何清漣
2014年02月12日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
2014年02月15日
最近中国政府は「性都」東莞市で一斉摘発を行いました。本来は道徳的正しさをみせつける人気取りの筈だったのですが、却ってネット上にはこれを嘲る声が わき起こり、「東莞頑張れ!」のスレッドが立ち、書き込みが続々と集まりました。多くが政府のエロ取締の動機を疑問に思っており、中国の暗黒面は多々ある のに、なんでまた性産業だけ狙い撃ちにするのか?と。
道徳面から中国の性産業は存在すべきか否か、と論じても問題を解決出来ないばかりか、この産業を消滅させることはできませんので、本文は中国のセックス 産業(および関連産業)が中国経済で「大き過ぎて潰せない」現状から中国性産業のいくべき道、即ち非処罰化(合法化)を論じましょう。事実を認めることに よって対策も立てられ、厖大な性産業を政府の管理の枠内に置くことができ、そのマイナスの社会的影響、例えば性病蔓延などを軽減できるのです。
《セックス産業の連鎖はどれぐらい?》
セックス産業の厖大さはそのGDPにおける生産価値が無視できるような額ではなく、その上、消費者があまねく中国の社会各層にわたっており影響も極めて おおきいのです。性病蔓延などの要素を考慮して、この十年来、セックス産業を「地下から地上にだすべきだ」、つまり合法化せよという意見があります。中国 政府は人権など重視しないので、セックス産業従事者の基本的人権、などといっても始まりません。ただ現実は中国でセックス産業を完全に禁止することは不可 能です。なぜなら、性産業が中国経済に占める地位は「大き過ぎてなくすわけにはいかない」のです。
中国のセックス産業の規模とそれに連なる川上、川下の産業の規模範囲については比較的容易に共通認識に到達することができます。西側では「セックス産 業」は20世紀の60年代以降、「地下経済」と関連する概念として登場しました。研究者はひとつの産業としてのセックス産業は主に三つにわかれます。ひと つは直接の性サービス、女が男に、男が女に、同性間などをふくむ売淫。つぎに間接的セックスサービス業、マッサージやストリップ、トップレスバーなど。3 つめは性具(ポルノ写真も含む)製造、加工、輸送、小売業など。この3つの業界が「性産業」を支えています。中国ではどれも相当な規模ですが、合法なのは 中国中の大中都市にある性用具店だけで、その他はみなグレーゾーンにあります。
東莞の性サービス部門は全部そろっていて、”専門職”の水準も高く、「性の都」の異名を轟かせましたが、他の地区だって数量的には遜色ありません。たと えば山西省の太原の公開登録キャバレーはかって五千を数え、中国メディアは「世界最大」と評しました。次になかなか共通認識に到達するのが難しい問題、従 業員は一体どれぐらいいるのか、を論じましょう。研究者で売淫(その関連も含めて)計算したケースはきわめてまれです。2006年4月に、中国学界では 「売淫合法化」の議論があって綱易の情報では四百万人の従業者が5000億元の価値を産むとあります。別の「中国エロ業界の規模と現状の簡単な分析」(作 者;呉海 2012年3月4日発表)で言及されている数字は;中国の毎年の性産業の生産高総額は4980億元。セックス関係労働者は約500万人。別の国 際人権組織が広汎に引用しているWHOの中国性病報告では2009年の数字で4〜600万人(女性)、とあります。
なぜ何年も経つのにセックス労働者の人数が増加したのに総生産額が増えないのでしょうか。原因は需給関係です。2008年以後、中国は次第に「世界の工 場」の地位を失っていきます。社会底辺層の女性は大量にこの業界に入り、性サービス供給が増えましたが、しかし需要の総量の変化はたいしたことはなく、 サービス価格は下落傾向にあるのです。
《桃色GDPが中国総GDPに占める割合の試算》
以下はセックス産業のGDPに占める割合の試算です。中国国内メディアでは“性都”东莞では、セックスサービス関連の従業員が30万から50万と言われ 業界の生産額は500億元、現地のGDPの7分の1を占めるとのことです。他の都市は”性都”にくらべると劣ります。以下は私が中国統計年鑑の中国にお GDP総額とこれまでにのべてきた同年のセックス産業精算額を比較して得た計算です。
