何清漣氏 @HeQinglian
2013年11月09日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/iKnec
2013年11月11日
中共の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)は開会前にあたっていかなる政治改革のサインもだしませんでしたが、海外メディアは毛語録の発行中止や、習首席が毛沢東の故郷、韶山を訪問して毛の住居を参詣した動向を伝えています。一群の習近平に大きな期待を抱いていた人達はこの一年以上、習近平が方向が定まらず政治的にも左右に揺れ動いた事で左派からも右派からも、太子党からも恨まれている、だから朝野に多くの敵を作った、などと思っているようですが、これは権力を崇拝する専制政治と民主政治を混同する間違った前提で、統治集団の不満がチャンスを得たら政敵になるんじゃないか、と思い込んでいるからです。
《誰が習近平の強敵?》
憲政の自由を主張する派(中国では右派と呼ばれる)は始めから中共、習近平に強力に弾圧され、いまさら「習近平を恨む」も「恨まない」もありません。一方左派はもともと権力に媚びる存在で過去数年、大いに騒いだときも当局は別に弾圧もされませんでした。左派もこれまでの行為で当局を怒らせたとは思っておらず、おのずから調整に向かう方向ですし、当局の気にする様な事を言わなければ復活OKです。現在、薄熙来は監禁されていますが、薄を支持し続けた「乌有之乡」(*ネット左派サイト)は引き続き活動をつづけています。「(民主、人権の)グローバルスタンダード」さえ罵って外国資本の手先の反中勢力だと言っていればまだ役に立つし習総書記にもお近づきになれるとおもっています。
3種の勢力のなかで太子党が習近平の政治を擁護するかどうかというのは封建王朝の帝王とその親戚関係との側近の政治に相当します。この政治的な工夫は舞台上には表向きはみえません。しかし開国の元老達がまだ生きていた時、肝心な時期にはこれが動き出しましたし、それどころか最高当局の政治路線の選択を、例えば1978年(*鄧小平の指導体制確立)のように左右さえします。
しかし、太子党ー革命一家第二世代のエリートーが習近平を擁護するか否かは現在は問題になりません。最近の習仲勋(*習近平の父)の生誕100年座談会というのはひとつのメルクマール的事件といえましょう。「革命二代」達が先を争って出席したというのは習近平総書記に忠誠を誓ったわけです。
もし不服を抱く者がいても口にはださないでしょう。習仲勋の記念行事は習遠平(*習近平の弟)が企画運営しましたから私事でも公事でもあったといえます。現代の王朝の”天子”の父ですから各地方政府が”自発的に”記念活動をしたケースもおおいわけです。北京人民大街道の記念会場の参加者の数は自ずから多く、各元老の子弟(薄熙来の盟友も)こぞってこの記念行事に参加して新君主への忠誠を表明しました。一家族一人の代表ということでしたので参加出来なかった「紅二代目」は残念がっていました。
この記念行事を通じて習近平は自分の強い立場を見せつけました。彼は江沢民や胡錦濤は本当に持っていたとは言えない本当の地位、党内の誰もがあえて公に挑戦しない権威を手に入れたのです。(*爺注;江や胡は党官僚出身で、共産党元老の一族ではない)これによって習近平個人の独裁が胡錦濤時代の政治局委員の集団指導にとってかわることになりました。思えば鄧小平が垂簾聴政野皇帝政治を行っていたときはまだご意見番に陳雲がいましたが、いまや政治局内に誰も敢えて異を唱える人物はいないでしょう。
「紅2代」の中で習近平は最も若いメンバーです。さらに数年後には現在政・軍・財界の職にある紅2代がみな70歳を超えます。この首都北京の貴族階級が中国政治に対して持っている影響力は、職を離れるとともに次第に衰えていきます。「紅3代」は現在、政治のキャリアを地方の県レベルではじめたばかりで、本省の幹部になるにはまだ長い道のりです。紅2代が紅3代にうまく跡を継がせ自分の政治影響力を保つには習近平にたてつくどころか、この紅2代の代表に恭順の意を表しておかねばならないのです。
《習近平の敵ー制度の産む腐敗官僚集団》
習近平のこの一年の政治の動をこの一年、チャイナウォッチャーたちはいつもその舵の向きが左か右か、といったことで分析しようとその痕跡を探し求めてきました。私はそのような方法の分析はいたしません。所謂「中国の夢」の主たる内容は依然として富国強兵であり毛・鄧と違いはありませんし、「精神汚染の一掃」「世論の統一」と毛沢東思想式の整風運動等は主に西側の平和の動きに対する対策からでており、その目的は中共一党専政で「ハエも虎も叩き潰す」は即ち、官僚集団の深刻な腐敗に対するものです。そしてこれらの全てはただ一点、中国の紅色エリート資本主義を守る為に毛沢東式の鉄腕政治を利用したいということなのです。
