西側国家では、アンチグローバリズムの思潮が出現し始めています。中国はグローバリズムの最大の受益者ですが、ずっと「世界の普遍的な価値観」(自由や民主主義的権利)には反対してきました。しかし、アンチグローバリズムが経済レベルに関わって来るのであれば、中国は多分、固い決心をしてグローバリズムを守ろうとするでしょう。それは、中国が昔日の「世界の工場」としての栄光を取り戻すという意味ではなく、今、中国の金融システムが抱えるとてつもない赤字収支を、一発逆転で解消するみたいな…つまり、西側の金融界の巨人たちが『戦略的投資家』として救いにやって来てくれるからなのです。今や、中国の金融市場は、外資を再び「解放軍」として必要としていますが、そのチャンスが本当にやって来ました。フィナンシャル・タイムズ紙9月30日号によれば、ドイツ銀行(ドイッチェバンク)の調査によると、外国ファンドのマネジャーは、今後1年間に人民元債券への投資を倍増させるというのです。
★外資が中国金融市場の『解放軍』に
中国の国家債務は、膨大です。2015年だけでも、中国債券市場は各種の債券を22.3兆元発行し、前年同期で87.5%増で、発行速度も55.2%増です。現在、中国の金融市場の規模は、米国と日本に次いで、世界3位です。米国の債券市場規模は35兆米ドル、日本は11兆ドルです。投資分析家の計算によると、未償還の中国内部のオンショア債権の総額は7.5兆ドルで、大体、全新興債権市場の残り全部と同じ規模です。
現在、全世界の債券投資はマイナス時期に入っています。早くも今年の1月にグローバル収益率国債の規模は5.5兆米ドルに達し、6月末には倍増し、11.7兆米ドルになりました。その中で日本、ドイツ、スイスの国債は全て投資者にとってはマイナスの収益率になっています。これに比べて、十年物の中国国債の収益率は平均2.7%です。世界で最も人気のある米国のソブリン債券ですら1.6%ですから、この高収益率は投資マネジャーのお気に召すわけです。
中国政府は、この全世界の債券市場が低迷している時期を捉え、迅速にオンショア債券市場を開放しました。今年5月、中国政府は国内債券市場を開放し、国債投資家が、政府任命のいわゆる代理銀行を通じてオンショア債券を購入出来るようにし、また適格国外機関の投資家(QFII)制度に合格しなくても、投資額を申請出来るようにしました。7月31日には、中央銀行が「国外中央銀行・国際金融組織・政府系ファンド運用人民元投資銀行間のマーケットに関する事務通知」を発表し、国外機関が更に一歩進んで、銀行同士の債券市場に参入出来るようにしました。要点は、一つには許可制から届け出制に。二つには投資限度額の開放、国外投資家が投資規模を自主決定出来るように。三つ目が対象の拡大。国外機関は債券現物と再購入出来るだけでなく、貸し借りや、期間延長、金利スワップ、FRA(金利先渡取引)などの取引も出来るようになりました。
以上の措置の意味は、国外投資家への中国債券市場投資プロセスが簡素化されるということです。今年3月、中国農業銀行香港支店、中国建設銀行香港支店、花旗銀行香港支店、三菱東京銀行香港支店など八社が中国債券市場に参入し、その後、続々と二十社にまで広がり、香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行、ドイツ銀行もみな代理銀行になりました。
ドイツ銀行の調査を受けた投資家は、彼らは今後の一年間、それぞれ人民元債券への投資額を倍増させ、25%以上が代理銀行を登録し、さらに40%が現在、チャンスをうかがっているといいます。
ドイツ銀行の分析では、国外からの投資者がまず第一に考えているのは中国が国際債券指数に組み入れられて、これによってMorgan Stanley Capital Internationa(MSCI)がこの指数を追いかけるファンドで、中国の国内債券を購入することになるだろうということです。ドイツ銀行の調査対象者の五分の四は二年以内にそうなるだろうと見ています。
★中国債券市場の不透明
中国経済がポンジスキーム的な成長に落ち込み、最も明らかな指標はまさに債務問題です。マッケンジーグローバル研究所(MIG)の危機後の債務発展の傾向の研究では、2008年(リーマンショック時)以来、全世界の債務総額は60兆米ドル増加しました。2007年以来、中国の債務の増加は三倍で、その債務率は282%に達し、世界のどの主要な経済体より高いものです。
ある国家や地方政府の赤字と債務の指標は、赤字率、負債率、債務率などがあります。赤字率は一年中の政府の赤字とその年のGDPとの比率で、負債率はその年の政府債務残高とGDPの比率で、債務率はその年の政府債務残高と可処分財力の比率です。ここでは簡単に、債務の中で最も脆弱な部分である地方政府の膨大な債務を取り上げます。中国地方政府の債務は高々と積み上がり、国際投資業界は誰もが承知している公然たる秘密です。現在、地方債務は毎年上昇を続けていますが、人々が更に注目しているのは政府が承認した債務の規模と実際の債務の間の巨大な差です。
