• ★ロシアと米国の接近には、  牙を剥かない中国の「戦狼」 2020年4月30日

    by  • May 2, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     現在、  改革開放以来、  最大の外交的苦境にある中国は、  「戦狼」が四方に出撃して、  米国のポンペオ国務大臣と共和党を攻撃しています。  政府宣伝メディアの環球時報編集長の胡錫進編集長に至っては、  無礼にもオーストラリアに対して「中国の靴底の裏にくっついてチューインガムのカスのようなもので、  石をさがしてこそげ落とさなければならない」などと言う有様。  しかし、  新型コロナウイルスの流行で、  中国系の民が原因で、  摩擦の多いロシアには、  防疫物資を贈ったばかりか、  お世辞を並べ立てています。 

     4月25日に、  米国とロシアの大統領が「エルベの誓い」(ナチスドイツと戦った米ソが1945年4月25日にエルベ川で初めて出会った)75周年で、  共同声明を発表しました。  これに対し、  中国はそっけないニュースとして報道しました。  これは、  アフリカの兄弟とは別に、  北京が最も怒らせたくない大国がプーチン大統領であることを示しています。 


     ★北京の超然とした態度は内なる混乱を隠している

     武漢肺炎が全世界を席巻しており、  各国政府がその対応に疲労困憊の時期だけに、  米・露両国の大統領の連合声明は注目を集めました。  米国では、  冷戦以来の反ソ連的な感情は今もあります。  その上、  民主党がメディアと一体になって、  前回の大統領選挙でのロシアの干渉を非難してきたしこりも残っています。 

     欧州では、  この肺炎流行後の世界の構造の変化に関心があり、  米国とロシアの接近は極めて望ましくありません。  この二つの大勢力の共通した心配は、  「米・中両国が貿易戦争を棚上げし、  武漢肺炎の起源問題で鋭く対立し、  米、  露両国がこれまでのわだかまりを捨てて協力するなら、  自分たちの立ち位置はどうなるのか?」ということです。 

     この「エルベの誓い」共同声明は、  中国にとって不意打ちの一撃になり、  利害にかかわります。  しかし、  中国外交部とプロパガンダ機関は、  いつもの「ちょっとでも触ろうものなら飛び上がって噛み付く」戦狼の態度を見せませんでした。  ただ、  新華社が4月25日に言及して、  あたかもこの連合声明は、  全然現在の国際情勢とは無関係なニュースであるかのように報道し、  平気な態度を装い、  内心の困惑を押し隠したのです。 

     ロシアと中国の関係は「教師としてのロシア」「敵としてのロシア」「友としてのロシア」という三段階の変化を経てきました。  しかし、  中国人自身でさえ、  「友としてのロシア」というのは、  ちょっと無理があることを承知しています。 

     北京はロシアと仲良くして米国と対峙し、  西側にプレッシャーをかけたいと考えています。  でもロシアは昔から、  表面的には中国に好意的な顔をしていますが、  内心は冷淡で、  何年かおきに、  中国移民問題で怒りだします。  でも、  中国は聞こえないふりをするしかありません。 

     トランプ本人は、  プーチンにずっと友好的な姿勢をみせてきましたが、  共和党の伝統派をふくめて米国国内の反ロシア勢力は大変強すぎて、  そのうえ、  「ロシアゲート事件」の影響もあるので、  ブーチンとは距離を置かざるを得なかっただけの話です。  それが、  今、  この2人の大統領は、  誰も反対できない「エルベの誓い」を記念して、  接近する意思を表明したわけですが、  こうした動向に中国は、  なぜ防ごうとしないのでしょうか?

     ★ロシアは新型コロナで大打撃

     ロシアにおける中国移民の数は、  中国もロシアもはっきり掴んでいません。  中国側はたった30万人だといい、  ロシア側は百万人単位だとしています。  人口統計学者は、  もし、  中国とロシアの間で、  このような緊密な関係が続けば、  2050年ごろには、  中国人がロシアの第二の大民族になるだろうとみています。  現在はタタール人がロシアの第二の民族なのですが。 

     ロシアと中国が友好関係を続けているのは、  米・欧諸国が政治的にロシアを拒絶しているからです。  経済的には、  両国間の石油という要素が絆となっています。 

     しかし、  今回の新型コロナ流行はあまりにも深刻で、  中露関係の変数となりました。  中露間を往来する中国人が、  まずロシアに疫病を持ち込み、  そうした連中が急遽帰国したがったので、  今度は中国にウイルスを持ち込むことになったのでした。 

     2カ月前には、  ロシアが、  中国をウイルスの主要な供給源の脅威だとみなしました。  今回の新型コロナでは、  ロシアは最初から持ち込みを防ごうとしましたが、  しかし、  中国系住民の数があまりにも多すぎて、  結局は、  感染状態の深刻化を招いてしまいました。 

     3月から4月にかけて、  ブーチンは習近平と2度の電話会談を行いました。  専門家はこれは原油価格の暴落で、  サウジアラビアロシアのシェアを脅かそうとしたためで、  第1回目の電話会談は、  プーチンが中国に石油購入を求めたことに関連するとみています。  第2回目の会談は、  習近平がロシアに中国人を追い出すことのないように求めたと言われています。  これは中国の防疫活動への一層の負担を避けるためです。 

     にもかかわらず、  4月中旬以降、  ロシアの流行状況はますます悪化して、  同国の専門家によれば、  ロシアでの流行は6月から7月にかけて最悪となり、  今後数週間内に、  ロシアは「大変厳しい時期」を迎えると言われています。 

