• 程暁農★米・中「新型コロナ戦争」の分析 2020年5月11日

    by  • May 12, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     今回の新型コロナウイルス流行は、  主要国家間の関係に巨大な影響を与え国際関係の「ポスト新コロナ時代」の変化が注目されている。  つまり、  これによって引き起こされた国家間の衝突は流行が収束しても、  永遠の転換点になりかねないということだ。  グローバリズムでは、  供給チェーンが『世界の工場」の中国からの転出はもとより、  米・中「新冷戦」が熱いテーマになっている。  「新型コロナ戦争」とはどんなもので、  果たして両国の武力対決にまで進むのかは分析に値する。 

     ★⑴ 米・中戦争は起こりうるか?

    「南華早報(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)」5月5日
    の記事によると、  米・中関係が新たな冷戦状態に入ったとの指摘が双方から出ているという。 

      ロイターはこのほど、  中共国家安全保障部直属のシンクタンク「現代国際関係研究所」が4月上旬にトップに報告書を提出したと報じた。  この報告書には、  世界的な反中感情は1989年の天安門事件以来の最高潮に達しており、  最悪の場合の想定として米・中武力衝突に備える必要があると書かれている。 


      ここから2つの疑問が考えられる。  第一に米国は、  軍事的限定戦争(戦術核兵器の使用を伴わない通常の戦争)を起こすか。  第二に、  中共は今、  戦争をしたいのか?だ。 

    ★⑵ 中共は戦争を望むのか?

     アメリカの新冷戦に対する姿勢には、  旧冷戦で確立した鉄則があるので、  そこから判断できる。  米ソ冷戦の数十年の間に、  米・中朝鮮戦争、  米・中ベトナム戦争、  旧ソ連のアフガニスタン戦争という3つの限定的な戦争が行われた。 

     はっきりしたルールは、  この3回の限定戦争でも、  その他の地域での第1級の軍事衝突においても、  米ソ両国の地上部隊が直接交戦したことはない。  また、  冷静時期の限定戦争では、  毎回、  一方が他方の代理人と戦う形だった。  この三回の戦争で、  朝鮮戦争は中共がソ連の代理人であったし、  ベトナム戦争のベトコンは共産党の、  アフガン戦争の現地ゲリラは米国の代理人であったことは明らかである。 

     両核保有国の米ソ両軍が直接戦争を行わない理由は、  冷戦時代の限定戦争の経験から、  「もし双方が直接戦えば、  戦術核兵器を使いたいという衝動から、  核戦争に発展しかねない」という基本的な教訓を得ているからである。 

     核戦争は世界を滅ぼし、  勝利者はいない。  したがって、  核保有国同士の間で核兵器を使用してはならないだけでなく、  米ソ両国の直接対決による通常戦は避けた方がよいというのは双方の鉄則になっている。 

      ゴルバチョフ元ソ連共産党書記長が1987年に言ったように、  「社会主義者も資本家も、  正義も犯罪者も、  核の嵐に一掃されるだろう」なのだ。  したがって、  今日の米・中間の新たな冷戦の中で、  米国はこの鉄則を守り続けることは間違いない。 

      しかし、  中共は米・露との核軍縮条約の締結には消極的だった。  では、  中共は本当にそろそろアメリカと戦争を始める準備をしているのか? 中共は、  この疫病流行の前に、  米国に対する一連の軍事的脅威を開始した。 

      第一に、  中共の海軍艦隊と電子スパイ船がミッドウェー島の米軍基地近くに出向き、  米軍を目標にするかのように空軍、  ロケット軍、  戦略支援部隊との合同多国間軍事演習を行った。 

     第二に、  南シナ海の公海を支配し、  島々に軍事基地を建設した後、  中共は、  ベトナムとフィリピン付近の公海を、  核弾頭の大陸間ミサイルで米国を攻撃する戦略原潜のための「要塞海域」に改造したことを公然と宣言している。 

     この2つの動きは、  米軍に対するあからさまな挑戦だ。  しかし、  香港の雑誌「紫荆」の最近のインタビューで、  国防大学の喬良教授(「超限戦」の著者)は、  「戦争と平和の間の巨大なグレーゾーンについて様々な選択肢を描ける。  戦争ではない軍事行動といった特殊な手段を検討することも十分可能である」と述べている。 

     この喬良の説は、  現在の中共の対米武装対立姿勢を否定しているようにみえる。  同時に、  中共の対外宣伝メディアは最近、  「軍事作戦を除いて、  いかなる戦いも可能だ」と述べている。  つまり、  中共も、  やはり核大国の間では直接、  戦火を交えてはならないという鉄則は理解しているのだ。  ましてや、  今最大の圧力は「新型コロナ戦争」なのだ。 

     ★⑶ 「新型コロナ戦争」の予想される経過

     米・中の軍事戦争が起こりそうにないとしたら、  今後の米中の政治経済関係はどこへ向かうのか。  喬良の言葉を借りると、  「新型コロナウイルスは、  現在のグローバル化のステージとその背後にある推進者たちをラクダの背骨のように折る最後の1本のワラに過ぎない」となる。 