国家統計局と中国財政部のデータでは、2012年から2014年の中国地方政府の債務は、それぞれ15.89兆、17.89兆、24兆で、地方債務の規模はすでにドイツのGDPに近いか、ひょっとするとそれ以上になています。2015年度末の中国政府の債務規模総計は26.67兆、政府負債率は40%です。
国際的にはこうした指標は、概ね誰もが認める警戒ラインです。各国では一般に政府債務は100%を超えるべきではないとされています。中国社会科学院の研究レポート「中国国家資産負債表2015年」のデータによると、2012年末の全地方政府負債率は30.6%で、債務率は112.8%。貴州省と遼寧省の債務率はそれぞれ120.2%と197.4%で、全国人民代表大会常務委の決めた100%の債務率のレッドラインを超えています。
しかし、以上の数字は中国政府の公表したデータに過ぎません。地方政府の実際の債務データではないのです。2014年、発展改革委員会の李鉄は、地方債務の報告された数字(18兆)は、実際の債務の半分にも満たない、と公開の席で言いました。地方調査研究で十数都市を回ったが、彼らは実際には一割程度、時には二割か三割程度を報告しているだけで、現実の債務の五割を報告した都市はまずなかったというのです。
国営企業の債務も実は似たような状況です。こうした状態は中国全体の債務を不透明にし、今年8月に財政部発展改革委員会の官僚は内部検討会の席上、基本的に隠された債務条項の他に、さらに潜在的な債務があることを認めました。つまり、中央政府は実際には地方政府の債務が一体どれほどあるかということは知らないのです。
★外資は中国債務市場の危険性を知らないのか?
国際決済銀行(Bank for International Settlements/BIS)は、2015年9月末の中国の総債務率(債務総額/GDP)を249%とみており、そのうち企業の債務率が170%、政府債務率が40%、家庭債務率が39%としています。Macquarie Group(*豪州の銀行)のアナリスト、Viktor Shvetsは現在の中国の債務総額は35兆米ドルに近く、総債務率は350%です。
ロイターの経済ニュースで、債務不履行は重要な項目です。9月30日、ロイターが発表した「2016年中国信用不履行一覧」には百社近い国営企業、地方政府、銀行など金融機関が発行した五年かそれ以下の債務不履行のデータが列挙されています。ドイツ銀行の調査では約四割の回答者が中国の金融システムに不安を感じておりはしますが、しかし、それでも、人民元の大幅値下がりを心配する人は三分の一以下でした。
以上の状況は、中国債券市場の本来の危険性が下がったのではなく、全世界の債券の利息がガタガタに下がって、中国の債券市場の利息がグンと有利に目立つようになったということなのです。機関投資家は高利息の資産を鵜の目鷹の目で探していますから、中国債券は彼らの分散投資の対象としては大変魅力的な選択肢となるのです。中国の十年期国債の表面的な利益率は最近、2.66%まで下がりましたが、それでも多くの海外投資家に言わせれば大変な吸引力があります。なんといっても日本やドイツ、スイスといった国々の十年もの国債の表面利益率はいまやマイナスなのですから。
中国政府はずっと、技術的な方式で、日々深刻になる債務危機を解消しようと努力してきました。これらの方式は地方政府債務の置換、企業の債務を株に変え、債務を証券化することも含みます。しかし、すべての措置はただ緩和を果たすだけで、当面の中国の巨大な債務危機を解消させることはできません。とりわけ、後二者は株を買おうとする人たちがいなければ成り立ちませんが、中国の株投資家は2015年の株式市場でキレイさっぱりやられてしまって、もういくばくの力もありません。こうした時に外資が中国債券市場の「解放軍」になってくれるのですから、中国政府はもう嬉しくてこたえられません。ただ、投資量と投資の種類の選択は、全部が中国政府の期待通りとはいかないでしょうし、外資は投資品目を評価する自分たちのやり方を持っています。外資が最後に果たして中国の債券市場の天下の半分を支えてくれるかどうか、可能性のある10%から50%まで高めてくれる、というのは、ちょっと高望みがすぎるでしょう。
いつも誰かが私に「中国経済はどのぐらい持ちこたえるのだろう?」と質問します。私はいつも、彼らにこう注意を喚起します。
;これまでの中国政府が直面した局面とは今は違う時代で、中国経済は今や世界経済の一部分で、それもとても重要な構成部分です。ということは外部の影響は中国にとって、極めて予測し難い、しかし絶対に軽んじてはならないパラメーターです。中国が債務の泥沼に落ち込んでなんとか早く脱出したい、と願っているときに、今回のグローバルな債券市場の低迷で、外資が中国債券市場の「解放者」になるというのはまさに、その一例なのです、と。
(終)
拙訳御免。
原文は;中国债市将迎来外资“解放军” voachinese.com/..05/3538504.html