     ★新型コロナ流行がブーチンの計画を狂わせた

     フランスの新聞「ル・モンド」の地政学部門は、  コラムニストのシルヴィ・カウフマン氏の記事を掲載し、  武漢の肺炎がプーチン大統領の壮大な計画をすべて台無しにしたと述べています。 

     記事は、  ロシアが、  憲法改正草案を4月22日に国民投票を実施する予定であることを指摘しています。  この憲法改正草案を国民が採択されること自体は問題ではありません。  プーチン大統領はこの憲法改正案を作成し、  2036年まで大統領を務められるようにしました。  国民投票の手続きは法的には必須ではありませんが、  民衆の支持のゴーサインが、  それに高い正統性を与えます。 

     しかし、  この計画は武漢肺炎によって台無しになりました。  ロシアでの流行は西欧よりも遅れて来ており、  5月にピークを迎えると予想されています。  だからプーチンは賢明にも国民投票を延期し、  日程を定めませんでした。  誰も、  いつになったら安全に投票できるかわからないからです。  さらに重要なのは、  経済の安定です。  誰も、  国民の失業率が最高なときに、  国民投票などしたいとは思いません。 

     以上の事実から、  プーチンがどれだけ中国の流行を恨んでいるかが推測できます。  しかし、  プーチンは現在、  石油戦争という別の戦争に直面しているため、  怒りを抑えるしかありません。  OPECとの価格戦争では、  中国の助けが必要だからです。 

     中国は現在、  世界最大の原油輸入国であり、  世界の約50の国と地域から輸入しています。  2016年以降、  ロシア、  アンゴラ、  サウジアラビアが上位3位を安定してキープしており、  ロシアが徐々に順位を上げています。  2019年に限っては、  サウジの中国向け石油輸出総額がロシアをわずかに上回っています。 

     石油はロシアの経済・財政にとって極めて重要であり、  ロシアのGDPの15%を占めており、  米国の2倍に相当します。  ロシアのGDPと原油価格の変動の相関関係はほぼ99%です。  今年は、  中国発の武漢肺流行をきっかけに、  世界的な景気低迷、  原油需要の大幅な落ち込み、  産油国間の石油戦争の再燃がありました。 

     今回の「石油戦争」は、  過去にサウジアラビアが起こした「石油戦争」とは異なります。  疫病の蔓延による何重もの世界経済の落ち込みによって、  原油価格への「致死的」な影響が大きく、  より広範囲に影響を及ぼしています。  当面の影響としては、  石油輸入国、  特に中国や欧州ははこの「戦争」のおかげで、  疫病流行による生産低下による資源価格の低迷に大きく助けられます。 

     しかし、  ロシアは長い間、  欧州との関係が悪く、  ロシアの財政にとって重要な石油の需要を維持するためには中国に頼るしかありません。  過去3年間のロシアの対中石油輸出総額(2017年は183億ドル、  2018年は323億ドル、  2019年は317億ドル)を見ても分かるように、  ロシアの財政にとって重要なのです。 

     ロシア経済は石油・ガス収入に大きく依存しています。  武漢肺炎が発生前からロシア経済は停滞していました。  原油価格の暴落はロシアにとって災難以外の何物でもありません。  ロシア政府の予算が原油1バレルあたり42.50ドルの収入ベースで計算されているからです。  ですから、  ロシアはなんとしても中国にアカンベーなどできないのです。 

     ★中国は敵を1人でも増やしたくない

     現在、  強大な力を持つ中国の存在は、  自分たちの暮らしが巨大な代償を支払わねばならないと,武漢ウイルス危機のおかげで、  はっきりと思い知らされた多くの国々では、  反省しきりです。 

     中国は口にこそ出しませんが、  自分が四面楚歌の中にいることは知っています。  「エルベの誓い」75周年での、  米露大統領の連合声明には「エルベ精神」として、  「意見の違いを超えて、  共同の目標に向かって協力の模範と信頼を」という言葉がありました。  これは、  中国に昔のことを思い出させるでしょう

     と言うのは、  冷戦時期に、  米国はソ連に対抗するために、  中国と結ぶ方針を決めて、  キッシンジャーがニクソン大統領の名を受けて、  「氷を割る旅」として訪中したのでした。  中国の国際的地位はこれによって大きく変わり、  西側世界は中国に大きく門戸を開かれたのでした。 

     それから数十年の風雪を経て、  米・中関係はまた「氷を割る旅」以前の状態に戻ってしまいました。  いまこの状態で、  そうした言葉を聞かされるのは、  中国は内心すこぶる不愉快だということは、  想像できましょう。 

     しかし、  今、  中国は絶対にこれ以上強敵を増やしたくはないのです。  ましてや、  中共は、  米国国内政治における民主党の勝利という大一番に賭ける準備をしています。  現在、  民主党は大統領選挙において、  自党に不利な経済問題や移民問題から、  コロナウイルス流行に向けようと努力しています。 

     中国は様々な外国のプロパガンダチャンネルを使ってトランプ氏を貶めようとしています。  ますます左派化した民主党やマルクス主義を根底に持つアメリカの左派は、  旧ソ連とのイデオロギー的な違いをはっきりさせるためにロシアを敵視しています。  もし、  トランプ氏がホワイトハウスを失うと、  米露関係が前進することは困難になるでしょう。 
     これが、  中国が米露大統領の連合声明に、  頭を悩ませながらも、  「戦狼」たちをプーチン大統領にけしかけようとはしない理由です。  (終わり)

     原文は:何清涟:俄美走近,战狼为何不敢向普京呲牙?

    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら

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