何清漣氏@HeQinglian
2013年11月2日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/EJkec
現在、中国共产党第十一節中央委员会第三次全体会議(十八・三中全 11月9日から12日)の「改革の青写真」案が発表され、その中の重要な政治的テーマの中心は反腐敗です。そして政府の知恵者達が出した「新しい一手」はなんと「公務員の廉潔な年金制度」でした。つまり廉潔な役人を年金で表彰するというものです。中国の政治の現実からみたらこれは自殺的な怠慢な提案で、人民の破滅どころか人類社会の政治文明の自殺行為です。
《廉潔をすすめ、貪を罰せずー政治倫理の最後の一線を放棄》
この提案の無茶苦茶さはギリシャの経済危機の後、廃止された公務員が時間通り皆勤したらボーナスという奨励制度に似ています。ギリシャ経済危機で政府が各種の福利を減らそうとして抵抗に遭って後、世界ははじめてギリシャの公務員達は毎朝9時に出勤し提示通り午後2時に退勤すればボーナスがもらえるという馬鹿げた奨励制度があったことを知りました。
組織管理原則というものはどんな機関のメンバーでも就業終業の時間を守るというのは最も基本的な職業的要求です。ギリシャのこの出勤退勤の規則はそうした基本要求を放棄したものでした。たるみ切った公務員に対してギリシャ政府は懲罰措置をとらず、かえってこれを慰撫する方式をとったのです。これは公務員に「時間通り出勤しないでも罰しないよ。でも時間通り出勤なら政府に貢献をみとめボーナスだす」と言ったのと同じ事です。ギリシャのこの組織管理方式は、EUが提供した財政援助を高福利で不当なボーナスに使いナマケモノの大群を養うようなもので、ついに危機にいたって今になってしんどいおもいをしてまともな制度に戻そうと苦労している途中です。
ギリシャ同様、中国のこの「公務員廉潔年金制度」は「中国の公務員は廉潔ではないのが正常で、もし廉潔なら(ホントかどうかはどうでもよく、つまりバレなかったら、ということ)党と人民に巨大な貢献をしたのでどっさり廉潔ボーナスを支給して奨励するというのと同じ意味です。世界のどんな国でも公務員は最低、廉潔であることを要求されます。ただなかなかできないから口ではしっかりとこれを言い続ける事が必要なわけです。
今回の建議の意味は中国執政集団は政治倫理の最後の一線を放棄し中国の役人は今後、いかなる倫理的約束をしないでもいい、ということになります。
「汚職役人特赦論」に比べるとこの提案は中国政治の倫理がさらに徹底して失われたことを標示しています。近年、一部から腐敗が政治危機を招くのに対して苦心惨憺の結果「条件付き汚職役人特赦改心」案がだされました。「汚職特赦論」は凡庸で見識の浅いアホな意見ですが、それでも「汚職役人を許す」というのは最低、「腐敗は悪いことだ」という認識があったからだとはいえます。対して「廉潔年金」制度はそれと違って「腐敗公務員は正常な行為」という認識です。
また特赦論と「廉潔年金」は目標が違います。特赦論は少なくとも政治改革の代用にしようとするもので、目標は正しいといえますが、清潔年金は政治改革を中共と取引しようというものではなくて、公務員全体が退職時に、職業上の最低線だけ守ればどっさりご褒美がでるよ、というもので世界のどこに中国以上に、役人に対してこんなに手厚い国があるでしょうか?
