北京の「新三反」が「3大難事」になるワケ
何清漣
2014年06月23日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/m7Efc
この一年来、北京の政治の動きは「新三反(*3つの悪をやっつける)」、つまり、「汚職腐敗」、「テロ」、「西側の影響」を退治する、ですね。これは実行するのは難しい事です。一番一般受けしそうなのは「汚職退治」ですが、それも紆余曲折がありますが、他の二つとなるとさらに見通しのはっきりしない困難なお仕事です。
《汚職退治は相手が偉過ぎて大変》
「★習近平VS大物 腐敗摘発の戦いは暫時休戦に★」(2014年06月22日の原稿 http://twishort.com/KcEfc) でも分析しましたが、汚職退治の難しさは身内の高官のなかに超弩級の大物がいるからです。江沢民、胡錦濤も「反腐敗」を口にはしましたがやり方が違いました。江は身内にすきにやらせ、胡錦濤はナミビアの賄賂事件を契機に自分の子をビジネス界から身を引かせました。その他の高官はみな七光りを利用させてましたね。習近平の家族の修身は(夫人と娘)でそうした話は聞きません。2007年に習近平が上海市委共産党書記になってから、弟を上海から遠ざけ、弟もビジネス界から引退しました。おそらくこうしたことが原因で習近平は自分はそうした弱い尻が無いから「鉄を打つ」ことができるとおもっていたのでしょう。しかし思いがけなく周永康と李鵬の家族、そして曽慶紅の地盤で有る香港マカオを中央紀律委の監督下においたところ元老たちの集団的抵抗にあって、それを和らげるためにしかたなく中央紀律委の楊暁渡を登場させて「18回党大会を境界に、当人が政治局常務委のような重要な地位から引退していたらその腐敗(家族も)追求しないと言わせました。
しかし大変奇妙な事に6月4日以後、NYタイムズには習近平の姐の財産の問題が3度も重要な記事として掲載されました。習近平が元老たちの網を緩めたのに、なんで何者かがNYタイムズにデータを提供しつづけるのか?ふたつしか可能性はありません。ひとつはこれらの資料は5月26日の講話以前に手渡され、NYタイムズの記者がいつ発表するかに対しては情報提供者側のコントロールが利かなかった場合です。もうひとつは敵側が習近平の約束を信用せず、習近平の家族の蓄財を暴露することによって「政府のトップはみな同じで目糞鼻糞を笑うみたいなもんだぜ」ということみせつけようとしたか、です。
Forsytheの発表した資料によると習近平と同期の常務委だった温家宝、贾庆林、周永康はみなその家族が持つ財産価値は1.5億㌦を越えており、それも最低限の数字で、これに先だってNYタイムズやブルムバーグが温家宝、戴相龍の家族、習近平の姉についての数回の記事によるとその財産はみなはるかにこの数字を上回る者でした。習近平の家族に対してのNYタイムズの3つの記事がでたということは政敵は習一家を忘れず足をひっぱろうとしているということです。
さらにニュースによれば前中共政治局常務委の曽慶紅の子の曽偉は2008年シドニーで三千万㌦で買った100年前の豪邸を最近、新築しなおしたということです。習近平の強気の性格からみて政敵がこのようにずっと「顔に泥を塗られる」ようなことをされてこのまま許しておくこきっとないでしょうから、今後「腐敗退治」がどう動くかはまだ未知数です。
《反テローテロリストって誰よ?が難》
主に新疆ウィグル人の”テロ”が北京の頭痛のタネです。今世紀になって中国の新疆ウィグルに対する政策は元々の少数民族懐柔政策を完全に放棄したため、ますます多くのムスリム達が「国家を分裂させようとした罪」や「組織テロに参与した罪」で死刑に処せられています。6月16日、去年10月におきた有名な天安門金水橋自殺事件で3人のウィグル族が死刑判決を受け、新疆最高裁は他の7件13人の被告の死刑を執行しました。
しかし以下二つの要因で強権弾圧は却って新疆のコントロールをより困難にします。まず弾圧は現地のウィグル人の宗教信仰に関わります。ウィグル人権プロシェクトの分析に依るとウィグル人主要居住地のタリム盆地北の阿克苏沙雅県政府は2014年4月16日に民衆に積極的に情報を寄せる様に奨励するとともに、53種類の行為を禁止しましたが、その18は宗教に関係があることです。この意味はウィグル人は宗教を捨てるか反抗するかしかないのです。
第二は、貧困から逃れる術のないウィグル人はすべて「潜在的なテロ分子」になります。環球時報によると、これまでウィグル地区で起きた暴力テロ事件の犯人は南疆皮山県と墨玉県出身ですが、皮山県の一部の村落はテロの大本営といわれ地理条件は劣悪で経済は遅れており、ウィグル人は生きるためにすることがなくテロリストに走る、と。つまりこれは中国政府が新疆で直面する「テロ分子」というのは実はウィグル族の平民で、宗教、経済、政治等の要素がテロ事件を誘発しているわけです。平民が刃物をもてば「テロリスト」になる、ということです。実際「中国国家安全研究報告」でも「テロリストは刀や包丁など原始的な兵器をつかってテロ事件を起こす」と書いて有ります。世界のどこにこんな原始的な武器でテロを起こす「テロリスト」なんているでしょうか?