しかし太子党や紅2代目の心中は閨閥資本主義のオイシイところを自分達だけで享受したいわけで、本当は平民出身の官僚を仲間に入れたく無いわけです。これは党の刊行物では決して口にはされませんが、胡温体制の第二期から紅2代が北京政界で活躍するようになって、この気持ちはますますハッキリと現れて参りました。2010年3-4月、英国のファイナンシャル・タイムズが「カネに生きる中国太子党」など数編の記事でこれに触れています。
その中で「新世代の太子党」(Red-blooded’ veterans versus ruthless arrivistes )は大変はっきりと新・旧の二つの太子党の矛盾を指摘しています。『太子党ー本来は中共革命の高級幹部の子弟ー彼らの父達は毛沢東と共に伝説の長征に従ったか、1949年革命の勝利時の中心指導者の子弟がメンバーだ。この数代の「テクノクラート」指導者(江・胡時代)の子弟は「新太子党」で彼らは”石を金に変える”中国の株式募集商売を独占した。前国家主席江沢民が90年代始めに権力を固めて、かって数人の党招聘の子女と関係の深い実業界の連中を逮捕してその会社を止めさせたことがあった』と指摘しています。
またこの文章は「革命一家の老太子党のメンバーは十分はっきりとこの国家は自分達のものであるとおもっている」「もし宦官達が勢いを得れば自分達の権力がなくなって滅びる日が近いとおもっている」とも書いています。( when the eunuchs become powerful it means the end of the dynasty is near.”)この記者はこのニュースは北京の消息筋の紅色貴族圏内の人物の提供だとはっきりと指摘しているのです。これを私も信じます。なぜなら紅色貴族圏内にいる者だけがこのように技術官僚出身の政権担当者を軽蔑したいいかたができるのですから。
これを証拠だてるものとしては、この習仲勋記念行事では多くの革命家一家の二代目達が招待され出席しました。中には毛に粛正された高崗の未亡人や遺児までいましたが、みな「同じ一家」とみなされてました。しかし「新太子党」のメンバーが招かれたという報道はありませんでした。もしそんなことがあったら香港のメディアがみのがすはずがありません。《南方周末》11月6日には「陳小鲁の紅2代の輝く系譜」という題で陳毅元帥の子の陳小魯、馬文瑞の娘、馬暁力を取材しています。
後者はここ数年、習近平一家と親の代からの付き合いで「紅二代」の中でも活躍する代表的人物です。彼らははっきりと紅二代の精神を共有していて「紅色の江山は万万代、我等の手の中でこわしてはならない」と思っています。ファイナンシャル・タイムズは「新太子党」という言い方をしていますが、馬暁力の口からは「官2代」という言い方になります。「官2代は私達と違う。はっきり区別すべきです!」「大部分の紅2代はなんの権力もなく、お金もありません」「私達は腐敗をすごく憎みます。官二代のやりたい放題には本当に腹が立つ」「あんな連中に党を無茶苦茶にされてはたまらない」などなどと発言しているのです。
紅2代の内部の精神認識を理解すると、習近平の今後の執政におけるその任務が紅色政権のカラーを変えないこと、ということ、つまり絶対、共産党一党独裁の政体を変えないということだとわかります。『反腐敗』の主要な目標は官僚集団の腐敗です。これは中共の執政能力を維持するにも必要な手段です。過去の中共も実は同じ事をやってきました。過去10年に地位から転げ落ちた何十人かの省・本省級の高官はすべて平民出身でした。
外部からのウォッチングで習近平が左と右の間で揺れ動いているようにみえますが、それは皮相な観測です。私は、習近平はこの種のやりかたで或る政治勢力に警告を送っているのだと思います。「中国の政治路線の向かう所は俺の事情であって誰も観賞するな。どうしようと俺には考えがある。誰もそのカラーを変えようなどとはおもうな」ということです。
しかし、首都北京の政治はただハイレベルの政治にだけ働きます。各地方政府はみな平民出身の官僚集団が管理しているわけです。これらの官僚は中共政権の紅二代といった血肉の連帯感とは無縁の存在で、大多数は「利益」の文字にひかれて入党して役人になりました。ですから習近平がいかにとっくに腐敗にまみれた政治列車をどうやって運転し続けるかが問題です。
ですから、こうもいえます。習近平の真の敵は本当はどんどん腐敗官僚が湧き出て来るこの政治制度にあると。でもこの政治制度はまさに彼と紅二代が極力守ろうとしている紅色政権なわけです。習近平はこの厖大な官僚機構のマシンの慣性を変える方法はもっていません。彼は実はこの政治制度の奴隷にすぎないのです。(終)
拙訳御免。
原文は;「习近平:中共政治制度的奴隶」www.voachinese.com/content/heqinglian-20131109/1787190.html