何清漣
2014年7月10日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/AnMfc
7月2日、米国財務省は国税局がFATCA(外国税務コンプライアンス法)について、米中両国は対等かつ互恵で金融情報を共有する協議で妥結し2014年6月26日から実施すると発表しました。これは米国で財産を隠そうとする中国の貴顕人士、役人、金持ちにとってはあまり良いニュースではありません。とくに前2者にとっては圧力が高まります。
《海外資産隠匿時代の終焉》
この協議によれば中国住民が米国の金融機関に開いた口座、関連の収益、口座の持ち主の姓名と住所などの情報はすべて中国政府が規定によって手に入れる事ができるようになります。米国財務省の情報によると中国は中国は「モデル1」に該当しますが、まだ「モデル1-A」か「モデル1−B」かは明確にしませんでしたが中国メディアはそれが「モデル1-A」だとわかったとしています。
これだと中国政府は互恵原則によってそうとう細部の情報も得る事ができます。FATCAは今年と来年を実施過渡期として、この条項は2010年批准されましたが実施はずっと延び延びになっていました。その主な内容は外国の銀行とその他の金融機関に米国人に関わる5万㌦以上の口座の資料を米国税局に知らせる様に求めており、米国人の海外資産と収入に課税しようと言うものです。
これには一定の強制力があって、もし外国機関が「外国口座税務遵守法」に協力を拒んだ場合、その国の対米国投資の利益の3割を差し押さえ、米資本取引市場の口座を凍結するというのです。米国とは世界各国が嫌でも交流せざるをえないわけで中国の大陸、香港、台湾などにいて米国のグリーンカードを持っている人々にとっては、今度こそ本当に「オオカミが来た!」なのです。
《中国はなぜ今回、協力むすぶことを望んだのか?》
1年以上前ですが、中国政府はFATCAに対しては沈黙を守っていましたがメディアは「これこそ万万税だゼイ〜」(*万々歳の親父ギャグ?w)と「中国が米国より住みやすい証拠」であると大いに喧伝し、金持ちはグリーンカードを獲得したことを後悔していると報道しました。
しかし、それはただ報道だけのお話で、中国の貴顕、官僚、金持ちが本当はどう思っていたかはわかりません。しかしその後、公開でグリーンカードを放棄した大金持ちは宗慶後(*杭州・ワハハ集団の総帥)だけで、大多数は様子見の姿勢でした。
彼らにとって上手い具合にここ数年、中国・米国間ではアジアでの角の付き合いとかネットスパイとかますます双方が頭を痛める面倒事が相次ぎ、各方面でも協力が遅々としてすすみませんでした。しかし米国にお宝を隠している中国人には不愉快にも今回、中国政府はなんと米国と協力合意してしまったのです。これには当然、中国国内の政治情勢の変化がきわめておおきな関係をもっています。この一年に中国ではいくつも大変なことがおきました。
政治トップ層の利益争いの矛盾は依然として存在しますし、習近平の強力な反腐敗はその裂け目をより大きくしました。超重量級爆弾なみの威力のある紅色大貴族の財産報道が国際的に信用有るメディアに掲載されました。とりわけ”殺傷力”の高かったのは国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が発表したレポート「中国オフショア金融報告」(*http://urx.nu/a427)で、江沢民、曽慶紅、周永康、朱鎔基などの家族を除いて、おおくの政治高層の家族メンバーと富商が掲載されていました。
中国政府は国内に対してこの情報を厳しく封鎖しましたが、このレポートによってすでに中共集団が恥知らずな強盗型政権だということは世界に向けて堂々と証明されてしまったわけです。習近平と王岐山の「反腐敗」は高層内部闘争で、しかも「革命第一世代の貴族には手をつけない」とかのボトルネックはありますが、しかし「中国オフショア金融報告」には多くの紅色家族のメンバーの資料が暴露されていて 米国との金融情報交換における「心理的障碍」はなくなりました。
米国が外国の銀行や金融機関に米国人の5万㌦以上の口座資料を要求するなら、対等な条件とはつまり、中国市民の米国での資料も中国政府に提供されるわけです。かくして中国政府が米国に米国籍やグリーンカード所持者でかつ中国で商売をし、財産を持っている中国人の資料を提供し、一方米国からは米国に隠し金を持つ貴顕、役人、富商らの資料が手に入るという奇妙な構図ができあがります。
《貴顕、役人、金持ち、それぞれの悩み》
どの国の金持ちも払う税金は少ないほどいいので、米国籍やグリーンカードを放棄する人もいます。米国財務省の発表データでは2013年に米国市民の身分を放棄したりカードを返上したひとは2999人で前年の2.21倍で新記録でした。分析によればFTACAの影響もあるようです。しかし米国国籍保持者やグリーンカード所持者の総数からみればこの数字はなんということはありません。香港台湾の状況も似た様なものです。米国籍やカード所持者は沢山います。
台湾の米国との二重国籍所持者は約80万人おり、新税を納めるのを承諾した一部の人々以外、大多数はやはりなんとかこの法律の網から逃れたい様ですが、しかし、だからといって米国籍やGカードを捨てようというひとは多くありません。FATCAの話が2013年に伝えられてから中国メディアは多くの金持ちにインタビューして、匿名の金持ち達が「Gカード申請を死ぬほど後悔している」と語ったと伝えましたが、その後やっと入手したカードを放棄したというニュースは見かけません。
それは中国政治・経済の危うさがますます高まるなかで、米国は依然として中国人が移民先としてトップにあげる場所だからです。多くの人が永年国内に住んでいても、FATCAのために米国籍やGカードを捨てようとはしません。中国の貴顕、役人、金持ちにしてもFATCAに対する思いはそれぞれ異なります。金持ちにとっては税金が問題ですが、中国国内報道によると「もういい方法をみつけた」とか。
彼らは米国に住んでいるわけではなく、子供を住ませているだけです。だれもFACTAのせいで米国籍やGカードを捨てるとはいいません。おもしろいのは台湾の弁護士が重罰を避ける為には税金を払った方がいいというのにたいし中国の弁護士は「米国の調査は抜き取り調査だから、大した事は無く税金を逃れる余地はある」と言ってることですね。
しかし、貴顕人士と役人にとってはFACTA協力は政治面と経済面で二重の危険に直面します。米国が提供する中国の資料はまさか中国の役人の本名の口座などないでしょう。しかし口座の所有者から貴顕官僚の親族関係を調べるなどというのは中国政府にとってはお茶の子さいさいです。
こうなるとおおくの貴顕官僚にとってはブラックマネーが明らかになってしまう危険に直面することになります。貴顕諸氏の中心圏内には中国政府が「国家機密」扱いして、政治的にいつか利用出来るネタ扱いしてくれる大物身分もいるでしょうが、多くの省部級(大臣、地方長官クラス)やそれ以下の役人はおそらくその種の配慮にはありつけますせん。なかには中央紀律委の「反腐敗」のやり玉にだってあげられかねません。
習近平の腐敗摘発の勢いはいま真っ盛りで、中国メディアはFACTAについて去年のように「これこそアメリカのバンバンゼイ!」とは違って、いつのまにかひょっとすると中国政府のあらたな「反腐敗」の”武器”になるかもしれない、というものです。(終)
拙速御免。原文は;「肥咖条款:中国人海外藏金透明化」http://urx.nu/a4am