米国民主党は2018年の中間選挙以来、トランプ大統領に対して、雨嵐のように攻撃を仕掛け、切り札は、モラー特別検察官による「ロシアゲート事件調査」と、「弾劾準備」でした。しかし、まずいことに、最近、この砲弾は不発に終わってしまいました。それでも、民主党には二つの命綱が残されています。司法省にロシアゲート報告書の内容全文を一般公開せよと強く求める事と、ニューヨーク南区の検察庁にトランプ大統領の選挙経費調査を要求です。政治はいったん政争に走リ出すと、もう理性は飛んでしまいます。
★主攻失敗。ロシアゲート不発
2019年1月5日、ニューヨーク・タイムズ紙は「人民 vs. トランプ」と題し、「トランプは権力を私し、法を乱し、司法を妨害し、民権を犯し、民主体制を転覆させた。米国人民は一刻も早く民主主義を守るすべを考えねばならない」という社説を掲載しました。
当時、米国の主流メディアは、どこもが喜んでロシアゲート事件調査によってトランプが敵国に通じていたことが明らかになり、自分や家族が牢屋入りするのを避けるために、自主的に辞職するだろうと予言しました。民主党のベテラン政治家のナンシー・ペロシ下院議長だけが弾劾に慎重な態度でしたが。
当時、この騒々しいトランプ包囲網に疑問を感じて、私はツイッターで、主流メディアに向けてこう書きました。
;ロシアゲートは中間選挙前に既に調査を終了していた。もし、本当にトランプに不利な結果があったのなら、結果を明らかにすれば良いだけの話で、どうして、こうした子供騙しのような脅迫戦術をとるのか? 「お前とお前の家族は有罪だが、俺らに弾劾されたくなければ、さっさと玉座から降りろ、さもないと監獄行きだぞ」というのは、法治国家を誇りとして来た米国で、立法機関の議会を握る民主党が公然と法律を利益交換の目的に使うのは、法治の堕落ではないか?と。
民主党の「トランプに下野を迫る」話は、はかなき夢となって、3月下旬には終わりを告げました。2年近く、納税者の金を2520万ドルも使って、2800人を呼び出し、500人を証人にしたモラー特別検察官の調査報告がついに公表されました。3月24日、バー司法長官が、その概要を議会に報告し、その結論は、特別検察官はトランプのグループやいかなる関係者も、2016年の大統領選挙で、ロシアと通じて協力して影響を与えようとした証拠を発見出来なかった、というものでした。
実のところ、民主党のトップレたちは、中間選挙前に、既にロシアゲートの調査が、トランプや一家のロシアと通じていた証拠を発見出来なかったという調査結果は承知していました。でも、次の大統領選挙に向けて、少しでも自分たちに有利にしようと、故意にその公表を引き延ばして来たのです。彼らが予想しなかったのは、自分たちが却って打撃を被ることでした。モラー特別検察官の調査報告の結論は、特別検察官と民主党の「魔女狩り」の徹底的な失敗であり、米国メディア業界全体の失敗でした。前者は政治的な信用と名誉を、後者はメディアの原則とジャーナリストとしての職業的な信用と名誉を失いました。反トランプを社是として来たニューヨーク・タイムズ紙も、しぶしぶ、トランプ大統領の今後の失政と2期目の選挙への道の邪魔者がなくなったことを認めざるを得ませんでした。
★「グリーン・ニューディール法案」の賛成ゼロ、壁の建設に最終ゴーサイン
「グリーン・ニューディール法案」は民主党のニュー・スターのアレクサンドリア・オカシオコルテス(AOC)議員が提案した環境保全計画で、米国が10年以内に気候変動を逆転させ、すべての米国の炭素排出をゼロにする計画で、100%再生可能エネルギーを使う、などの内容でした。その極端な主張(これについては、★社会主義の正体を露した「グリーン ニューディール」 2019年02月16日 で書きました)、米国内に大きな論議を巻き起こしましたが、民主党の2020大統領選挙出馬予定者の絶対多数が一致してこれを支持しました。
3月26日、米国上院は、この「グリーン ニューディール」案に対する投票を行なった結果、共和党が多数派の上院で57;0の評決で否決されました。民主党は4票の反対以外、その他43人の議員は「出席票」は投じましたが、誰もその提案に賛成はしませんでした。共和党の上院議員のリーダーであるミッチ・マッコネル議員は「民主党の皆さんは極左願望を実現したいらしくて、これはその一つだな」と嘲笑しました。
上院の民主党議員たちは、なぜ賛成票を投じなかったのか? 彼らも心中、この法案が余りにも極端だと承知していたからとしか言えますまい。議会最年長の上院議員ダイアン・フェインスタイン議員も以前、「現段階では、私はこのプロジェクトに賛成出来ない。なぜなら人々は、この法案は荒っぽすぎるとみなしている。すごく大きなプロジェクトで、経費は巨額なのに、全然研究されてないからだ」と言いました。コルテスの最大の支持者のサンダース上院議員すら、愛弟子の提起したこの法案に賛成しなかったのです。
大多数の主流メディアはコルテス支持ですが、この結果に沈黙を決め込みました。ただ少数のメディアだけが「上院、グリーン・ニューディールの賛成ゼロ票」と報じただけでした。
もう一つの民主党の敗北は、トランプ大統領のメキシコ国境の壁建設宣言の阻止失敗です。トランプ大統領は、ホワイトハウス入りをして以後、ずっと選挙中の公約であるメキシコ国境の移民流入阻止の壁建設を実現しようとしてきました。国境解放と無制限の違法移民受け入れを主張する民主党は、これに対して一貫して反対を唱えて、何度も議会で壁建設予算を拒否して来ました。
今年一月には、トランプ政府と国会民主党は壁建設を巡って、2019年の総予算の4分の1の通過を拒否し、それによって財務省、農業省、国家安全省、商務省など九つの米国連邦部局が事務停止となりました。2月15日には、トランプ大統領は、「国家緊急事態」を宣言しましたが、この意味は、国会の承認を得ないでも80億ドルの資金を壁建設に当てられるというものでした。民主党はこれに対して、激烈な反対で応じ、2月26日にトランプ大統領がベトナムで金正恩と会見した時に、下院でトランプ大統領の「緊急事態」を覆す決議を通過させました。共和党が多数を握っている上院でも「裏切り現象」が起きて、3月15日に「反緊急事態」決議が通過しました。
この民主党が総力を挙げて阻止しようとした壁建設反対が、最近、水の泡になりました。3月26日、米国下院がトランプ大統領が拒否した件を覆す投票を行なったその日、大統領反対の議員が多数を占めたにもかかわらず、否決に必要な3分の2の票数を得られず、トランプの決定を覆せなかたのです。
★民主党は何を反省すべきなのか?
