何清漣
2015年4月23日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
中国株市場の「狂牛状態」はまさに真っ盛りです。いまこのとき、どんどん株投資にのめり込む零細投資家にここで過去の教訓を思い出してもらおうというのは不人気に決まってますがしかしやはり私は二つの点は指摘しておきたいのです。それは株に手を出す人にとっては情報がすべてだということ。当局にとっては政府の手は神の手ではないのでサイコロ博打で他人が金持ちになるか貧乏になるかを決めることは一国の経済の方向を捻じ曲げ国を過つものである、ということです。
《政治に動かされるマーケットは内部情報が株の神様を生む》
中国の株市場が政府によって突き動かされている以上政府機構や株式市場の大ワニたちが漏らすニュースは往々にして株の上げ下げの根源です。ニュースの広がりには階級的、時間的な性質があります。そして大衆株主たちは適切な時期に反応を見分けることができるかどうかそれが成否を分けます。情報ピラミッドのトップにいるのは国家とその機関投資家たちです。そうした基金や機構は株式市場を左右できる巨大さを持ち、売買の勝負でも往々にして事前に正しい内部情報を入手できるか否かが勝敗を決します。
「中国の株市場をテコで動かすにはどれほどの金が必要」という文には多くの例があげられています。こうした機関投資家は専門のアナリストの他に専門の政府関係の情報を集める専門の人員を擁しています。彼らは中国の株市場の”繁栄”なるものが政府によって行われていると深く理解しており、政府がいかなる小さな動きを行ってもそれが何を意味するかしかと分析します。例えば今年の人民代表大会での周小川の株式市場に関する談話からはすぐそのニオイを嗅ぎあて、4月中旬には株式市場は加熱し上海、深圳の取引学は1.3兆~1.5兆の間になりました。
4月19日の落ち込みはまさに専門家の分析が予想した「政府はきっと株式市場の加熱を冷やすだろう」という予想にぴったり合っていました。ですから20日の上海・深圳の株のグラフの震度の幅は最後には売り買いともに1%以上の下げになりました。しかし国家部隊と機関投資家の株式取引はこうした分析の他に、もっと重視しているのがインサイダー情報です。つまり、証券監視部門や上場企業の内部の情報です。証券取引監督の役人は往々にして「公私兼職」しています。監督任務を果たすと同時に、ついでに一般投資家が得るより先に得た情報を親戚・友人に流して不当な利益を獲得します。
監督部門の役人の違法行為は特に多く、2014年11月、中国証券監会、公安部、国資委の共同で行った「インサイダー取引警告教育展」は全国巡回で行われ、上海、広東、深圳、廈門などで開かれました。また一部の関係した役人を取り調べましたが、大体は疑いのある役人を離職させ、スキャンダルになるのをもみけしました。こうした離職した役人は時には基金の企業や証券会社に天下り企業側も役所に貸しを作った上に、さらにこうした役人から、かつて属していた監督機関の情報をゲットするために喜んで受け入れました。
上場会社の内幕情報も大変重要です。年、申銀万国理事長の李剣閣(国務院系統に長年在職)は公に明らかにしたことですが、上場企業が会議を開くたびに監視機構の派遣したメンバーが理事会に出席し、そしてトイレにたつたびに株価が跳ね上がった、というのでした。いわゆる「トイレに立つ」というのはそっとぬけだして内部情報を電話で知らせるということでした。そしてこの種の会議には監督機関だけではなく現地金融機関も参加しとにかく口実を作れる人がぞろぞろとやってきて、理事会の後ろに座っている人数が理事会のメンバーより多いというありさまでした。彼らはなんで上場企業の理事会にかくも興味があったのかというとそこでは企業の重要な政策が決定され、経営発展の重大問題が決定され、すべて商業機密であり、さらには証券取引の内幕情報だったからで、その決定が株価に影響し直接投資者にとっての大事な利益だったからです。「会社法」や「証券法」には政府の役人が企業の理事会に出席する権力は与えていませんから、これは明らかに権力の私物化です。
つまるところ、政策的に政府によって操られる市場の主な特徴は人脈が内部情報の取得の量を決定し、株売買の勝者となる重要な”資源”です。世論がいくら役人のインサイダー取引を批判し、その行為が公平な投資秩序を破壊するばかりか中小投資家の利益を損ない社会を腐敗させると批判しても、これは一種の権力をもって利を謀り公を私利に利する新型の腐敗現象なのです。そして、現在の制度環境のもとでこの現象を根絶するのは絶対に不可能です。
《大衆投資家がいつも負けるのは情報源不足》
株であろうと金相場であろうと、「おばあさん」扱いされるのはその無知無能とそのときの風向きの後にくっついているだけということです。大衆投資家は、上昇相場の「牛」が少しでも長く続くことを願っていますが、しかし永遠に続くことはありえないということも知ってはいます。彼らの大半が負け組になるのは主として情報を得る人脈を持っていないからです。大部分は別に周小川の「池理論」になど関心を持っていませんし、中央銀行の資金緩和や消費促進の目標が何か、などもさっぱりわかっていません。ただ少数の投資家がすくなくともわかっているのは個々人の望みがなんだろうと、株の売買は財富を生み出すことではなく、ただ社会の財富を再分配するだけで、勝てば賭けに勝つことになり、負けたらそれを認めるしかないということです。