     この言葉に「戦」という文字を加え、  「すぎない」という字を取り去ると、  「今回の『新型コロナ戦争』は、  グローバリズムとその背後の推進者たちをラクダの背骨のように折る最後の1本のワラだ」になる。  このように理解すると、  現在の米・中対峙と今後の両国の政治・経済関係の理解に、  新たな視点が得られて、  より全体像が見えてくる。 

     「新型コロナ戦争」は、  現在の米・中交戦の重要な領域だが、  それはすでに起きている米・中貿易戦争と同じものなのか、  それとも別のものなのか? 今見る限りは「新型コロナ戦争」と米・中貿易戦争は、  当然、  別の話だ。  しかし、  そのために取られる手段と結果は相互に関連している。  では、  米・中間の伝染病問題における戦いは、  すでに「新型コロナ戦争」となっているのか。  これを巡って両者が対立状態の段階に入ったのは間違いなさそうだ。 

     中国から世界に広がったこの流行病は、  5月10日現在、  世界180以上の国と地域で402万人に感染し、  28万人近くの命を奪っている。  世界の人々の生活に深刻な脅威をもたらすだけでなく、  ほとんどの国に極めて深刻な経済的損害と個人の財産の損失をもたらした。 

     その結果、  中共は一匹狼のように、  四方八方で叫んで喧嘩しまくっているが、  多くの国の人々の標的になり、  全く孤立している。  こうした中、  米国を中心に中共追及の声を上げる国が続出し、  米中関係は対立状態に陥った。 

     責任追及の結果が「ドミノ効果」のようになりかねず、  賠償請求は、  世界各国が次々に後に続く可能性がある。  そして中共がほとんど払えないほどの巨額になるだろう。  だから、  現在の中共の最後の一線としては、  責任を否定して賠償金の支払いを拒否することにある。 

     喬良の最近の言葉もこれを証明するものだ。  喬良は各国の責任追及や賠償請求を「完全に荒唐無稽なもの」だとしている。  中共はなぜ責任と賠償に関して譲歩できないのか?

     理由は簡単で、  中共にとって譲歩しようと徹底抗戦しようと、  どのみち負けになり、  譲歩した方が負け方がひどくなる。  と言うのは、  譲歩すれば巨額の賠償要求に直面するが、  中共には一銭だって支払うのが惜しいのだ。  だから絶対、  賠償など受け入れるわけにはいかないわけで、  ならば、  責任追及に対しては徹底抗戦あるのみだ。 

     国際司法の無力・無能さ、  米国内での司法判断による効果的な請求の追及が困難であることから、  回収・請求は最終的に米国政府の行政手段に依存することになると思われる。  その行政手段が、  中共資産の差し押さえにせよ、  さらなる対中経済制裁にせよ、  中共の強い反発と対抗措置を招くことは確実である。 

      これは「新型コロナ戦争」の予測可能な方向性であり、  すでに米・中貿易戦争で揺さぶられている中国を中心とした経済グローバル化サプライチェーンにさらに影響を与えることは必至だ。  過去30年間の一国化(中国化)から、  多様化へと経済グローバル化が進む。  そのプロセスとは、  中共が経済グローバル化から徐々に疎外されていくことを意味している。 

     ★⑷「新型コロナ戦争」の四面性

     では、  「新型コロナ戦争」の特徴は何か。  これまでのところ、  この戦争には4つの戦線がある:第1に発生源の調査、  第2に隠蔽の調査、  第3に責任の追及、  第4に賠償請求だ。 

     第一点については、  中共は一切の情報を完全に遮断している。  米国政府と多国籍メディアが綿密な調査を行っており、  今後の調査報告書が発表された際に、  双方の反応を見れるだろう。 

     第二点目は、  中共が隠蔽した疫病の真相は、  実は大部分がすでに公開されている。  まず、  真実を語る医師を弾圧し、  次に、  華南海鮮市場に行っていない人は大丈夫だと言い、  次に、  世界保健機関(WHO)に「人から人への感染はない」と言わせ、  最後に、  未発症者からは感染しないと宣言した。  これらの嘘は全てマスコミを通じて公表されており、  隠蔽体質は悪名高い。 

      最近のニュースリリースによると、  「ドイツ連邦情報局は、  中国が世界保健機関(WHO)に対して、  発生後に世界的な警告を出すのを遅らせるよう最高レベルで促したという情報を持っている 」とのことだ。  こうしたやり方が、  世界的な流行と死者数の劇的な増加を招いたことは間違いない。 

     今回の伝染病蔓延に直面して、  中共の国際広報は二つの特徴を持っている

    :第一に、  新型コロナウイルス流行病を隠す責任を回避し、  いかなる批判にも憤慨する、  第二に、  中共の権威主義体制が流行病を隠したことを世界に忘れさせたい。 

