★アフリカでの武漢肺炎流行の莫大な勘定書、 習近平はどうする? 2020年04月22日
by minya-takeuchi • April 22, 2020 • 日文文章 • 0 Comments
欧米での新型コロナウイルスの大流行地域になって、 中国中が歓呼の声に沸いていますが、 アフリカで流行が始まると、 中国政府や粉紅(中共政権支持青年、 中国版ネトウヨ)は、 喜びませんでした。
これは「アフリカの兄弟と艱難を共にする気持ち」からではありません。 厄介なことになると知っているからです。 そして厄介ごとは実際、 小さなものではありません。
というのは「アフリカの兄弟よ、 武漢肺炎ウイルスは米国製なのだ」という作戦はうまくいきませんでしたし、 国連と国際保健機関(WHO)が不断に発表する悲痛な訴えから、 北京政府は、 彼らの救いを求める手は北京に向かって伸ばされていることを知っているからです。
★珍しい欧米と中国の認識一致:アフリカの疫病は巨大災害になる
いつもは、 世界で何が起きても、 中国と西側各国が共通認識に至ることは、 めったにありません。 しかし、 武漢肺炎が欧州や米国で大流行した後、 アフリカでは、 まだいくらも症例が発生していなかった頃から、 しかし、 必ず巨大な流行災害になるだろうと予想されていました。
というのは、 アフリカは貧しく、 人口が密集しており、 伝染が始まればあっという間に広がるだろうからです。 アフリカ人は、 集まって騒ぐのが大好きですし、 お祭りや宗教的な儀式で集う姿は、 至る所で見られます。
また、 水も乏しく、 手を頻繁に洗うことはできませんし、 武漢肺炎の防止には大変不利です。 医療衛生面では劣っており、 全世界の17%の人口を擁しながら、 23%の疾病が発生していても、 医療支出は1%でしかありません。 検査費用は高すぎて、 大多数の人々が受けられません。 つまるところ、 アフリカは不利な条件が多すぎて、 いったん流行が及べば、 医療資源の欠乏によって、 極めて悲惨な事態になるからです。
中国で流行が始まった際、 全世界は目を皿のようにして、 テドロスWHO事務局長が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHIEC)宣言を出して、 大流行を防ぐことを期待しました。 しかし、 テドロスは、 何があろうとのんびりと毎日、 すっかりおなじみの「中国の防疫は成功しており、 中国は世界各国のために時間を稼ぎ出し、 世界のために犠牲を払った」を繰り返していました。
しかし、 アフリカではまだ流行が起こっていない時期でも、 テドロス事務局長は、 大変心配しており、 雨が降る前の傘を準備するかのように、 米国や欧州での流行が深刻な時期にあっても、 世界に対してWHOへの献金を呼びかけ、 アフリカで将来発生する流行に対応するように、 と呼びかけていました。
私は、 当時、 一体なぜテドロスはそんなことをするのかと思ったのですが、 察するに「アフリカが流行に汚染されれば、 アフリカ人が彼に落とし前を迫るからではないか、 と思って、 ツイッターに書きました。
彼はエチオピアでの保健大臣時代、 3度にわたって流行を隠蔽しました。 ですから、 WHOの事務局長就任には反対の声も高かったのですが、 その中には一部のアフリカのNGOもありました。
★中国はなぜアフリカに「戦狼」を出陣させないのか?