《「廉潔年金」を実施するならまず公務員の財産を開示しなければならない》
もし本当に清潔年金制度をやるにしても、それには役人の財産公示制度が前提となります。すなわち役人がどれほどの財産を持っていて公明正大な収入であるかということをまずあきらかにしなければなりません。1883年から英国では率先して役人の財産を公示する法律制度ができていらい100年以上経ちます。すでに137の国家が財産公示制度をそなています。今に至るまで中国政府はそのタイムスケジュールをあきらかにしていません。それどころか、公務員の財産を発表せよと要求した多くの人々を「余計な事をして世の中を騒がせた罪」で逮捕して牢屋にほうりこんでいる始末です。
中国政府は再三、役人の財産公示制度を先延ばしにしてきました。本来これは市民にたいする責任逃れであり不明朗なことで、中国政府の大半の役人は清潔ではなく公示したらヤバすぎると認めたと同じ事です。しかし、もし役人の財産公示制度なしに、どうやって公職にある人物が「腐敗していない」と「廉潔年金」の受給資格を認定できるでしょうか?一番カンタンな方法は当然、子女の留学、移民、自分が裸官か否かなど本人の自己申告です。役人の不動産所有については四十都市以上ですでにデーターバンクが出来上がっていると言われますが、彼らの強力な反対でネット化されていないといわれます。一体、”キチンと始末”ができるかどうかもわかりません。
誰でもわかる事ですが子供を海外に留学させるには大変なお金がかかりますし、家を買うには更に大量のお金が要ります。
もしこの二種類の最もよく役人が清潔かどうかわかる資料が国民に公開されないなら、最も簡単な、退職以前に腐敗罪等で調べられたり起訴されたししなかったか、が基準になるしかありません。しかしこの基準は中国の役人の世界では全然アテにならない事を皆知っています。90年代末に役人世界では「定理」がありました。「反腐敗は最も腐敗した連中には適用されず、目先の効かない不運なやつが犠牲になる」と。「目先が聞かぬ」とは利益を独り占めしてちゃんと上級に賄賂を贈らず、自分の政治的『傘』をつくらなかったり、「不運な奴」とはたまたま同僚の悪事がばれたとか、情婦にタレ込みされたとかで、最悪は何度も行われる『反腐敗運動』にひっかかった連中です。ましてや腐敗という犯罪の黒数はとっくに暴露されたのはほんの一部にしかすぎないのはとっくに証明されているのです。
《中国の「腐敗度合い」の仰天》
今に至るまで人類社会の罪悪の一種と見なされて処罰の対象になり道徳的指弾を受けて来た腐敗はもともと「隠れて行う」性格のものです。ですから内部の人間ではない外部からはその情報を得るのは極めて難しいわけです。ですから、いかなる国家でも暴露された腐敗事件は発生した腐敗のほんの一部なのです。これらの実際に起きたけれどもバレなかった腐敗を「腐敗黒数」とすれば、その大小は一国の政治制度の透明性と社会の監督制度の可否と関係します。
中国のこの腐敗黒数を論じるのは大変困難です。数年前政治情況が今よりちょっと緩かった時に中国では李成言がまとめた「廉政工程;制度と政策と技術」という本に関連した文章がありますが、研究者は少なくとも8割、ある研究者は95%とみています。これらの数字のどちらが史実に近いかはともかくどっちも仰天の数字です。2008年1月から2013年8月の中国汚職贈収賄犯罪の例では、もし調査された案件が151350件で16514人だとしてこのうち本当に起きたのが5~20%だとすると最低の「腐敗黒数」を80%として計算すると中国の実際の腐敗事件は75万件、83万人以上ということになります。これもびっくりする数字ですが95%で計算すると悲惨さに目も当てられないことになります。
ましてや誰もが知っているように中国役人の汚職数字はどうにでもなるものであって、鉄道大臣の劉志軍事件のように、一審が終わったら374室あったマンションがきれいに消え失せ、8億元だった賄賂が6000万元に激減しました。こんな情況では中国の腐敗黒数は究明不可能な謎なのです。
このような仰天腐敗の下で、「腐敗黒数」がかくも厖大ななかで役人の財産が公示されないままに、「公務員廉潔年金」制度などができたら国家と国民に災いをもたらす禍いのスゴさはいうまでもありません。自ら「英明」なる中共中央は不拝観料にむけて「戦いはしない」という看板をかかげ、深くお辞儀をして「頼むからこれ以上貪らず、ほどほどに、あるいはもうちょっとうまくやって俺たちの面子をたててくれ、そしたら褒美をやるから」とお願いするようなものです。
つまり今度実行しようとする「清潔年金制度」は中共の死亡を加速させる制度的な怠慢行為なのです。中共は自ら袋小路にはいりたいのならいいのですが惜しむらくはこの自殺家庭のなかで中国の十数億の人民と、山河がその副葬品となってしまい、このような高度に腐敗したなかでうまれた価値感は何代もの中国人を毒する事でしょう。(終)
拙訳御免
何清漣さんの原文「奖廉不罚贪:自杀性质的制度性偷懒 评“383方案”的“廉洁年金制” www.ntdtv.com/xtr/gb/2013/11/02/a995919.html にあります。