何清漣
2015年8月22日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
http://twishort.com/n5Qic
天津の大爆発事故は中国の表面的な太平楽な世のコロモの下に隠されたー企業の経営管理、政府の批准監督、消防体制に至るまで、腐れ切っていないものはない、というデタラメぶりを暴き出しただけでなく、民間に広まる”デマ”が帰って中南海に圧力となって北京が天津地方政府に圧力をかけそれがメディアの取材を解禁して最後には外国メディアにまですくなからぬ真相を書かせてしまうという副産物までうみだしました。
《ネット”デマ”が一歩一歩、当局を不安にさせて》
中国天津8.12大爆発は世界を驚かせました。爆発の原因が民間企業の瑞海国際公司の天津港における違法な青酸ナトリウムなどの危険物を大量に置きっ放しにしていたからです。しかしこの点を除いては一切の関係報道、例えば損害戸数、死亡人数や瑞海国際公司の背後の人脈などについては国内の民衆は基本的に信用せず、香港メディアとインターネット上には政府とは全く違った情報が流れ、それがソーシャルメディアを通じて急速に拡大ました。そのなかには大量の瑞海国際公司の背景に対するものでした。
こうした情報の爆発、それにくわえて天津市政府の情報制限は中国国内メディアですら瑞海国際の背景は極めて深いものがあると感じさせました。例えば財形ネットの8月17日、「瑞海国際公司のバックの人脈、情報通は「只峰(*’代表者とされる)などは主人にパンくずを運ぶアリにすぎない」と」と報じ(*;http://yuanchuang.caijing.com.cn/2015/0816/3947846.shtml)、「天津爆発企業の瑞海国際公司の”お友達”図解」を掲載し(http://www.21jingji.com/2015/8-18/4NMDA2NTNfMTM4MTc4NQ.html)、読者に深い闇が背後にあるという印象を与えました。
爆発事件後、一番先にでた”デマ”は瑞海の社長の只峰は天津市の副市長・只昇華の息子だという説ですが、これはすぐさま「彼には娘しかいない」と否定されました。香港の「苹果日报」は8月15日に「中国本土の情報」として「大爆発の倉庫の違法経営のボスは李瑞環の姪」として瑞海国際の大株主の李亮は長年天津のボスだった前政治局常務委員、全国政治協商会議全主席の李瑞環の弟、李瑞海の息子であり、李亮は李瑞環の姪子という関係をうまくつかって、「一貫して便宜を得ていた」し、天津警察はこれを否定しなかった」と報じました。この後、何人もの新旧政治局常務委員たちの名前が次々に天津大爆発との関連で取りざたされました。李亮の強力なバックとして、ネット上には現任の政治局常務委員である張高麗(中華人民共和国国務院副総理)の娘、張暁燕は張雯心と名を変え、瑞海の最大株主の李亮に再婚し、張高麗に鄧小平の次女の鄧楠を娶らせたとか、張の妻の康潔は鄧楠の別名だとか。だから李亮は一人で鄧小平、前政治局常務委員の李瑞環、現認の政治局常務委の張高麗という三つの政治的なバックがある、とかです。
実際は張高麗の妻の名前は康潔で、幼女の張暁燕は香港の金持ちのビジネスマン・李圣泼に嫁いでいます。鄧楠の夫の名前は張宏で、江蘇省人の北京大学の同級生でその家庭メンバーは女婿の安邦理事長・呉小晖が噂になったときにメディアによって晒されています。これらはみな公開された情報でしたが、ネットでは執拗に中共トップ層の「閨閥関係」が取りざたされました。そのわけはといえば、彼らは瑞海国際というこの「たかだか民間の流通業者」が天津保税区(すなわち天津自由貿易区)のなかで危険物を扱う商売ができて、かつ監督管理などどこを吹く風と自由にやれる」などという力があるとは信じなかったのでした。中国の制度の環境のなかではすでに無数の例がこうした場合、新旧の紅色貴族家庭の腐敗の泥沼と関係あるということは証明されていますから、この”デマ”は「合理的な根拠のある疑念」でした。
最高当局もこうなってはじっとしていられません。習近平総書記は三日に2度も天津大爆発に談話を発表し、「周永康、徐才厚、郭伯雄、令計劃といった大事件もとことん調査して公開処理しているのに、安全に問題があった事故について隠したり発表を留保する理由などない」といいました。この談話によって天津当局はしかたなくすでに瑞海公司関係で10人の重要参考人身柄を抑えていることを発表するしかありませんでした。このあと、官製メディアからソーシャルメディアにいたるまで前代未聞の情報量が堰を切って流れ出し、とくに新華社や中央テレビなど中共の喉舌といわれるメデイァまで瑞海の背景にかかわる人物を調べあげたのでした。
《官製メデイアの解説の伝播力ははるかにネットの”デマ”に叶わなかった》