しかし、 テドロス事務局長より、 さらにアフリカでの流行を望まなかったのは中国です。 原因は多々あるのです。
でも、 それは国連で中国の兄弟としていつも米国に対抗するための「アフリカ票」を投じるからでもありませんし、 中国の重要な資源供給地であり、 中国の広範な投資先であって、 一帯一路計画の重要なメンバーだから、 ではありません。
一番根本的な理由は、 中国は認めようとしませんが、 世界はみな腹の中では知っています。 それは、 もしアフリカが汚染されて悲惨な結果になったなら、 最後には必然的にそのツケが中国の頭上に降りかかってきて、 「我々のこの災難による損失は、 お前の国の武漢肺炎のせいだ!」と責められるからです。
世界的な社会科学理論へのアフリカの古典的貢献は、 反植民地論です。 反植民地主義の旗を掲げて民族解放を唱えた1960年代以降、 旧植民地勢力である英・仏・独は、 やがてアフリカ系移民を大量に受け入れるなど、 アフリカの罪滅ぼしを支援して「レインボーネーション(多数の人種が融和する国)」になりました。
そして、 今、 中国は、 アフリカの人々や世界の左翼の目には、 旧植民地国よりもさらに悪く憎むべき新植民地主義の代表だと映っています。 アフリカ諸国の権力者の支持を買うため外交を通じて、 政府を大金で買収するものの、 社会に対して出す金はそれほどでもありません。 資源を握って、 環境を破壊する罪は、 アフリカの人権団体や環境保護団体から糾弾されています。
今回の疫病流行は、 貴賎貧富を問わずに襲われており、 すでに一部のアフリカ国家の要人が感染、 犠牲になっています。 中には ジンバブエの実業家で政治家のジェームズ・マカンバ氏の息子で時事ニュースキャスターのゾロ氏や、 ナイジェリアの大統領補佐官のアッバ・キアリ氏な度も含まれ、 アフリカ各国政府の不満を買っています。
また、 口では中国国民と平等だと言いながら、 広州でのアフリカ人に対する中国の扱いは、 大変な不満と抗議を引き起こしています。 ナイジェリアの下院議長が駐ナイジェリア中国大使と面会したことは、 中国では報道されませんでしたが、 ナイジェリアのオロエ・アキン・アラビ議員が「議長は、 中国大使に、 中国でのナイジェリア人の虐待を許さないとして、 中国での暴行行為を読み上げた」ツイートして知られました。 これには、 中国大使が深々とお辞儀をしている写真も添えられています。
ナイジェリアのほか、 ガーナ、 ケニア、 シエラレオネ、 セネガル、 アフリカ連合が声明を出したり、 中国大使を召喚したりして、 広州でアフリカ系の人々の権利と利益に強い懸念を表明しており、 これまでの「兄弟関係」が急に風向きを変えています。
★アフリカは “裸足 “で中国は “靴を履いている “
中国のネトウヨ軍団は、 まるで「義和団バージョン2.0」のように意気盛んで、 命令があれば全世界を相手に戦い、 「罵り声で、 真っ赤に新世界を染め上げる」気概を持っていますが、 彼らは、 アフリカ相手には、 そうした無作法な声を上げようとはしません。 なぜでしょうか?
Q&Aネットサイトに、 「お前の黒人への悪口は一言言えば、 アフリカに住む中国人を襲う一個の弾丸になるのだ」と題した説得力のある記事があります。 それにはこう書いてあります。
;疫病にかかった多くのアフリカ人は、 経済収入がない。 裸足が靴を恐れない場所で、 もし「中国人がアフリカ人を差別している」といった誤解が蔓延して、 暴動が起こったら、 おまえらが中国で書く差別の一言が、 アフリカに住む中国人の頭に一発の銃弾になるのだ。
そして、 微博上の書き込みにこれがたくさん引用されています。 「もし、 お前らが好き勝手に舌を滑らせたら、 アフリカの中国人経営企業はピンチになる。 自分の同胞を危険にさらして、 何が愛国だ!」と。
この意味は、 いったん、 アフリカの国々が中国に対して態度を一変させるならば、 たちまち新植民地主義反対の旗印の下に、 中国の投資を没収し、 中国のアフリカにいる国有企業を攻撃しかねないということです。
実際、 こうしたことはこれまでに起きています。
リビアが2011年の政権交代を利用して200億ドルの中国投資を飲み込んだことは言うまでもなく、 ジンバブエのムガベでさえ、 数十年来の旧友である中国を翻弄しました。
:2016年3月23日、 ジンバブエの先住民化担当大臣のズオ(ムガベの甥)は、 すべての外資系企業は3月31日までに先住民化実施計画を提出しなければならないと発表。 その核心には次のように書かれていました。
:ジンバブエの外資系企業は、 ジンバブエ市民に株式の51%以上を引き渡さなければならないか、 4月1日にドアを閉めなければならない。
