何清漣氏
2014年1月7日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/E69ec
杭州師範大学法学部教授の范忠信は自分の約束を遅まきながら果たす為、官僚の資産公開を再び皆の話題になさいました。共産党を深く信任している同教授は 微簿で2013年、中国は県郷級(*下級の行政単位、日本の町村程度か)の公務員の資産公開がもうすぐ実現するだろうと預言し、もし外れた場合には「罰と して1km這って歩く」そうです。多くの中国人がわかてないのですが官僚の資産公開には中国にはいくつもの誤解があって、県・郷級の下級公務員の資産公開 というのはその一つにすぎません。
《県・郷級公務員の資産公開;反腐敗に等級制》
県郷級公務員の資産公開は、この案を考えた人は反対勢力が比較的弱く、簡単に実行できると考えたのかもしれません。実はまったく正反対です。この種の反 腐敗活動で行政の等級制でやるということの隠された意味は、「上層部の腐敗は容認出来る」です。党中央の目的はただ下っ端役人に厳しくしたいだけです。し かし上層部の共産貴族とてもはやかっての封建王朝の「天命を受けた天子」ではありません。下級の官吏といえども高層の貴族達が自分達に比べて公共財産をよ り多く略奪する「法的権利」があるなどとはおもっていません。彼らは県郷級公務員の財産公開を骨抜きにしてただの形式だけにしてしまう方法を山ほど持って います。中国政治の特徴は;昔からいままで、位の高い「清官」はなんとか求め得ても、「清廉な吏(下級役人)」は滅多に得られない、です。所謂「吏治」 (*旧時代の地方官吏の治績)のキーワードは「治吏」、すなわち「吏」(下級役人)にあります。なわち肝心なのは「官」(上級職)に比べて何十倍、何百倍 もいる「吏」ーつまり底辺公務員です。
明清3大思想家の1人で有る顧炎武は「吏」に対して深い認識を持っていました。「百官はお飾り。国の命運を握るものは地方下級役人だ!」といいました。 清末の郭嵩焘の名言は「本王朝の天下は下級役人とともにある」です。中国人は銭雲会村長事件(*土地収用に反対して村長が重機で轢殺された)警察や城管 (町役人)の暴力に「上の法の役人は実際の現場を理解していない。(現場のほうが力がある)」と思ったことでした。直接民衆に対峙する各種の小役人や警察 は事実上の国家権力の本当の行使者であり、彼らが権力を乱用して、人命を軽視することは中国の一大公害というべきものになっています。
ちょっと考えたらわかるように、今の下級役人の有様で、県・郷級の役人の資産公開を無理矢理実行したら、彼ら底辺層の役人の反応はどうでしょうか?かな らずや「俺たちとアンタら、どっちが清潔だっていうんだい?外国メディアが報じたおめえらエライさんの何十億ものカネはどっからきたんだ?おれたちみたい なやりかたしないのに?」。続いて起きるのは「上に政策あらば我等に対策あり」になり財産公開制度はただの政治ショーにまたなってしまうことでしょう。こ れには先例があります。中国の官僚の所有する不動産登記(*ネット化されるはずだった)の仕事が終わってもいつまでもネットで公れる事は無いのはまさにこ こに原因があるからです。
ある人が中国とインドの腐敗の比較をして得た結論は、インドの腐敗はその多くが底辺層かより上に行きたい中の上クラスで発生しますが、通常、自制心を強 めたり、足をあらったりして自分のイメージを社会の目に体裁をあわせようとします。しかし中国での腐敗は不規則な矩形をなしており、上下ともにみなが腐敗 しており、賄賂を受け取る機会は役職の高低以外に、部門によってもあります。職階が高く無くても、その部門に銭儲けのチャンスがおおければ、下っ端の役人 でも管理職よりトップより儲かります。
最近ニュースになった馬俊飛(*フフホト鉄道局副局長)が毎日、20万元の賄賂をもらっていた話などはその生々しい例です。裁判所の発表では馬は在職期 間(2009年8月から2011年3月)に四十社の企業から1.3億元の賄賂を受け取っていました。在職22か月では馬は毎月平均600万元の賄賂を受け 取っており、一日当たり20万元近くになります。これは一日当たりの中国役人賄賂記録を更新しました。
この前には重慶市巫山交通局長の晏大彬、甘粛省宕昌县(贫困県)の県委員会書記王先民の一日平均約1万、河北省対外貿易経済合作庁副庁長の李友灿は一日 平均5万元超でした。中国の官界の”青蠅”の太り具合は世界に稀に見るものです。しかし中国のトップレベルの高官は果たしてこうした下っ端の官吏より ちょっとは廉潔だといえるものでしょか?答えは否定的です。
政府メディアの「人民論壇」の「中国新富裕家族(2010年4期)が明らかにしたところによると、2009年中国の3000家族の長者番付で”紅色家 族”(*共産党支配層の家族)はこの主体をなしています。「紅色家族は分厚い政治と資本をもち、スタートから有利で容易に社会的資源を獲得出来る。これら の紅色商業家族は多くは許可のいる貿易や基礎産業、エネルギー産業に従事している」とあります。不動産業界もまた紅色家族のお気に入りの領域です。
