何清漣
2016年3月29日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
https://twishort.com/Rbokc
3月27日、二つのあまり目立たないニュースがありましたが、この二つを一緒にすると現在の中国の治安維持体制に重大な改革が行われようとしていることがわかります。この二つというのは「中央軍事委報告;軍隊と武装警察は3年後に一切の有償服務を停止」と「楼継偉のいう『大事』は中央地方財政関係改革」です。
軍隊と武装警察が地方政府に提供してきた「有償服務(有料サービス)」とは一体なにを指しており、そしてそれは中央と地方財政関係改革にどんなかかわりがあるのでしょうか?
★二つのニュースの重要性はどこにあるか
この軍隊と武装警察の有償服務を停止するというニュースは;
「中央軍事委員会は近日中に『軍隊と武装警察の有償服務活動全面停止の通知』を発表する」で始まり、最後は「通知」は軍と武警の有償服務活動全面停止は軍隊の建設発展の全局に関わる重大な政治任務である。各レベルにおいては政治意識、全局面を見渡し、政治規律と秩序を厳守し、高度な政治的自覚と強い担当責任意識をもって命令があれば直ちにしっかりと把握して中央軍事委員会の決定と支持を確実に実行しなければならない」と結ばれています。
「有償服務」というのは;地方における治安維持で武警出動が必要となった際には地方政府が費用を負担するということです。過去には武警の指揮系統が多頭化して、地方政府の治安維持の命令にしたがわねばなりませんでした。それが軍政改革と財政関係の改革後は、武警は地方政府の治安維持に協力出動するときは中央軍事委員会の命令で動きはするが、これまでのような軍と武警の一切の有償服務活動は停止されるというわけです。国家によってあたえられた社会保障の任務と軍民融合のシステムの発展のためにこの移行は三年間でおこなわれ、三年後に完成するというものです。
香港の「南華早報」が人民代表大会の期間中にこれに関連する重要なニュースを掲載しましたが、惜しいことに当時山ほどあったあやしげな政治ゴシップ記事の山に埋もれてしまって注目されませんでした。このニュースは「武警政治委員会による『武警法』改正の分析;問題の根源は指導者の指揮体系にあり」というもので、中国国内の専門家が周永康の指揮した319政変で伝えられたことにふれて以下のような分析をしています。
;こうした指揮システムはこれまでをみると色々問題があった。特に政権指導者と軍機関の指導者間で衝突があれば危機を招きかねない。そこで武警政治委員で全国人民代表の孫思敬が『武警法』の改正を提起。内容は武警に任務の範囲と明確で具体的な法律的根拠を提供するために軍事委員会主席の責任制度を導入するなどとされ、武警を党中央、中央軍事委員と習近平主席が武警を掌握する最高指導者であることを保証するために提案された」とあります。
「中央地方財政関係改革」の方のニュースの要点はたくさんあり、報道ではその重要性はかつての朱鎔基時代の税制改革並みのであるといわれます。ここでは関連する一条だけあげておきますが、それは「まず、支配権と支出責任を適切な制度にするために、適度に中央の権利と支出責任を強化し、国防外交、国家安全、全国統一市場規則と管理などを中央管轄とする、とあり、その「国家安全」という項目は、「新国家安全法」の規定によると政治、経済、軍事、文化、科学技術、海洋、宇宙であり、いわゆる「政治の安全」とはつまり治安維持です。
治安維持は従来は中央と地方の共同出資でしたが、管轄権は地方にありました。が、これを装警察の動員は中央軍事委員会が直接掌握して、酷寒安全は中央の管轄になるわけです。こうなると重慶事件のときのように王立軍がアメリカ領事館に逃げ込んで重慶市長の黄奇帆が武警でそれを包囲するといったことはできなくなります。
★新旧の治安維持体制での大変化は?
「中央地方財政関係改革」は、権限と支出責任を中央、地方、中央と地方の共同負担に三分類しています。権限の区分では「指導意見」の大方の方向は地方は一部の権限を中央にして、中央と地方の共同負担では、とくに地域の境界を超えてまたがることについては中央が責任を負います。この2項目の改革が実施された場合、地方政府の治安維持はどんな変化があるでしょうか?
第一に、地方政府が治安維持にもはや武装警察を動員できなくなります。
これまで地方政府は治安維持において二重の役割を持ってきました。それは社会混乱による暴動の製造者としての役割とその火消しの役割でした。製造者であった、というのはいわゆる「群隊性事件」(民衆集団騒擾事件)は主に反汚染、土地強制収用抵抗などでいずれも地方政府の行為が引き金となった際に、地方政府はその利益関係者(土地収用によって利益を得る者)であり、また地方の汚染企業の黒幕的存在でした。しかし地方政府は行政権、司法権をもっており自由に暴力装置を使って人民を鎮圧できました。
数多くの事例が証明しているように、利益を損なわれた人々が法律や公の救済を申し立てようとしても現地の裁判所は取り上げようとしませんし、あるいは無駄にエネルギーとお金を使わされて敗訴します。もし圧迫された人民が立ち上がろうとしたら、その結果はほとんどいつも地方当局が警察を出動させて鎮圧にあたりますし、規模がおおきければ必ず武装警察の暴力によって鎮圧されさらに様々な罪名をつけられて指導した人々は逮捕され牢屋にほうりこまれておしまいです。
あたらしい法律ができれば地方政府は直接武装警察を使うことはできず、使えるのは警察だけになります。しかし規模が拡大すればやはり武装警察に出動をたのまざるをえず、地方の治安維持に第三番目が登場することになって真相を覆い隠すことはむずかしくなりますから、これは地方政府に対しての一種の制限になります。また武装警察にとてみれば腐敗の道が減ることになります。
第二には、地方政府の治安維持食物連鎖の弱体化。
2012年以前、中国政府は中央から地方まで時折、公共安全支出(治安維持費用はその一部)を発表しました。しかし公共安全支出が連続三年にわたって軍事費に迫る勢いの驚くべき数字で物議をかもしたことから、2013年以来、中央政府の総額だけ発表されて地方政府の詳細な内容は発表されなくなりました。政府の発表データですと「治安維持費用」の支出は中央が7割、地方が3割負担でした。地方政府の費用ははっきりと地域差があって、より発展した地域の経費は多く、貧困地区は少ないのでした。しかし新疆、チベットは他の省や市と異なり権限、財政ともそれぞれ別の専門の法律があります。
「治安維持の対象人物」についてのすくなからぬ文献によると一部の地方の下層部分では故意に対象をでっちあげ、それを食い物にしている食物連鎖があるようです。治安維持経費の地方からの報告には大量の人件費(基層部分の役人の親族など)が計上されていたり、嘘の報告現象が存在します。もし中央政府が今後、この3割の部分を給付しなくなればこの種の食物連鎖はより少なくなるかもしれません。
以上の変化の大事なところは一番目で、武装警察の出動に関する裁量権が中央軍事委員会によるということは軍事委員会主席が直に掌握するということです。いわゆる「国家の安全」は中国ではありとあらゆることを包括しますので、どの領域が中央政府の責任で、どの領域が国家安全監督管理の権力下にあるかということは財政区分によって区別されますので、すくなくとも財政改革法案の詳細な施行細則をみないと完全にはわかりません。(終わり)
拙訳御免。
原文は;何清涟:军队、武警停止有偿服务为哪般?http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-military-paid-services-20160328/3259074.html