当時、 ジンバブエは中国にとってアフリカで5番目に大きな投資先で、 総額6億ドルの投資国でしたが、 こうして無理やり3億ドル以上の投資が飲み込まれてしまったのでした。
アフリカへの投資は主に国有企業によるもので、 その累積額は少なくとも1千億ドルに達しています。 「アフリカの兄弟」は、 裏切るとなったらすぐやりますから、 北京にとっては「アフリカの同胞の生命と財産を守る」というのは、 確かに大変な難題なのです。
中国にも似たような格言がたくさんあります。 “善人は悪人を恐れ、 悪人は恥知らずを恐れ、 恥知らずは命知らずを恐れている”、 “十人の君子を怒らせても、 1人の小人を怒らせてはならない”などです。 この種の格言で最高のものといえば、 当然、 マルクスの共産主義宣言の「プロレタリアートがこの革命で失うのは鉄鎖だけであり、 彼らが得るのは全世界である」です。
★国連は、 アフリカでの流行のために資金集めへ
世界は、 アフリカでの伝染病の悲惨な結末を十分に認識しています。 危機の第一波は公衆衛生と財政の分野で発生し、 第二波は経済・社会的危機と人道的災害となり、 国際社会の支援が不十分であれば、 資金の枯渇により、 中長期的にアフリカの復興は困難になるというシナリオを予想しています。 国連とその機関は、 アフリカの危機を乗り切るために世界が協力しなければならないと結論づけています。
しかし、 世界の危機には常に最も気前のよかった米国とヨーロッパは、 今、 経済の停滞、 失業率の高騰、 そして「地主の蔵には、 あまり食糧は残っていない」という伝染病的危機に陥っています。
今できることは、 医療を提供することに加えて、 アフリカ諸国の巨額の対外債務を緩和することです。 レディー・ガガは、 より多くの募金を集めるために、 団体「グローバル・シチズン」を通じて、 世界中から100人以上の歌手を招待し、 4月18日に米英の複数の主要テレビ局の協力を得て、 WHOのためのオンラインコンサートを開催しました。 英・米の放送局は大々的にこれを伝え、 WHOのために1.279億ドルを集めました。 それにはビル・ゲーツも1億ドルを拠出したといわれています。
★アフリカでの伝染病に関する国連の計算書
国連アフリカ経済委員会(UNECA)は、 国際社会が介入しなければ、 新型コロナウイルスがアフリカで12億人に感染し、 300万人が死亡する可能性があるとする報告書を発表しました。 たとえ介入があったとしても、 武漢の肺炎の大流行は、 少なくとも30万人のアフリカ人の命を奪い、 2,900万人を極度の貧困に陥れる可能性がある。 同機関は、 アフリカ大陸に1000億ドルのセーフティネットを提供するよう呼びかけています。
国連のエコノミストは、 国際社会に1兆5000億ドルの支援を求めています。
2000年から2017年までの間に、 中国はアフリカに1430億ドルの融資を行っており、 現在、 多くのアフリカ諸国が中国に債務救済を求めています。
中国は外貨準備高が3兆ドルあると称しています。 4月20日のヨハネスブルグ、 北京、 ワシントンでのロイター通信の報道によると、 アナリストは、 債務救済を含む包括的な債務協議は、 北京が先頭に立って損害を負担しなければならないことを意味すると述べている。
国連は、 誰に請求しようとしているのでしょうか? 一方、 アフリカ諸国は、 世界との関係を完全に説明するシステム的理論を持っています。 それはこうです。
:アフリカは、 新旧の植民地主義の略奪に苦しんできたのであり、 援助を受けるのは当然のことである。 旧植民地列強は今、 歴史的な負債を払っているが、 その支払いにはまだまだ返済には程遠い。 一方、 新植民地主義は一つしかない、 それが中国である。
1兆5千億ドルというのは、 長期的な計算書ですが、 1千億ドルのセフティーネットは、 すぐ現金化しないとならなりません。 習近平は、 これを受け入れるかどうか?
欧米諸国は、 今後中国を抜きにして「非中国化」しようとしています。 一方、 アフリカは中国をパートナーにしたいと思っていますが、 示された価格が高すぎます。 受け入れれば中国は、 耐えられない。 受け入れなければ、 中国は毛沢東時代から、 中国の神輿をかついで国連に乗り入れてっくれたアフリカの兄弟を失うことになります。
事があまりに重大な話なので、 最高権力者の一存で決めるというわけにはいきますまい。 何度も常務委員会を開催してよく相談しなければならないでしょうね。 (終わり)
これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。
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