中国の歴史上、中央政府は辺境の少数民族地区に対してはだいたい「懐柔してコントロールする」政策をとってきました。つまり上層部を懐柔し中央政府の統治下で自治をみとめるやりかたで辺境を安定させたのです。清の乾隆帝(*領土を最大に拡大した)はウィグル部の乱を平定したのち、依然として秦の時代から伝わるこの方法をとりました。しかし中共の統治ではウィグル族等少数民族社会の構造を完全に漢民族化させたので現在矛盾がきわめて深刻化していますが、双方ともどうすれば解決の道筋がみつけられるか皆目わからないのです。中共は依然として現状に固執し弾圧でいどみ、反対者は「東トルキスタンイスラム運動」として独立を要求しています。中央民族大学の伊力哈木教授はなんとか架け橋になろうと努力してきましたが中共に逮捕されました。誰もこの頻繁におきる衝突が最後にどうなるかはまったくわからないのです。
《「反国外からの浸透」の難儀は「敵」がどんどん増えていくこと》
北京はずっと「国外の敵対勢力」を警戒してきました。米国を「重要な戦略的パートナー」とかいいながら米国の「平和的クーデター」の陰謀を警戒してきて、2005年以後は時代にあわせて「カラー革命」の陰謀に反対する、となりました。2002年から2009年までに米国の財団の対中国援助は4.3億㌦でしたが(香港台湾を除く)、その補助金は政府系の学術機構や政府部門、政府系NGOなどが86.01%をしめます。草の根NGOはわずか5.61%です。米国はこうして北京の猜疑心を避けようとしながらゆっくり中国を変えようとしていますが、それでも中国は安心できません。
最近、国家安全部門は在中国国外非政府系NGOの徹底調査をおこないましたが、その矛先は政府の最大のシンクタンクの中国社会科学院でした。問題は北京の眼中の「国外敵対勢力」がどんどん多くなっていくことです。西側国家が中国の人権を批判すればたちまち「非友好」とみなされますし、アジアの隣邦とはおおくの領土紛争をかかえており、エスカレートして緊張が高まっています。
アジアの他のふたつの社会主義国家のベトナムは中国を「帝国主義」と予備、北朝鮮は中国を「資本主義」と呼びます。香港という「中国の神聖な領土の一部」までが、普通選挙をめぐってセントラル占拠運動をおこしこれまた「中国に好意をもたない国外勢力」になりました。6月10日、国務院新辨公室の出した「一国両制の香港特別行政区実験」白書は単一制度国家を強調し、本源的な権力は中央政府にあり、中央が香港に高度な自治を与えているだけで香港に与えていない権力はみな中央にあるのだ、と強調しています。その主旨は「香港は自分の立場をわきまえて中央に文句をいうな」ということです。しかし香港側の回答は民間政府改革案の全住民投票で、その電子投票システムは6月20日からスタートし6月21日の夜8時までおこなわれ、すでに53万5千人が投票し、香港人が「フルイにかけられて選択した」ものではない、本当の民主主義を強くのぞんでいるという民意を表しています。
北京の始めた「3つの悪をやっつける」はその目標のひとつだって実行に移すのは困難です。まして3つ一度にやろうとするのはやる当局者をクタクタにさせるでしょう。今後の総体的な見通しとしては国内ではすでに中共は「安定を銭で買う」ことはむずかしく、「チーズ」はどんどんちいさくなっています。(例えば公務員の待遇の引き下げ)一方で国民をひっぱたいておとなしくさせようとする「棍棒」はますます太くなってきています。国際社会では、金銭で支持を買うようなことが続けられなくなれば中国政府は「アジアの孤児」から「国際的孤児」になることも別に不可能というわけではありません。(終)
拙訳御免。
何清漣氏@HeQinglian: 原文は「何清涟: 北京的“新三反”缘何成了“三大难”?」http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-20140622/1942356.html