2012年中共の権力闘争が白熱化し、各派の勢力が外部メディアに情報を流しました。中国人は遂に「NYタイムズ」やブルームバーグ・ニュースを通じて 自国のハイクラス家族たちがとっくにプロレタリアート等ではなく巨大な冨を持つ一族で、その財産は数億㌦から数十億㌦になると知ったのでした。ですから官 僚財産公開が形式に流れないようにしたいなら、おそらく上から下まで一挙にやるべきでしょう。なぜなら上が自制してこそはじめて反腐敗の模範を示せるわけ で、反腐敗を等級にわけたりしなければ、底辺の”青蠅”にもはじめてちょっとは効果があるというものです。
《人為的に作られた誤解;組織に申告と財産公開の違い》
2013年12月7日、中央組織部は「指導幹部の個人的事情を幹部に報告する件に関する通知」を印刷し、国内の世論はこれに喝采したのですが、それには 資産公開との混同があります。官僚財産の内部申告制度はとっくに明文化されています。1995年に「党政機関の県級以上の指導幹部の収入報告規定」、 2006年の「党員指導幹部の個人関係事実の報告規定」、2010年の「指導幹部の個人関連事項報告規定」最後の二つは大同小異、どちらも「指導幹部は本 人の婚姻の変化と配偶者、子女の居住国、仕事、収入、不動産、投資を報告すべし」というものです。しかし、組織内部に申告するのと資産公開は本質的に違い ます。
これらの申告が本当かどうか、主管部門は調査等しません。社会の市民達も事情はわかりません。しかし資産公開となると情況は完全に違ってきます。欧米の 多くの国家では、反腐敗関連の法律は多くは「財産の公開」を強調しているのであって、ただの「申告」ではありません。「公開」の目的は公衆に資産公示資料 を通じて公務員がデタラメな財産、収入、支出報告をしていないかどうかわかるようにする為です。2012年二月、米国下院は「政府倫理法案」を再度修正 し、最も重要な修正は議員が下院と上院に資産の公開を報告した後、ネットに資料を上げて公衆にそれが事実かどうか調べられる様にしたことでした。
国外では知るすべも無いことですが、中国の「指導幹部の個人事情関連報告規定」はどの程度実施されているのでしょう。もし本当に実施されているなら鉄道 省の張暁光の家族が国外で商売しているとか、その業務が鉄道省の発注と密接な関係があり、その娘の張西希がかってJ.P.モルガンで働いていたなどの「変 わった行動」が上級によって把握され、適切な時期に介入をうけて、クジラが悠々泳ぎ回れる程の”穴”が”発見”されるようなことにはならなかったでしょ う。
事実が証明していますが中国の「不動産大所有一族」は大多数が官僚かその家族です。その家産の数はすべて公衆が主体的に明らかにしたのであって、彼らが 自分の組織に誠実に申告したからわかったわけではありません。というわけで、中国が現在必要としているのは官僚の資産公開制度であって、自分の組織に申告 すれば良いなどという嘘っぱちのお遊び制度ではないのです。
《資産公開には他の制度とのセットが必要》
官僚の資産公開だけで、他の相応した社会の監視機構が無い限り、中国は本当には腐敗を撲滅できないでしょう。三権分立の民主主義の制度下では、反腐敗の キモは社会の監督、つまり外部監視です。国会、自由なメディア、選挙民がすべて監督者です。中国は一党専政で中共が政治を独占し、資源を独占し、世論を制 御し、反腐敗を内部監督しています。すなわち自分で自分を監督しているわけです。この種の監督では元々限界があります。
なぜならどんな鋭利な刀でも自分の峰は切れませんし、どんな外科の大家でも自分を手術する事はできないからです。この数年、中央の巡視隊が至る所で調査 しましたが、腐敗問題はますます深刻になり、腐敗官員の職階は増々高くなっています。その金額も増々増え、その事件数もおおきくなっており、役人の一日当 たりの賄賂額は人々を仰天させるというのはこのせいなのです。もし北京が一党独裁を続けたいならば、すくなくとも「模擬外部監督制度」というべき体制を試 みるべきでしょう。
それは、政府の予算透明化(公衆に支出の詳細な情況を知らせる)、官僚の財産公示(資料をネットにあげ公衆に調査)、公民に知る権利と問責権を与え、実 行可能な機構をつくる。この4つが出来れば、官僚の資産公開は形式的なものに終わらなくなります。一旦、官僚の財産と収入が会わなければ、すぐ相応の懲罰 措置がとられることができます。世界の経験ですでに証明されているとおり、反腐敗の対策は予防にあります。そして予防の最良の手段は社会の監視なのです。
すなわち、政治上の勢力のバランス、メディアの自由と世論の開放です。組織内部の監督が日々、効果を失っている情況下で、北京はなにもわざわざ回りくど いことをしないでも、今有る国際経験にかんがみてやれば即座に腐敗を根絶させることはできなくても、少なくとも『虎』をダイエットさせ、「蠅」の数を減ら す事ぐらいはできるのです。(終)
拙訳御免。
原文:「官员财产公示的几个中国式误区 」は p.tl/2yj4。