何清漣
2014年11月10日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/sYQgc
2014年APEC(アジア太平洋経済協力)サミットで「北京反腐敗宣言」が通過し、APECの反腐敗実行の協力ネットワークが誕生し、中国はその主導権を勝ち取りました。それはAPEC地域反腐敗事務局が中央規律委の中に設けられたことで明らかです。経済協力会議の席上、非経済協力の成果を獲得したということは外国人からみたらその”重大意義”はどうもはっきりわからないでしょう。でも北京はこれを極めて重要な世界による政治的な承認だと受け取っており、人民ネットの11月8日には「中国はなぜAPECを重視するか、それは勧誘されて入ったメンバーの立場から、主導者になったからだ」と2014年のAPECは中国が国際的なゲームのルールを書き改める始まりだとしています。
《国際政治とは「承認される」こと》
中国がこのような見方をするのは理由のないことではありません。カナダの政治学者・チャールズ・テイラーは「承認された政治」という本で、人類社会とrecognition(認められること)の必要性について書いています。(Charles Taylor(Canada ) ‘The Politics of Recognition’ and Intercultural Tensions)。そしてこの必要性がまさに政治上の民族主義を駆り立てる背後の力のひとつである、少数民族や”賎民”の集団、、様々なフェミニズムの政治的要求を代表し、政治として、特にいわゆる「文化多元主義」の政治的な中心テーマとなっているとしています。
この種の「認められること」は国際政治にも言えることで、事実上、国際政治とは「認められる」政治なのです。中国は毛時代70年代に米国と結びソ連に対抗するまではソ連.社会主義陣営に一辺倒で、1971年に国連に復帰したのは西側世界から承認されていない状態から承認されるという過程でした。台湾が国際社会からひとつの国家として承認されないというのもこの時期から始まりました。このあと90年代にいたるまで北京政府と台湾は金をばらまいて国際社会で交流国を取り合いしたのもつまり国際的な「承認」の争奪戦だったのです。中国がWTOに監修したのも中国が重要な国際的承認を取り付けた、というメルクマールです。
しかし、世界の指導権を獲得したいという希望をもつ北京政権にとっては受け入れられるだけの政治的承認というのではまだまだ不足でした。「平和的勃興」にともなって、北京はずっと「相手の底値を探る」外交を続けて国際ルールを改訂する試みをおこなってきました。2009年12月、コペンハーゲンサミットでの中国政府側の表現は最初の西側ルールを改めようとする場合の底値探りの大きな動きでした。これを中国メディアは「コペンハーゲン気候サミットで中国は高調子で出撃した」と得意げに大報道しました。オバマ大統領はずっと北京との有効な関係を保とうとしましたがついに我慢しきれず
2011年11月30日、ハワイのAPECサミットで記者会見で中国に「国際関係を弄ぶのはやめ、世界の他の国家と大人の振る舞いをすべきだ」と要求しました。中国外務省の役人はいろいろな反応をしめしましたが、国際部副部長の庞森の言葉が北京の本音といえるでしょう。彼は「これらのルールが中国も参加して協議したものなら遵守の義務を負うが、どこかの国や国々が決めたものなら中国は遵守する義務はない」といいました。この回答は中国がなぜ国際ルールを守らないのかを理解する上での鍵です。
WTOからあらゆる国際人権条約んみ中国は制定に参与したことはありません。これは別に他の国家が中国を参加させなかったということではなく、中国が国際社会にあとから来たからです。中国が加入するずっとまえ、一部の組織ができ、協議されていたということです。中国がそれにサインしたのは「韜晦戦術」で、国際社会の入場券を先にゲットしてあとから図面を変えればいいや、ということでした。しかし、「中国が制定に不参加なら守らなくて良い」という政治的論理で中国側はずっと違反してもそれは当然のことだ、ただまだ自分たちの力が弱いから口には出さないで心の中に秘めていました。ただあのハワイサミットでオバマに急かされたので中国の役人たちはやっとおもってることをスッキリはきだしたわけです。
この政治理想にもとづいて中国は2014APEC会議を「自国の国家戦略を深く会議の中に融合させ」、最終的にAPECのメンバーの共通認識としてアジア太平洋の発展方向を指し示す」(人民ネット11月8日)この「主導的地位」は当然のことながら会議の主催者、といういみではなく国際社会に中央規律委の反腐敗運動の主導権をとらせる、ということです。
《「中共中央紀律委」が国際社会で正式名称に》
中央紀律委はずっと法律を超える権力を持ってきました。まだ起訴されていない、弁護士が代理していない段階で役人を拘束し調査します。しかしこの権力はこれまではこれほど大々的に使われたことはなく江沢民、胡錦濤時代にはわざと「その刃を秘めて」いました。王岐山が主管するようになってあkら中紀委はその機構も職能も強化され、仕事の能率という点では大幅にグレードアップされたのでした。
