何清漣
2016年4月10日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
https://twishort.com/MPrkc
「パナマ文書」が世界中に引き起こした大波への反応は西欧側と中国では大きな違いがあります。民主国家では脱税行為に、中国人はエリート支配層家族の腐敗が注目されました。取材を受けたのですが、記者の質問はみな「なぜパナマ文書にアメリカ人が少ないのか?これはアメリカが故意に漏らしたものではないのか?」というものでした。わたしは「これまで地球規模の反マネーロンダリング活動で、米国は一貫してリーダーであり、相対的に良い防止法を作ってきた。ですからこの文書暴露の真の意義は中国の反腐敗を助けるとかではなく、米国が苦労して進めてきた反マネーロンダリング活動が今回を機にさらに前進するだろうという点にあるのです」と答えました。
★米国の反マネーロンダリング活動は「数十年、一剣を磨く」です。
米国の最初の対マネーロンダリング対策法は麻薬取引に対してのものでしたが、のちに自国の司法の実際の実践と国際社会の政治的必要に応じて不断に調整され、立法、司法、法執行の三方面から数十年にわたる変遷をとげてきました。その核心は簡単に言えば「顧客はだれで、執行機関に「貨幣交易報告(Currency Transaction Repot)」と「疑わしい取引報告(Suspicious Activity Report)」を提出することです。
米国は麻薬取引のマネーロンダリング対策をまず銀行から始め、立法を通じて銀行にマネーロンダリングの実態偵察を迫りました。面白いのは1970年に制定された「Bank Secrecy Act, BSA(銀行保秘法案)」はその名前と全然異なり、明らかに銀行に特定の司法機関に対して顧客の秘密情報提供を促すものでした。この法案の目的は犯罪容疑者が金融システムの弱みにつけこんでマネーロンダリングを行っていることに対してとら、法執行部門が金融取引の証拠資料を得られるようにするもので、銀行に1万米ドル以上の現金取引に対しては必ず関連部門に預金、引き出し、現金を変えた人物やその他の支払いについての報告を義務ずけました。このほかにも顧客の身分やその資金の来原も提供しなければならないことになっていました。もし金融機関が報告を怠ったり虚偽の報告をすれば犯罪となります。この法案の目的は銀行の保秘制度の改革にあり、銀行は顧客の秘密を絶対に守らねばならないということに歯止めをかけ、銀行の保秘を強化したものではなかったのです。
「銀行保秘法案」は米国が世界に先駆けてつくったマネーロンダリング対策法案だといえますが、しかし本当の反マネーロンダリング法案とまではいえません。1986年には「Money Laundering Control Act(マネーロンダリング規制法)」が名実ともにマネーロンダリング規制のための法案です。その背景にはマネーロンダリングを四つの罪名にわけたことがります。①金融交易マネーロンダリング罪、②通貨輸送機関マネーロンダリング罪、③マネーロンダリング囮捜査法、④ 通貨交易マネーロンダリング罪、またはボーダー越えの通貨ロンダリング罪、です。
「マネーロンダリング制限法」と「銀行保秘法」は両方で米国の反マネーロンダリング法の体系の核心です。このあと、反マネーロンダリングに関する法律はどんどんできて、1988年には「マネーロンダリング検査改善法案(MLPIA)」、銀行保秘法案の拡大で「金融機構」の定義が、車や航空機、船舶などの販売や不動産売買にまで拡大され、郵政サービス関係者も金融機構の範疇に組み入れられました。「銀行保秘法案」の実施が銀行が提出しなければならなくなった通貨をめぐる報告があまりに膨大な数にのぼり、実際に犯罪にかかわる資料とバランスがとれなくなったことから、1994年には「マネーロンダリング抑制法案(Money Laundering Suppression Act)」が制定され銀行の負担を減らし、財税部門に銀行機構間の取引と、少額の取引は対象から免除されました。
★米国の反マネーロンダリング;麻薬からテロ対策へ
1999年、米国はさらに「国家反マネーロンダリング戦略(The National Money Laundering Strategy)」を発動させ、マネーロンダリング対策を国家戦略の一貫にアップグレードし、それからは毎年「国家反マネーロンダリング戦略」を出すようになりました。これは法案ではありませんが米国の反マネーロンダリング立法や法執行機関の活動に対して重要な指導的作用を持つものです。2001年の9.11テロ事件の発生後は、反テロ強化へむけ米国上院・下院は10月24日同時に「テロリズムを阻止し、米国を強固に団結させる適切な手段を提供するための法案」を承認通過させ、この法案は頭文字をとって“USA PATRIOT ACT”、すなわち愛国者法案とよばれます。