総じて言えば、一般ゴミ投資家は集団の無意識状態におかれており、国家部隊や機関投資家のように内部情報を得る手段を持っていません。少数の実戦経験のある投資家は自分自身で買い時売り時をしっかり自分で決めていつまでも株価に恋々としませんし、こうした人は株市場で多少の得るところはあるでしょうが、大部分の大衆投資家は流れに流されて、踏み台にされてしまうだけの存在です。
4月3日までに証券時報データセンターが今年の一般人からの株式市場への資金流入はすくなくとも1.32兆元だといいます。4月中旬のIPO(株の初公開公募)は申し込みが集中してまた最高値をつけ、銀行の預金が大量に流出し前月末の一兆元近くのマイナスになり、アナリストはこの資金が株式市場に流れ込んだとみています。今回の「牛」相場の値上がりぶりに、庶民投資家は過去の痛みをケロリと忘れて、2014年1月の新波経済が出した「2013年中国株市場の投資者の大損」という報告を覚えている人はほとんどいないのでしょう。
私はここでやはり昔の話を再度、お話せざるをえません。株で損害を被ったのは65%。2割から5割の損をした人が26.3%。8割以上の損害を被った人は7.5%。株に関わったために生活水準が下がった人が32.3%、9%の人々は生活も困難となりました。当時、あっというまに財産を失った人々はどうして自分がますます貧乏になるのだろうと、考え始め、専門家の答えは「大衆投資家が財産を保全する唯一の方法は、株式市場に近寄らないことだ」でした。でも、今やまた株を買うことは政府が人民に与えた福利を手に入れると同じことだというお話が彼らをひきつけています。
《中央銀行の作る『池』は崩壊をまぬがれがたい》
私は数日前に「★中国株の「牛」(強気市場)は政府によって作られる★(2015年4月18日)http://twishort.com/NUdic を書き、周小川中央銀行総裁が流動性過剰の中国金融災害に対処するために「池理論」を提案したことを紹介し、これまでにつくられた「池」こそ不動産、株市場だと書きました。するとツィッターで「池がいったん崩れたらどうなるのか?」という質問を受けました。
長年、中央銀行のトップにいる周小川は当然この道理をわきまえており、この1日の取引量が1.3兆から1.5兆にもなる超巨大な大池の水門をしっかり預かり、万が一にも失敗するようなことがあるとはおもっていません。で、政府の管理という観点からみれば、この「池」の水がいっぱいになりすぎたときには当然、「放水」します。つまり国家部隊や機関投資家が離れま、株価は下落し、そして調整局面となり、その後、状況を見てまた水を貯めれば良いということです。しかし、それはただ政策を通じての誘導でしかありませんから、その池の中の風波が外とは無関係に池の中でおさまるかどうかは誰も保証できません。
中国は経済を助けるためにずっと通貨緩和政策をとりつづけてきました。2014年の力の入れ方が少なかったとはとてもいえませんが、それでもその結果、実体経済はよくなりませんでした。却って、株価だけが熱狂的に反応したのです。例えば2014年11月末に中国は2年ぶりにはじめて利息を下げ、中央銀行387文件(*預金金利政策)を出し事実上、銀行貸出金利を緩和し、銀行の貸出能力を高めましたが実体経済はこれに反応を示さず、株式市場が却って熱烈に反応したのでした。11月以後3週間で証券指数は30%以上上がりました。
今年3月下旬に周小川は2015年ボアオ・アジアフォーラムで中国の伝統産業は大きな問題を抱えているが依然として銀行の貸出の大きな部分をしめており、資本市場でも高比率だが、今後は新興産業を奨励するためにも銀行の貸出は新たな産業分野とハイテク分野に加勢すべきである、と演説しました。しかし、その演説がおわるやいなや、今回の政治的な「牛」相場が人々を株式市場の熱狂に引っ張り込んだのです。通貨緩和政策が中国経済を救えず、新たな資金が実体経済に行き渡らず、中国経済、社会、政治が動きがとれなくなるばかりとなれば当局は新たな政策を考えなければなりません。
不動産市場を「池」にするのに比べて、株式市場を「池」にしてしまうという政策は実体経済への貢献はさらに少なく危険はより大きいのです。不動産業界はバブル化したとはいえ、その上流下流に多くの業界をかかえてお金をまわし職を生み出してはおりましたし実体のある建物をつくりました。バブルがはじけてからも大幅に値下がりはしましたがそれでもある程度の価値は残りました。しかし株式市場は財富の転移だけです。株式取引というのは所詮は「羅漢さんまわし」ゲームのようなもので、それ自体、シャボン玉を膨らませているようなものです。いつかはぺしゃんこになってバブルがはじけたあと負けた側に残るものはなにもありません。
私の結論は、中国の株式市場はいま財富のガラガラポンの真っ最中で、勝利者はいつもと同じ顔ぶれで内部情報をいろいろゲットでき勢いに乗れる「株の神様」たちであり、今の強気相場はたしかに「牛(ブル)」ではありますが、それは「狂牛」であって、健康な牛ではありません。株価をテコで動かす政府は有力ではありますが、だからといって「神の手」(*アダムスミスのいう意味で、ですな)ではありませんから、完全にこの狂牛を御せるすべはもたないのです。(終)
拙訳御免。
何清漣氏の原文は;http://t.co/diIT784XxX 撬动股市的政府之手并非上帝之手
何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://yangl3.sg-host.com/japanese/