2005年の中国GDP総量は18.31兆元で、五千億元はその2.7%です。2006年の総GDPは20.94兆元ですから五千億元は2.4%になり ます。パーセンテージに疎い読者はこうきいても驚かないかもしれませんが同年の他の業界の生産高のGDPに占める割合と比較すると、2006年の中国の不 動産業のそれは9664億元で4.5%、飲食業界が4792億で2.2%。中国美容経済年度報告によれば2007年の、不動産、自動車、電子通信、旅行に 次ぐ中国人の「五大ホット消費」の美容業が当時1.80%で従業員が1120万人で第三次産業の中でも最も就業人数が多い業界でした。この報告は未来の 3〜5年に美容業界のそれが5000億元を越えるだろうと予想しています。つまり2006年の性産業の規模になるだろうと。
これでわかるように中国のセックス産業は新旧の業界での地位は無視できません。同業界と国民就業への貢献は大きく、いずれ「大き過ぎて潰せない」の域に 達するでしょう。もし中国経済が底辺層の為にあたらしい就職口を作り出す事ができなければ、たとえ指導者が「女性に乱暴」と不評でも、500万から700 万人の就職口をつくりだし、2,3000万人の生計(含む家族)の業界を挫けず「復活」するかも、です。
《性産業合法化を政府は政策予定に入れるべき》
1;性産業はとっくに警察と黒社会の共同管理の領域になっています。警察は権力を利用して裏金を稼いでいることは公然の秘密です。黒社会業界人は保護費と 称して金をとり性労働者は二重の搾取を受けているばかりか、命の安全さえ脅かされ、犯罪分子のために金を稼ぎ、命を危険にさらす対象となっています。性産 業を地上に出す事はこの状態を改善します。
2;性産業が地下産業である情況は性労働者は定期的な身体検査をうけられません。これにより性病が伝播し公共衛生上の深刻な問題になっています。2010 年6月、中国衛生部は伝染病疫病情報で、全国(台湾香港マカオを除く)の梅毒病例は32190、死亡2例。発病データで前乙類伝染病の第三位。性病の増加 は急速で過去15年に全国の胎毒性梅毒の病例は年平均で7割以上の速度で増加しています。特に広東の梅毒は持続的に上昇を続けており2012年、広東では 10万人あたり50人の新梅毒患者がうまれ、これは全国の1.5倍で、200人に1人の妊婦が梅毒感染者です。英国の医学雑誌・ランセットの論文では梅毒 発病率の一番高いのは上海、浙江省、福建省、北京、広東など経済の発展した都市です。
性病の伝染は人口体質の下落をまねきます。古代バビロン王国やローマ帝国がこれによって国家衰亡した例もあります。性産業の消費者は中国社会の各階層に わたります。人口の質という点からかんがえてもセックス産業は地下から地上にだし従業者が定期的に検査をうけ、病気がみつかれば適時に治療を求め、性病の 伝播をふせぐべきなのです。
3;赤線地区の地上化は官僚グループのむちゃくちゃなおおっぴら消費を減らせる。性産業とその関連のピンク業界は中国ではとっっくに巨大な産業連鎖をな し、厖大な就業人口を抱えています。多くの社会底辺層(少数の中下層も)家庭がこの商売に頼って生きています。いま中国経済が減速し、正常な就職機会が減 少している情況で、ロクに効果もありはしない「エロ撲滅運動」などをやるより、むしろ「娼家大繁盛」という現実を承認して、香港や台湾、タイなどの地域と 国家の体験に学び、セックス産業を非犯罪化し、政府の社会管理の業務範囲にいれたほうがよろしいでしょう。(終)
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
拙訳御免 原文は;大而不能倒:性产业对中国GDP、就业的关系 www.voachinese.com/content/heqinglian-china-gdp-20140211/1850042.html
何清漣さんのこれまでのブログの日本語訳は;heqinglian.net/japanese/ にあります。