは感染しない」という誤った情報を流した。
その後も、 「無症状感染者は、 主な感染源ではない」という間違った報告を行ったのだ。 他にも、 中国の確定診断データに対する国際社会の理解を誤らせた。 このような誤報は、 米国が世界の主要流行地域の一つとなる重要な原因ともなった。 もちろん、 疫病拡散防止のミスもまた重要な原因である。
衆知のように、 最近の米国での確定患者数の急上昇と、 中国が発表する確定患者数の緩慢さは、 中国のネット上で、 中共の防疫措置の大成功として歓呼の声に包まれている。 これに呼応して、 政府側の官僚も流行は米国から起きたのだと言い出して、 米国の抗議、 譴責を引き起こした。
しかし、 中国は”誇らかに”、 自分たちは世界に対して、 積極的な貢献をしたのである。 何故ならば、 中国は、 世界各国のために、 時間稼ぎをしてやったのであり、 希望をもたらしたのだし、 中国の経験が世界の人々の心を明るくして、 自信を与えたのだと言う。 (人民日報)
中国が疫病流行期間に、 世界各国に何を送っただろう? まずは、 ウイルスに感染した旅行者だった。 (これは、 「★武漢ウイルスが世界を変えている」(2020年3月30日)で書いた。 次に、 中国は各国に、 疫病伝染方式に対する理解を誤らしめた。 多くの政府、 国民は、 「無症状患者は感染させない」を本気にしたのだった。 これによって、 各国では、 感染防衛対策でのミスを犯す羽目になった。 さらに、 世界各国に、 疫病事情に対する判断を誤解させるデータを与えた。
疫病流行が、 全世界化するにつれて、 たくさんの国々が、 非感染者を検査し始まって、 確定診断数というデータが、 全世界の疫病流行に対する核心となった。
しかし、 皆の注目点は最初から間違えていたことについて、 気がついている人は少ない。 と言うのは、 中国の「確定診断率」は、 他の国とは違うのだ。 中共は最初から、 「確定診断率」を故意に低めに圧縮していたのだ。
★感染を確認? 発病を確認? その違いは
確定診断率については、 中国と米国の検査ツールの成功率の違いについてはここでは触れず、 疫学者の説明を待とう。 筆者は、 感染後の発症と感染後の無症状者という2つの概念に注目している。 なぜ? “悪魔は細部に宿る”だからだ。
中国で発表されたデータには、 検査後に罹患が確認された患者のみが含まれている。 無症候感染の患者は含まれていない。 正式には「疑われた症例と確定症例は、 新コロナウイルス肺炎診断・治療プログラム(第7版試行)で定義された臨床症状を有していること」が要件となっている。 しかし、 米国では、 感染後の患者とその親しい人が医学的な検査を求める任意検査が行われている。 米国での陽性確認率は、 感染後発病者と無症状感染者の両方を含んでいる。
両国の診断率を比較すると、 私は、 小学校の算数の「ツルカメ算」を思い出す。 ツルとカメの足を数えて合計何羽いるかを計算しても、 カメは2本足ではないことを忘れていたら、 当然、 誤答となる。
中共の確定診断の統計範囲は、 確定診断の定義が、 感染の確認ではなく発症の確認であり、 未発症感染者を意図的に除外しているので、 いわば最初から「2本足」である。
これに対して、 米国の確定診断の統計範囲は「4本足」であり、 感染者も発病者も、 未発症感染者も含めている。 「2本足」は「4本足」より少ないのは、 ツルの足は、 カメの足より少ないことは一目瞭然だ。
中共は、 できるだけ流行統計データを少なく見せたいので、 もっぱら、 未発症の感染者、 つまり感染は陽性でも、 症状のない者を「確定診断」には入れない。 その結果、 中国の確定診断数は、 ずっと人為的に低く抑えられてきた。
もし、 中国が本当に未感染者を確定診断データに含めるとしたら、 現在公表されている数値とのギャップはどの程度になるのだろうか。 寧波市のCDC感染症研究所の論文では、 患者と同居している親族の間で感染する確率が18%近くになるという参考数値が示されている。
これを常識的に言えば、 アメリカでは、 監視下の1人の患者が無症状であっても、 家族などの親しい人は検査を受ける。 5人家族の中で1人の患者が出れば、 誰かが同時に無症状の感染者になることもあるわけだ。 つまり、 米国では、 親密な接触歴のある無症候感染者に対する感染率が1対1である可能性が高い。
この試算で、 中国が米国の確定診断の定義に従えば、 中国の確定診断数は2倍になる可能性がある。 もしかしたらもっと増えるかもしれない。
今年3月25日の英国放送協会(BBC)によると、 3月20日に世界トップの学術誌「ネイチャー」に発表された論文では、 「軽度または無発症者は、 新たなコロナウイルス感染症の60%を占める可能性がある」という。 この判断は上記の私の推論に近い。
★中国政府の責任逃れ
武漢は世界的な流行の源だが、 現在、 「確定数ゼロ」の「戦績」を誇っている。 「第一財経」の「新型コロナ感染者の濃厚接触感染率と確定診断者のそれには差がない」(新冠无症状感染者密接感染率与确诊者无差异)報道は、 疑いなく、 湖北省と武漢市には、 痛い一撃だったろう。
まず、 国家衛健委の「現在、 感染源は大に感染患者」という判断は、 まさに武漢流行区域に対する観察から来ていた。 では、 一体、 武漢の現地における流行感染モデルは、 国家衛健委を欺くものであったのか、 それとも国家衛健委がバカな判断をしたのか、 それともどっちも間違っていて、 最高レベルの責任なのか?
