何清漣氏
2013年10月17日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/v9eec
2013年10月21日
世界の暴政国家はインターネットという人々の交流を産む基盤としての、自分達を脅かすこの新たな”怪物”をどう馴らすかは中共政府に学ぶとよいでしょう。中国はこの微簿(マイクロブログ、中国版ツィッター)が誕生してネット民が政治を批判し始めたときから、当局も対策を”時代とともに”進化させ、ぶち壊すと占領する2策のうち後者を選び3つの措置をとりました。
第一は各地の地方政府にも「政治微簿」を開かせ世論誘導を始めさせ、微簿の”陣地”を奪取。第二には厳しい審査チェックと攻撃を並行させ、有力な発言者を弾圧しやっつけ「デマ伝播罪」の脅しで政府支持の声以外をなんとか黙らせました。そして三番目は、高度に政治的注目を集める事件では巧みに微簿を政治に利用し、ある種の政治勢力をやっつけるときに工作道具として巧みに使いうまく民意を利用するというやりかたです。最後の方法は最近使われ始めたものですが、中共当局にいわせれば素晴らしい効果がありました。ふたつの例をあげましょう。
《「デマ拡散罪」はなぜ”お姫様CEO”を守らなかった?》
李鵬(元首相)の家族メンバーはその他の紅色貴族階級の家庭同様、これまでは国家の”一級保護”の対象でした。これらの家族が如何に財富を築こうと一切外部に走らされません。私は「太子党」というキーワードで中国の百度を検索してみましたが、出てくる結果は海外の「太子党」関係の話ばかりで、米国のそれまでありましたが、中国の「太子党」についてだけはありませんでした。微簿にしても、同様に太子党関係の情報はきれいさっぱりありません。2012年、温家宝一家の莫大な財産の話が不幸にしてNYタイムズに2度にわたって暴露されましたが国内のネット討論サイトにはこのニュースはありませんし、比較的コントロールが難しい微簿上にもこの類いのニュースは完全に抹殺されています。かって「温家宝総理は27億の星を持つ」というテーマの微簿をみましたが、十分後には消されていました。温家宝の息子がNYタイムズに反論した声明も香港でしか見つかりませんでした。当局はこのこと自体が中国内ではたとえ潔白を証明するためであっても却って、国内で逆の反響を広げてしまうと知っているからです。NYタイムズはこの報道でクラッカーの報復攻撃を受けました。
李小琳お姫様CEO(*爺注;電力のトップ。東電社長みたいな存在)の属する李鵬一家だって同様にこの種の”一級保護”をうけていたはずです。例えば李鵬の子の李小勇と「新国大期货公司」の詐欺事件の関係は国内報道ではキレイサッパリ削除されました。「华能国际电力股份有限公司」(華能国際電力会社)が家族産業になっているという報道がされた数日後に、書いた作家は牢屋入りさせられました。
でも今回は違っていました。まず張宏偉(*実業家)が米国で赵闳を訴えた事件は米国では誰も注目しないような小事件だったのに、誰かが英国のデイリーテレグラフにこれを教え、裁判関係の資料を提供しました。(*爺注;この事件は一昨日の何清漣氏の別項にある「由关系人到“麻烦制造者” – 李小琳、张宏伟与保险业的内幕交易」だが、イマイチ背景が難しくて爺は未訳です。ご勘弁。 www.voachinese.com/content/heqinglian-20131014/1769666.html)つぎにこの報道がなされるや、たちまち国内微簿では狂った様に噂になりましたが、監視当局は見て見ぬ振りをしていました。この李小琳お姫様CEOに関する内部取引情報が微簿で大拡散してるとき、浙江省の洪水報道に関して2人の女性が「デマ報道」容疑で逮捕されています。つまり当局は居眠りしていたわけではなく、誰を捕まえて誰をほおっておくべきかをちゃんと知っていた、というわけです。
ネット監視部門が「ネットのデマ」を取り締まってくれないため、李小琳お姫様としては仕方なく自分で戦う羽目になりました。中国電力は10月11日の夜、自分の公式微簿で李小琳CEOの声明文を発表しました。声明は「李小琳はかっていかなる保険会社とも行き来したことはなく、保険会社の人間など誰もしらないし、ネット上の保険会社と取引はデマで悪辣な中傷であり、デマ伝播者に対する法的責任追及の権利を保留する」というもので、国内メデイアとサイトでは「李小琳が悪辣なデマと否定」と報道しました。しかしネット上の百度にはその夫の劉智源が中国新華人寿保険会社副社長だった履歴が削除されないまま残っていました。つまりこの「噂を打ち消そうとする行為」が却ってメディア伝播学のいうところの「反対効果」を産んでしまったのです。香港の『大公報』のような党の広報機関のようなメディアもこれに荷担しました。