そして国内では有名な作家の二月河や馮驥才らからベタ褒めされる一方、これに異を唱える声も絶えませんでした。国内の護憲派からは反腐敗を中紀委が行うことの合法性に疑問の声があり、法治を破壊していると指摘されています。「なぜなら汚職収賄などの犯罪は刑事訴訟法によれば、検察機関が担当するべきであって、中紀委がやるというのは正当な期間を差し置いて、これは法治の破壊である」という指摘で、この弁護士は「中紀委システムは法治を破壊する大本営」という有名な発言をし、「私個人としては中紀委は反腐敗の推進者というよりは中国の法治破壊の大本営である、とおもっている」といいました。この人は護権運動を代表する影響力があったので、貪官の人権という問題が2014年上半期の国際人権組織も高度に注目する重要な話題になりました。
私はこの問題に発言はしないできました。なぜならこれはもうテーマそのものが架空の、前提条件である中国が法治国家であり、中国の検察機関が法治を貫徹しているという事実が存在しないからです。事実上、まず中国は独裁専制国家であり、共産党が立法、司法、行政の三権を全部支配していますし、中紀委が事件を扱うのと検察が扱うのでは本質的に違う話です。次に中国の司法、検察システムの腐敗事件は中国の法律共同体が極度に腐敗していることを証明しています。腐敗の極みのシステムが 腐敗に反対するなどということはできない話です。さらに中国の人権侵害問題は大変多く、それに比べると貪官の人権などという話はどうみても主要な問題ではありません。国際的関心という限りあるリソースを中国貪官などに注ぐのは馬鹿馬鹿しいことです。
中国政府もこのような詰問は一顧だにせず、もっぱら国際的承認ということだけ考えています。ここ数年、中国はすでに63か国と107項目にわたる司法協助条約を結んでいますが、しかし国際的に汚職役人を追跡する部局は中紀委が統率して、最高裁、最高検、外務省、公安部、国安部、司法部、中国人民銀行などが共同参加して組織されて事務局は中紀委のビルにあります。中紀委の指揮する「国際貪官追跡事務局」は他国家との引き渡し交渉などを担当し、司法互助を請求しますがこれは国家の制度としては変です。なぜなら中紀委は中国共産党の組織であり、国家の機構ではありません。しかし他の国はどうもそうした制度上の矛盾はどうでもいいようです。米国やカナダ、オーストラリアなどの第三國もこれに対して異議を唱えません。
この過程がつまり中紀委という共産党の紀律委が法律に勝手に手を貸すやり方が国際社会に承認されている過程なわけで、こうした国際的な承認があればAPECサミット会議場で中国が初のACT_NET主催国になって、地域の反腐敗の主導権をとるという ことは成り行きからいって当然のことでしょう。
《北京の評価;国際社会の主導権の攻守は入れ替わる》
世界を見渡せば、中国のように世界中に散った貪官がいるなどという国はありません。ですから国際社会からみれば、そうした貪官が一番おおい中国が地域の反腐敗を主管するというのは重要なことでかつ政治的にもただしい協議でした。現在の約定ではACT-NET主催國の地位は2015年末までで、中国がさらに続けたければ、反対する国はないと思われます。理由は簡単で、貪官が外国に逃亡するのは中国の特殊な問題であり、日本もシンガポールも他の国もそんな大規模な汚職役人の逃亡潜伏などという現象がおきたことがないからです。
しかし、中国は明らかに今回の反腐敗で主導権を握ったということをそれれだけのことにすぎないなどとは思っていません。前述の人民ネットの文書も「中国の歴史上の偉大な転換点であり、ひょっとすると数十年先に歴史学者はこの会議こそが中国が初めて真に世界経済のゲームのルールを本当に主導し…攻守ところを変えた、というかもしれない。なぜなら中国は規則に従う立場からすでに規則を制定する者になったのだから」と自画自賛しています。
今回のAPEC会議には二つの目的がありました。中国の過剰な生産能力を輸出する目的の中国版マーシャルプランで、今回の会議ではアジア投資銀行の成立は実質協議に入らずただの青写真にすぎませんでしたから、中国が世界経済の機関車になるというのはビジョンにすぎません。「北京反腐敗宣言」がACT−NETの地位を確定したことは、国際的な汚職役人追求は「中国問題」でその効用も限られています。
ですから、中国が本当に「世界のゲームのルールを変えるリーダーシップを取る」ことができるかどうかは、まだなんともいえません。畢竟中国という先生独裁体制は今日の国際社会においての異質な存在なのですから。(終)
拙訳御免。
原文は;「APEC观察:中纪委反腐获国际承认」http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-china-apec-international-recognition/2514023.html
何清漣さんの他の論考、日本語訳は;http://yangl3.sg-host.com/japanese/
Comment on “APECウォッチング 中央規律委の反腐敗が国際的に承認された”