2大政党政治による権力のバランスに慣れている米国の選挙民、とりわけその中間派にあたる人々は、今、民主党の未来にハラハラしています。
2018年の中間選挙後、民主党にまるごと加入した社会主義者の助けもあって、民主党は下院の多数派を奪還を果たしました。伝統的な民主党員と社会主義者の政治に対する見方、行動には多くの違いがありますが、彼らをともかく一致させている力は、反トランプ大統領という一点です。
トランプ大統領の「米国第一主義」も、彼らから見ればけしからんことなのです。世界を見れば、どの民主国家の有権者も、自国の大統領が自国の利益を優先することがけしからんなどとは言っていません。モラー特別検察官の調査結果が発表されて以来、大部分の中間派の有権者は、民主党は、もはや米国人の現実の必要性を軽視して、政治ゲームに熱中する集まりなのではないかと思われています。
2016年の敗戦以後、民主党は未だに自分たちの誤りと失敗に対して、真剣に反省していません。百年の伝統を誇るニューヨーク・タイムズ紙に最近奇妙な記事が出ました。「ロシアゲート事件は、我らに米国の根本的な弱点を軽視させた」という記事ですが、中身は「点を恨み地を恨む」言葉ばかりで、誤りは全て他人が犯したと言うのです。ダメな有権者、人気取りのクーミーFBI局長とか、「民主党員は完全に自分たちの経済と社会不安の情緒を無視し、引っ掻き回し、歓迎されざる候補(ヒラリーのこと)を立てたが、彼女は米国の生活になにも新しいビジョンをもたらさなかった」とか書いています。
デスクもこの筆者もすっかりお忘れのようですが、この新聞自体が、当時、毎日毎日、米国人に深く愛されるヒラリーだとか書いていました。大統領選挙の3日前に、「深く米国選挙民に愛されるヒラリーは98%の確率で圧倒的にトランプに勝利する」と言っていたではありませんか。選挙期間中も、何度も大きな声で情感たっぷりに、「今や前大統領夫人が大統領になるのだ。米国人はヒラリー夫婦を呼べばいいのだろう?」とかです。
民主党が政権を奪取を目指すことは、問題はありません。しかし、手段を選ばず権力を追求するとなると、目を離さないことです。現在、民主党は、社会経済の政策で有権者を惹きつけるのではなく、20人以上いる候補者たちの選挙スローガンは、基本的には地球の気候変化とか国民皆保険とか、政府による国民への生活保護とかです。米国有権者の関心のある経済問題では、彼らはいかなる方案も提起出来ていません。
彼らが苦心惨憺して考え出したのは「票を増やす事」で、例えば、全国の680万人の重罪犯罪者に投票権を与えようと何です。麻薬の氾濫するフロリダ州は、既に法律を作って140万人の重罪犯に投票権を与えました。同州は麻薬の反乱で、麻薬の無罪化を主張する民主党は、こうした重罪犯の多くは麻薬犯罪に関係した連中だから、きっと自分たちに投票するだろうという思惑です。一部の民主党が政権を握る州でも、違法移民に証明書を与えて、投票させようという動きがあります。さらに一部の民主党支持州では、憲法の規定する選挙人制度を回避して、(訳注;大統領選挙では、選挙人の数で勝った側が、その州の票を総取りという現行制度)全国で最も得票の多かった候補に票が行くようする準備をしています。
米国は、一貫して法治国家であることを誇りとして来ましたが、今、民主党は、党同士の争いで憲法を勝手に修正しようとしています。こうした状態では、民主党が2020年の大統領選挙で勝つか否かにかかわらず、米国そのものが敗者になるでしょう。なぜなら、米国の法治と自由、民主の伝統は現在、深刻なまでに蝕まれており、米国というこの「自由の灯台」には、分厚い汚れや垢がたまってしまって、世界を明るくするどころか、自国さえも照らせなくなっているからです。(終わり)
原文は、「通俄门调查与美国政治的党争化」