政府も今ではこの事件に権力がらみの不正利得行為があったことを認めています。新華社ネットは8月19日に「瑞海国際公司の経営者たちが明らかにした会社の『政商関係ネットワーク』で新華社記者が独自取材し瑞海公司の5人の核心人物、大株主の李亮、会長の于学偉、副会長の董社軒、社長の只峰、副社長の曾海軍に接触したとした。その結果としてわかったことというのは;
同社には于学偉と董社軒の二人の大株主がいて、于学偉は元中化集団天津支社の副社長で危険な化学製品に通じており、幅広い人脈をもっている。第二の大株主の副社長・董社軒は天津港公安局局長の董培軍の子で、父親は2014年8月に病死しており、父親との関係で港では”いい顔”である。于は株の55%を持ち、李亮がその可部を代理所持、董は45%を持ち、高校時代の同級生舒铮が代理所有している。于の為に代理所持している李亮は今年34歳で、普通の家庭出身で父親は天津市東麗区の老幹部局の科員である。
この記事が発表されてのちもだれもこれを信じようとしませんでした。信じない理由は、第一に「天津発展改革委員会、天津港、交通運輸部、安全管理局、環境保護局、海事局、税関が全部自社の為に便宜を提供してくれるようなそんな会社の株主が普通の庶民の出身だって、あんた信じられるもんですか」ということと、第二にはもし政治的な深い黒幕がいない、っていうのならなんで爆発事件がおきたときに政府側は世論を抑えようとしたのよ?」ということです。
そして天津の副市長を11年間にわたって勤めた現国家安全監督総局の局長である杨栋梁が逮捕されるまで、ネットの世論はずっと彼らを「身代わり羊だ」とみなしていたのです。
《ネットのデマが部分的な真相をあきらかに》
政府が言論統制の手を緩めたので天津以外のメディアも次々に大々的報道や特集を組み、瑞海国際の背後の権力の洞穴の底からてっぺんまで掘り下げ、いくつかは代表的な報道だといえるでしょう。たとえば、「天津爆発の瑞海国際;危険な商売、野蛮な成長、背後のオーナー」(上海澎湃新闻 ,2015年8月17 日 http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1365209)や、「だれが瑞海国際に違法危険品貯蔵を見逃したか?」(《新京报》,2015年8月20日 http://epaper.bjnews.com.cn/html/2015-08/20/content_594395.htm?div=0)。
こうした報道によって仰天びっくりの事実がたくさん明らかにされました。天津の姿勢の半分がこの事件に関連していて、瑞海公司のために便宜をはかっていたのです。そのなかでも最も主要な機構は天津市交通運輸と港湾管理局です。2013年にこの局は違法に条件の整っていない瑞海公司にゴーサインをだしました。2014年3月には瑞海国際公司は必要な安全施設の条件がなく、合法的な許可がない状態で、違法な危険化学製品の貯蔵業務を始めました。2014年4月、天津市交通局と港湾管理局は瑞海が6ヶ月にわたって危険品をあつかうことを于学偉に頼まれて秘密に違法な許可をだしました。この特別許可は2014年10月に失効しましたが、その後も8ヶ月間にわたって瑞海公司は違法に経営を続けました。今年6月、天津市交通運輸、港湾管理局は再び違法に瑞海公司に危険品をあつかう営業資格証書をだし、その結果大爆発となりました。過去一年半の間にいつでも大事故がおきておかしくなかったのですが、天津市の安全監督部門は職責を汚し管理をおこたりました。これが他の企業なら5年、10年もかかってかろうじて得られる経営資格ですが瑞海公司はすべて腐敗によって獲得しました。この腐敗行為にかかわったのはさらに天津市発展改革委員会、環境保護局、公安局、海事局、天津税関など天津の地方政府部門および中央直属の機関です。
大爆発は天津市の官僚界腐敗の蓋を吹き飛ばしました。現在すべての真相が分かったとは言えませんがすでに分かっただけでも仰天びっくりです。
天津大爆発の後の各種情報の伝わり方と政府側の対応をみれば、結論がえられます。各種の情報伝達の手段は相当に豊富となり、以前のような中国当局が嘘八百の発表を並び立て、大衆が真相に疑問をもつことを許さなかった時代はすでに終わったのです。天津大爆発事件以後、ネットの集団によってうまれた「政府の嘘八百に対して”デマ”で対応する」というやり方は、中国当局当局を無理やり、しかたなく自国国内メディアに真相の一部を暴露させたのでした。(終)
拙訳御免。
原文は「天津大爆炸后谣言倒逼真相的信息战」http://www.voachinese.com/content/voa-he-qinglian-tianjin-blast-20150822/2928948.html