”お姫様CEO”の李小琳としてはこの場合、8月下旬に「新快報の記者、劉虎が国家工商局の副局長・馬正其の汚職を微簿で実名報道して牢屋入りになったばかりだということをよく考えて李鵬一族の李小琳の身分は国家一級保護対象であって、馬正其などの2級人物より上にも関わらず、党が彼女に対する”デマ”を取り締まらなかったのは、組織上彼女を”ちょっと虐めてやれ”ということに他ならないと気がつくべきです。
また現在のご時世をかんがえると、李鵬(元首相、二世)の一家より更に身分の高い一族の陳雲(中共八大元老の一人)一家の陳元でさえすでに国家開発銀行の総裁の地位から「名誉退職』(*実は薄熙来事件関連で左遷)されたわけで、今の時勢では中国石化の蒋洁敏総裁だって入獄させられかねないし、政府系メディアはいつも「国営企業のトップ棚卸し」を報じ「多くは利益を貪り半数以上が賄賂を受け取る」とやっているガラガラポン時代なのです。そろそろ役を下りるときでは?ということ。共産党総書記だって終身制じゃない。ましてや国営企業のCEOだって当然終身制ではない。この理屈がまだわからないの?ということでしょう。
《”微簿の民意”は諸刃の県にも》
微簿上の李小琳に対する民意はまさに当局が利用した。党と人民の間が如何に隔たりがあろうと、反腐敗の一点では当局のスローガンは民意と高い度合いで重なるわけで、ただ民意からみると「口先だけ」と。そして反腐敗の後の利益についてどうおもうかについては民意ははっきりしないし、合理的でもありません。しかし微簿上の”民意”の多元化にともなって時にはいつも民意に有利とはかぎらないこともあります。例えば瀋陽の街頭商人夏俊峰事件(*横暴な城管=町役人=を刃物で殺傷した商人が死刑になった)ではその子の夏健強の描いた絵が盗作の指摘を受け、民意の方向に変化が生じました。
何年も夏事件が注目を浴びたのは法廷が刑を科すにあたって夏の城管殺人が過剰防衛だったかどうかを全く考慮しなかったのに、英国人を謀殺した薄熙来夫人には死刑免除の特権が適用され夏は計画殺人ではなかったのに死刑でした。ネット民は法律の前では平等というウソっぱちを政府に対して責めたのでした。夏事件の論議の意義は国際社会の長年にわたる死刑廃止の呼びかけの”成果”が汚職役人や特権者だけに適用されるのはおかしいということでたしかにこうした論議は必要です。
しかし、夏の子供の描いた絵が盗作だというような話はその母親・張晶を大変困った立場に追い込み、また事件そのものの議論の方向を変えてしまうものでした。(*子供の描いた絵が出版されたがそれは台湾の画家の真似だったとわかって”盗作”騒ぎに)夏の子供の絵が画集として出版されたのは絵に天分があったというよりは、夏を助けるのにそれが役に立つと誰かが思ったからでしょう。母親も業界人ではないし、模写作品は自分の絵ではないということを知らなかったわけです。しかしこの「偽作」騒ぎで誰かはたしかに、「流れを変える」ことに成功しました。それが「民意」だったのか「官意」だったのかは重要なことではありません。ただ言える事は、政府の管理下にある微簿は大衆の意思を表明するにしてもその欠陥を克服することはできず、ときには一般大衆が思っているのと反対の作用を及ぼす可能性があるということです。
《中共は微簿上でもイデオロギーの覇権を》
厳しい審査と人気ブロガーに対する逮捕ですっかりひっそりしてしまった微簿に対しては、中国国内の人々は微簿が民衆動員効果の基盤である時代は終わった、と気がつきはじめました。劉亜洲(軍人、中央委员会委员)は「解放軍報」で「西側敵対勢力はインターネットを利用して中国を転覆させようとしている」という論文を発表しイデオロギー戦線での戦いは「談話権」の争奪だとこう述べました。「誰が談話権を握り、だれが民衆をリードするか、誰がインターネット、とりわけ微簿を掌握するか、誰が最大の話題件を握るか、話題権を争奪しなければならない。だから、世論の生態、メデイア構造の深刻な構造的変化を重視して、あらたな理念と手段を創造して俱に進歩して行く必要がある。さもなければ新しい方法を使えず古い方法は役立たずになり、強硬手段をあえてとらずソフトな手段も役に立たなくなり大変危険だ」といいました。
実は劉亜洲はなんの心配もいりませんのです。習書記は胡錦濤ではありません。中国政府はいまや新しい方法も、強硬手段も活用して、現在の微簿は中共が惜しまず巨額の費用を投入して、もうすでに手なずけられてしまいました。いま中共はその上にイデオロギー覇権を構築中です。海外のツィッターの政治生態とツイ友の多様化とくらべれば、中国国内の微簿がそのような作用を持つのはここ当分無理でしょう。(終)
拙訳御免。
原文は;「民意动员型”微博时代的终结」biweekly.hrichina.org/article/11567 に。
何清漣さんのブログ日本語訳はこちらに;heqinglian.net/japanese/