次に、 この報道によるさらに大きな問題とは、 感染後の発病者と感染後の無症状者が、 同様に疫病伝染に関わっているならば、 無症状の感染者を確定感染者のグループから差し引いて、 確定診断数を減らすのは、 中共が全国、 全世界に確定診断データを隠蔽することになる。 これは一体、 武漢市政府が自分勝手にやったことか、 それとも上部からの命令だったのか。
武漢市保健委員会は今年3月24日に「WHOは、 『現在の利用可能なデータに基づいて、 新規コロナウイルスは主に症状を発症した患者によって感染する』と考えており、 そのため無症状感染が主な感染源ではないようだ」と述べている。
このWHOのいわゆる「利用可能なデータ」とは、 WHOが唯一扱っている国家衛健委から提供されたものであった。 この判断は、 国家衛健委の発言を、 世界保健機関が「鸚鵡返しに発言」したのだ。
また、 「なぜ無症候性感染者が確定症例に含まれないのか」については、 武漢市保健委員会の回答がより明確である。 「新コロナウイルス肺炎診断治療プログラム(第7次試行版)」の定義によれば、 「疑われる症例と確定症例は、 臨床症状があることが必要……無症候感染者は、 隔離中に症状を示した場合、 確定症例として報告され、 公表される」。 つまり、 無症候感染者は病気を発症しない限り、 全世界で中国だけが「無害な感染者」としてカウントしているということだ。
武漢の地方政府の言い分からすると、 国家衛健委の責任は逃れがたい。 筆者は、 今年1月28日に発行された第4版に初めて掲載され、 その後も一貫して使用されている「現時点で見られる感染源は、 新型コロナウイルス感染症患者が主である」という判断を、 今年の国民健康委員会が発行した「新型コロナウイルス肺炎診療プログラム」の第2版から最新版である3月4日発行の第7版(初版は未掲載)までと照らし合わせて確認してみた。
「臨床で発病し、 検査で確定」という方針を同様に堅持しており、 統計に算入するのは、 皆すでにはっきりと、 発熱、 肺炎のレントゲン写真で特徴がある、 発病早期に白血球の数値が正常か、 低下していたか、 リンパ細胞の数が減少していた、 などの明らかな症状をもったものだけなのだ。
BBCは3月25日、 「第6版の予防管理プログラムでは、 無症候性感染者は確定症例としてカウントされていない。 しかし、 オンラインのレポート上では別のカテゴリーとして報告されている。 対外的には公表されていない」と報じている。
全体主義国では、 地方政府には、 国家的に懸念される重大な爆発的感染の診断基準や、 感染経路に関する指示を発表する権限がない。 国家衛健委は、 自らの行動によって、 診断の定義と感染経路の両方の面で、 最初から主導権を握っていたことを証明している。
しかし、 国家衛健委には、 これらの事項について重大な決定を下す権限はなく、 指示を仰ぎ、 命令に従うだけだ。 つまり、 確定診断基準と感染ルートの両方の面で流行状況を隠匿した問題は、 すべて中央政府にあるのだ。
大災害こそが最大の政治であり、 共産主義国家の鉄の支配である。
チェルノブイリ原発の核漏れから今回の新コロ伝染病まで、 何度も何度も実証されている。
問題は、 経済のグローバル化の恩恵に目がくらんだ各国政府が、 どれだけ、 これを見破ることができるかだ。 世界的な流行の緊急事態の中で、 何度も彼らに嘘をつかれるという厳しい教訓を、 本当に学んだ政府がどれだけあるか?
「中国の経験」を世界に送りつけるのは、 骨まで滲み透るような「氷の風」であって、 彼らが吹聴するような「暖風」などとは、 全く関係ないことなのだ。 (終わり)
原文は;程晓农:一文或起千重浪,疫情真相重解读

これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。
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