     流行病の発生国から犠牲国の立場だということにして、  流行病の発生源の国際的な説明責任を回避したい、  ということである。 

     しかし、  こうすることによって中共は自らを窮地に追い込んだ。  第一に、  世界的な責任追及を避けるためには隠蔽を否定するしかない。 

     第二に、  国際社会の独立した調査に耐えられないため、  外部調査を拒否するしかない。  その結果、  隠蔽の存在が証明される、  最後に、  国際的批判の圧力があまりにも大きかったため、  逆恨みでしか対応できず、  国際社会の不満と敵意を増大させることになった。 

      このような状況下では、  中共の一匹狼状態はやめるわけにはいかないばかりか、  国際社会との対立状態が続いており、  その結果、  これまで中共と国際社会の間に築かれてきた相互信頼と協力の余地がどんどんなく消滅していくのだ。 

     ★⑸ 「米国の盟友」とのねじれ状態

     「新型コロナ戦争」の第三、  第四の戦線である説明責任と賠償請求に目を向けると、  米政権はまだ具体的な要求を明らかにしておらず、  関連する賠償請求の話も実際の議論には至っていない。 

      現在、  トランプ氏の説明責任問題に対する姿勢は比較的ゆるやかで、  世界的な流行病の蔓延に対する中共の責任を語る際には、  米・中貿易戦争の第一弾で中国側がアメリカ製品を購入するという約束の履行に重点を置いている。  中共もこの点については、  前向きな姿勢で反応を示した。 

     これはトランプ大統領が次の選挙で支持を維持するための個人的な計算からだとの見方もある。  しかし実際は、  トランプ大統領のアプローチは、  核保有国間の二国間関係を扱う上での通常の慣行に沿ったものだ。  外交の任務は、  武力や軍事的手段では達成できない目的を達成すること、  すなわち、  求める目的を政治的に達成するために外交交渉があるのだ。 

     どの国にとっても、  外交は常に最善の選択肢であり、  武力の脅威は常に最悪の選択肢である。  外交交渉を円滑に行うためには、  第一に「素手」ではなく「白手袋をする」、  つまり口を開けば罵ったり殴ったりするのではなく、  できるだけ礼儀と理性を持って接することだ。 

     第二に「針を隠して、  適当なところでやめる」ことが外交の基本である。  トランプ大統領の今のやり方は、  どちらにも当てはまるものだ。  中共の今後の政策方向性を試すだけでなく、  これまでの外交交渉の成果を実行に移すための措置として、  米・中経済貿易交渉ですでに合意された内容を実行に移すよう求めているのだ。 

     もし中共がこの歩み寄りさえ否定するならば、  それは、  中共が今後の外交交渉の扉を閉ざす用意があるということであり、  米国が次の一歩を踏み出すのに十分な理由となる。  そうなれば、  米国の有権者に、  なぜ米国が中共にさらに制裁を加えなければならないのか、  なぜ米国の企業や人々がそのために何らかの代償を払うことになるのかを理解させられる。 

     では、  アメリカは、  責任を追及することによって、  どこに行こうとしているのか? 米国の外交政策は二大政党政治の影響を大きく受けており、  「新型コロナ戦争」では、  米国の両党の立場は表向きは同じでも、  実際には、  大変異なっている。 

      民主党はトランプ大統領をやっつけようとして、  伝染病対策を大統領選挙戦の主要な武器としている。  しかし、  民主党がトランプ大統領の責任を追及する、  一撃一撃がみな中共の頭上に振り下ろされる。 

     つまり、  「新型コロナ戦争」では、  中共の米国における敵味方が完全にひっくり返ってしまった。  中共は、  ずっとうっとおしいトランプ大統領が退陣するのを期待し、  米・中貿易戦争が終わることを望んでいた。 

     しかし、  今や、  民主党が国内政治の都合で、  「新型コロナ戦争」を利用しているために、  中共をさらに土壇場に追い詰める展開になってしまったのだ。 

     民主党のトランプ大統領に対する責任追及を強めれば強めるほど、  中共が「新型コロナ戦争」でなんとかうまく責任をごまかそうと言う余地がなくなってしまうのだ。 

     だから、  中共は、  バイデンが、  貿易戦争では相手としてベターだと思っているのだが、  「新型コロナ戦争」の方では、  より中共に厳しい態度をとってしまうことになる。 

     疫病戦争は今、  少しずつ進化している。  民主党がトランプ大統領に対して「非難攻撃ゲーム」を続ける限り、  トランプ大統領は、  「新型コロナ戦争」では、  常に大きなプレッシャーに直面することになり、  「出所調査」「隠蔽調査」「責任追及」の3つの前線で前進せざるをえなくなる。  そして、  今のトランプ大統領の考え方なら、  関税という手段で中国に圧力をかけることが大いにありそうだ。 

     そして、  そうなると米・中貿易戦争と「新型コロナ戦争」は、  実施手段の面で合体してしまうことになる。  もし、  今年の大統領選挙前に、  「新型コロナ戦争」の責任追及として、  経済制裁発動ということになれば、  貿易戦争と「新型コロナ戦争」は、  最後には米・中経済戦争となって、  双方の経済活動は全面的な対決といった局面になっていくだろう。  (終わり)

     原文は;程晓农:美中疫情战初析 
     これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら

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