「愛国者法案」10章156節からなり、三つの部分を包括しており、その第三章は「国際マネーロンダリングと2001年テロ反テロ融資法案」ともっぱらテロに対する融資の予防におかれ、国際的なマネーロンダリングとテロ組織への融資を調査し基礎する目的で、全世界的なテロ組織への融資や攻撃への資金提供に対するもののキーともなるものでした。つまり「愛国者法案」は「銀行保秘法案」と「マネーロンダリング規制法案」の関連規定を修整して、金融機関に多くの新たな義務を課すものでした。
その中にはさらに反マネーロンダリングを徹底し実質的に現行の法律の執行政策や過程を修整し、より厳格に顧客識別の基準を定め、その義務の十分な履行を強化し、米国の銀行が外国の実質をともなわない銀行との取引、ビジネス関係を特に禁止しマネーロンダリングの防止に力を貸すことのないようにするものでした。
★米国はスイス銀行の金庫もこじあけた
しかし、米国の銀行がマネーロンダリング活動に関係しないように、というだけでは全世界的なマネーロンダリング犯罪活動に打撃をあたえることはできません。国内の反マネーロンダリング法体系の整備とともに、米国はスイス銀行のシステムにも圧力を加え、スイス銀行の「守秘義務」問題で譲歩を迫り続けました。1987年、スイスは「政治公衆人物データバンク」を設立して世界各国の銀行がその内容を見られるようにし、データを交換できるようにしました。1998年にはスイスでも「反マネーロンダリング法」が発行し、銀行と仲介機関に歌川椎取引の報告義務を課し、報告を怠ったっときは犯罪になるようにしました。
2001年の9.11テロ以後、スイス銀行はテロ組織にかかわる人間と口座のデータを提出するように迫られました。2003年6月、スイス政府はOECDの下にあるFATF(反マネーロンダリング特別班)の決めた反マネーロンダリング規定を受け入れることを迫られ、一年の猶予をもって2004年7月1日から発効しました。その規定はスイス銀行の匿名口座を通じて国外に一定限度以上の金が動いた時には銀行は必ずその真実の身分を公開しなければならないというものです。これはスイスがはじめて匿名口座の保秘規則の壁を打ち破り、スイス銀行の伝統の厚い壁にひびがはいったということなのです。
2008年、国際金融危機の勃発で財政が逼迫した西側の大国は次々にスイスに対する圧力を大幅に強化し、米国はUBS(スイス・ユニオン銀行およびスイス銀行コーポレイションの合併したもの)が米国人顧客の脱税を助けていると非難し、自国の匿名顧客のデータと長年納めるべき税金部分を差し押さえることを求めました。厳しい交渉の末、UBSは7.8億米ドルを支払い訴訟を集結させ、米国に脱税の疑いのある4000口座のデータを提供しました。 2011年、スイスは英国と、つづいてロシアとも顧客情報の提供に関する協約を結びました。
最後の「固い氷」も2010年に溶かされてしまいました。この年、スイスは「独裁者資産法」を制定したのでした。この法律は2011年2月1日に発効しました。そしてチュニジア、エジプト、リビア革命がまさにこの法律の生まれた時にぶつかったので、スイス銀行は前後してベンアリ、ムバラク、カダフィらの独裁者とその家族の財産を凍結したのでした。
★まだ残る「脱税天国」への攻撃
米国はOECD、G20などと連合して長年、「脱税天国」に対して圧力をかけ続けてきました。FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)など自国向けの法で、2016年1月から、米国財務省は米国の大金持ちの不動産購入者の追跡をはじめる一方、パナマなどの国々へも持続的に圧力をかけました。
残る脱税天国の中でパナマは業務がもっとも多く、かつ一番頑強に抵抗していました。2月26日、上海でひらかれたG20財務大臣会議と3月のOECD専門家会議はどちらもパナマが脱税調査に協力的でないと強い不満をあらわし、OECDは過去3年、パナマに100件を越す脱税容疑の捜査協力をもとめたが、それに満足しているのはスエーデンなど少数で、米国、フランス、スペインなどの国々ははなはだ不満であるとしました。今回のパナマ文書事件でパナマの法律事務所であるモサック・フォンセカ (Mossack Fonseca) から大量の秘密文書がもれたことはパナマに対して極めて重い一撃になりました。国際世論の高まりのもとでパナマ大統領は4月6日、テレビで、金融と法律のシステムの透明度を高め、自国の金融業界の運営に調査をおこなうために国外の専門家もふくめた独立委員会を設立すると短い声明を発表したのでした。(終わり)
拙訳御免。
原文は;巴拿马文件披露是对避税天堂的攻坚战
voachinese.com/..09/3278243.html